猫とマンガとゴルフの日々

好きな物を題名に↑ 最近はゴルフとグルメお出かけ主体に。以前は1960年~70代マンガを紹介していました。ネタバレ有り。

山岸 凉子 「牧神の午後」

2009年02月12日 08時18分18秒 | マンガ家名 やらわ行
山岸 凉子氏は実在の人物の伝記をいくつか描いている。

自身の出身地である北海道で運命観相家として昭和20年代~40年代始めに有名だった 白眼子 という男性について描いた、

拙記事 → 「白眼子」

横溝正史の推理小説『八つ墓村』(1949年)の原作になった事件「村人32人殺し」(岡山県で実際に起こった津山事件がモデル) の犯人を描いた、

「負の暗示」(1991年「YOU-all」8号)

バレエものでは、1953年にバレリーナとしては初めて 「ウーマン・オブ・ジ・イヤー」 に輝いた マリア・トールチーフ と ジョージ・バランシン の関係を描いた、

「黒鳥 ブラックスワン」 (「セリエミステリー」1994年4月号)
 
拙記事 (あまり内容には触れてませんね) → 「黒鳥 ブラック・スワン」


そして、稀代の天才ダンサー ヴァーツラフ・ニジンスキー を振付師のミハイル・フォーキンの目から見て描いたこの

「牧神の午後」(「ぶ〜け」1989年11月号-12月号)

などがあります。

 
 「牧神の午後」 は前後編の中編ながら、19歳で衝撃的なデビューを飾ったところから、1950年4月8日に亡くなるまでを駆け足ながら要領よく見せてくれます。しかし彼の後半生についてはあっさりと事実を紹介しているだけです。
 
 1913年、23歳の時に突然ハンガリー人のバレリーナと結婚し、彼の庇護者であった興行主の セルゲイ・ディアギレフ との関係が決裂してからの不遇の時期、続く精神的苦痛の長い長い後半生を詳しく描くにはページも少なく又作者にとっても忍びなかったのでしょう。読者の私も見たくないもの。

 ニジンスキーの伝記は映画にもなっています。
1980年 パラマウント 監督 ハーバート・ロス ニジンスキーはジョルジュ・デ・ラ・ペーニャ (知らない人だな~ ロシア人か?)

 ちなみに、前出の マリア・トールチーフ は幼いころ、ニジンスキーの妹 ブロニスラヴァ・ニジンスカ の生徒でした。

 もう一つ、競馬好きには同名の ニジンスキー という最後のイギリスクラシック三冠馬がぴんとくるでしょうが、このバレエダンサーから付けられています。
 エプソムダービーの時に、ニジンスキーの未亡人であるロモラ・ニジンスキーが招待され、亡くなった夫にちなんで名づけられた馬が勝利する光景に泣き崩れたとか。
 この馬の仔で当時の流行りから 「スーパーカー」 と呼ばれた マンゼンスキー というお馬さんがいまして、私1977年の日本短波賞を知人に言われて買った覚えがあります。綺麗で強いお馬さんでした。

マルちゃんについてはこちら → マルゼンスキー


 バレエ好きで、自身も習っている山岸 凉子氏には、短編でもいいのでもっとバレエ関係の伝記を描いて欲しい。私の好きなマーゴット・フォンテーンとルドルフ・ヌレエフの話とか、日本バレエ界の恩人「三人のパヴロワ」の一人に数えられるアンナ・パヴロワとか、男性では映画 「ホワイトナイツ」 のミハイル・バリシニコフとか、ウラジーミル・ワシーリエフの夫婦愛とか。(みんな自分が憧れていた人たちばかり時代がわかる) 
 わーんいっぱい見たいんだけど、最近の山岸氏の絵柄は テレプシコーラ のようにあっさりしているからな~。この頃の絵柄で見たいっっっっと不可能な贅沢を言わせて。。。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

吉田 秋生 「海街diary シリーズ」

2009年02月03日 11時21分45秒 | マンガ家名 やらわ行
 大変人気のある作品で、私がよく行くマンガブロガーさん達もその記事で大絶賛である。今コミックスでは2冊出ていて、

「蝉時雨のやむ頃」 2007年5月1日 初版
「真昼の月」 2008年10月15日 初版

1巻にからめて、この作品よりハチャメチャな満天さんの経験を読みたい方はこちら → 満天ブログ2008年7月1日分 「蝉時雨のやむ頃」  凄いです…。

あらすじを詳しく知りたい方は tooru_itouさんのBBSの2009年1月16日分を →  tooru_itouさんのBBS1月16日分を見てね


 コミックス1冊目が出たところでブロガーさんの評判がよく、しばらくしてBOで見つかったので買ってみた所見事にはまり、2巻目を首を長くして待つことになった。
 で、2巻が出たところで早速読んでいたが、なにかに似ているよ~な気がしてならない。ストーリーとかは別に思い当たらないだが、雰囲気というかどこかひっかかる。
 昨年から今年にかけてこれと同じく楽しみに続巻を待っていた 羽海野チカさん の 「3月のライオン」 に感じが似ているな~と思ったのだ。

① 「海街~」 の すず と 「3月~」 の 桐山 零 はともに両親とも亡くなっている。すずは女の子で中学生、零は高校生で男の子、と性別・年齢は違うけれどまあ、私みたいなおばさんから見ればまだ 子供 であるのに一緒に住んでいる親がいない。
 すずには一緒に住んでくれる 腹違いの姉妹 がいるが、一番上の姉でも30歳は行っていない、親世代のいない家庭だ。零なんか高校生なのにひとりで住んでいる。つまり両方とも子どもたちだけで暮らしている。

② だけれども、二人とも今は寂しいと思っていない。それはそれぞれに心安らぐ 3姉妹 に出会えたから。すずはその異母姉たちと暮らすことを決心した。

③ 違う見方をすると、二つの作品とも景色が重要なことに気づく。住んでいる場所は全然違うところで、風光明媚な 鎌倉(海街) と東京下町の 川沿いの町(3月) だが、人物の心象風景に景色が重なって深い効果が出ていると思うのだ。
 桜舞い散る並木道は すず のことを好きな男の子の浮き立つ思いを、暗い川沿いの散歩道は母を亡くした女の子の絶望をという風に。 
 お二人ともこういう表現は上手いな~と思う。

 ここからは 「海街~」 について。
 セリフが現実をそのまま写したようにリアルに感じる。3姉妹の会話など、自分も3姉妹だったので自分の過去の会話や喧嘩を見ているようで笑ってしまう。兄弟のいた方はみんなそう思うはず。
 ただ、話の設定は有りそうで現実には無いと思う。ここに出てくる子どもたちは皆家族関係が複雑だ。
 父親が死んでしまったので父親の再婚相手とその連れ子と残されてしまった すず。父親の葬式で初めて逢った腹違いの姉たち。
 長姉は突然一緒に住まないかと言う。普通に考えたら始めて逢った姉妹より義理の母親についていくか、もしくは施設に入るかのどちらかだろう。作品の中でも姉妹の親戚が

「あなたねえ 犬や猫の子じゃないのよ!?
ひと一人養うって大変なことなのよ!?」 


 というようなことを言っている。2巻では すず の高校進学について長姉が早速現実を見せつけられた格好だ。

 仲良く一緒に暮らせるようになって良かったね、めでたしめでたし  
 ちゃんちゃん、で終わりでなく今後の展開がいよいよ興味を引くのである。

 それでも3姉妹から4姉妹になった彼女らは自然にすんなり家族になっているように見える。本当の姉妹とはおのずと違う、だけどまったくの他人と暮らしているのでもない、すずの言葉

「女子寮の一番下っぱみたい」

 が本当にうまい言い方だな~と。(笑)


 作中に 藤井朋章君 という高校生が出てくる。映画にもなったので吉田氏のファンなら知っていると思うが、「ラヴァーズ・キス」 という作品に出てくる人で、こちらも読むとより彼の家族関係や背景が分かる。10年以上前の作品だが、できたらこちらも読むとより一層世界が広がると思う。

 まだ連載中で彼らの周りの人たちにも面白いエピソードがいっぱい出てきそう。続巻をとても楽しみに待っている。

        猫の一生を見届けるにもしんどい思いのトミー。
 
 
コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山岸 凉子 「白眼子 はくがんし」

2008年03月19日 20時15分39秒 | マンガ家名 やらわ行
     
        潮出版社 希望コミックス343 2000年12月5日 私の持っているのは第1刷発行のもの。


 「白眼子」 初出 「月刊コミックトムプラス」2000年5月~9月号に掲載。 
 同時収録 「雨の訪問者」 初出 「月刊セブンティーン」1979年7月号掲載
 
 この本には特に書いて無いので原作は無いのでしょうが、モデルになった方はいます。運命観相家として昭和20年代~40年代始めに北海道で有名だった 白眼子 という盲目の男性です。この方は印相の本や趣味の短歌の本なども出版されています。

 山岸氏は同卿の実在の運命観相家 (易や占いとは別ということですが、私もよく分からない) 白眼子(はくがんし) のことにとても興味があったのでしょう。子供の頃北海道で大人の話題や新聞などでも評判になっていたのでは無いかと思います。ご自身も 見える人 なので霊能者・異能者には興味あるのでしょう。
 山岸氏は資料を探して読み、じっくり調べてこの作品をお描きになったのでしょう。又、直接話を伺ったのかは不明ですが、この話の語り手で白眼子の養女、光子さんが書いたものか、ご本人から聞いたと思われるような細かいところまで描写しています。
 白眼子ご本人や、この作品に対する慈しみのようなものが感じられます。

あらすじ
 
 終戦直後、親戚とはぐれ闇市で震えていた孤児の光子 (みつこ) は 白眼子 と呼ばれる運命観相家とその姉に拾われ 最初は怖いと思っていた盲目の 白眼子 も姉の加代にも慣れ、籍も入れてもらい学校にも行かせて貰って 白眼子 の観相の手伝いなどをして育ちます。

 白眼子の元には、時節柄戦争で行方不明になった息子の消息を聞きに来る夫婦や子供の病気快癒を願うもの、景気の行方を気にする実業家などが訪れ、光子は様々な不思議な体験をするのです。

 ある写真から実の親戚が見つかり、喜んで遊びに行ってそのまま親戚の方にいることになり、そのうち結婚もして白眼子の方とは疎遠になり・・・。しかし夫の乗った船の遭難という悲劇の最中、光子の夢枕に 白眼子 が現れるのです。
 
 その後もいろいろな出来事がありますが、事実らしい淡々とした描き方なのに無口な 白眼子 が時々口にする言葉が実にいいのです。

「どうやら人の幸・不幸はみな等しく同じ量らしいんだよ」

「災難を避けよう避けようとしてはいけない。災難は来る時には来る。どう受け止めるかが大事なんだ」

「必要以上に幸運を望めばスミに追いやられた小さな災難は大きな形で戻ってくる」

 この ↑ 最後の言葉 私はとっても胸に来たんですけど、皆さんどうですか ?

 自らを、小さな災難を小さな幸せに変えるだけしかできないという白眼子。(それだって凄いことだと思うけれど。)
 宗教とは違うし諦観とも取れるこれらの考えは、言われて はっと 思い当たる世の中の真理。新興宗教にはまるよりこういうマンガを読んだ方がよっぽどためになる。
 何か気になる作品なので時々繰り返し読んでいます。山岸ファンでなくてもぜひ読んで損はなく、白眼子 の人柄のように穏やかな気持ちになれる名作だと思います。

 作品中で藤田乙姫という美少女霊能力者がちらっと出てきますが、この乙姫のモデルは知ってます。戦後最大の占い師として有名で、政財界に多数のファンがいた 藤田 小女姫 さんですよね。ハワイで銃殺されて亡くなったのは1994年か~。もう14年前なんですね。いまだに謀略説があるというのも、政財界の裏話が書かれていたという藤田氏の見つからないノートと相まってミステリーより事実は・・・ですね。
コメント (19)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山岸 凉子 「白い部屋のふたり」

2008年02月25日 11時57分49秒 | マンガ家名 やらわ行
 集英社刊 山岸 凉子傑作集 3 1973年9月10日 りぼんマスコットコミックス 

                 夜さんにお借りしています。


 前回に続いて りぼんコミックス 初出の作品から。表題作の 「白い部屋のふたり」 はさんざん記事の中で書いときながら、読んだことがない作品だったのですが、夜さんがお持ちということで今回お借りして読むことが出来ました。夜さんありがとうございます。m(_ _)m

 初出は りぼんコミック 1971年2月号で、その頃私はりぼコミ読者だったのに覚えてない・・・。毎号買ってたわけじゃないので飛んでいたのかも
 当時びっくりの女性同性愛者を扱ったものですが、際どいシーンはまったく無し。キスシーンがちょっと、という程度ですが当時は男女の恋愛ものでも、キスシーンが少女たちには充分クライマックスでどきどきタイムでした。

 当時私たちは エス とか呼んでましたけれど、ジュニア小説等ではそれらしきものはありました。が、ペギー葉山の 「学生時代」 のような 

姉のように慕い~~

 の表現だったと思いますがね~。


 お話は・・・

 両親が交通事故で死んだレシーヌが財産狙いの叔母の家に入るのを嫌い、良家の子女の入る寄宿学校へ入る導入部から。同室になったシモーンというテニスの上手いカッコイイ少女はレシーヌばかり見ている (ような気がレシーヌはする) 一方のレシーヌも要領の好い問題児シモーンを不良と思いながらも気になって行く。

 ここから一気に相思相愛になるわけではなく、学園祭の 「ロミオとジュリエット」 が入ったり、私たちのは 友情 よと言い張るレシーヌのためにシモーンがボーイフレンドを紹介したりいろいろあるのですが、どうやらシモーンの方ははっきりレシーヌを好きだと自覚しているゲイ (もしくは両刀) らしい。

 今読むと、どこが気に入ってシモーンがレシーヌを思い始めたのか、動機がイマイチわからないのですが、(単に好みのかわい子ちゃんだったから ?) シモーンに好きだと告げられたレシーヌの狼狽振りはよく分かる。
 必死に否定し、ボーイフレンドとデートし、

「あなたは自分を汚したくないだけよ、皆と同じレールから外れるのが怖いのだわ」

 と詰め寄るシモーンから逃げる為に転校までして忘れようとします。そこに届いたシモーンの死の知らせ。彼女はわざと付き合っていた男の子を挑発し、まるで自殺するように殺されたのでした。

 シモーンに死なれて初めてはっきりと自覚した愛に、レシーヌは死ぬことも叶わず石の心を抱いて生きるのみ、それは愛に命をかけた相手から逃げたレシーヌの罪の代償。涙と苦悩の中でのラストとなります。

 この作品、雑誌 「クレア」 の1992年9月号のTHE少女マンガ!!特集のインタビュー中で、作者 山岸 凉子氏 がちょっと触れています。

 - 以下 引用 -

 あれもね、実は、男同士のつもりで描いたんですよ、まだそういう世界に魅かれる自分って異常だと思ってたし、とても許されないだろうと思ってたのでつまり苦肉の策。
 後になって少年愛マンガをどんどん描くようになった人たちでさえ、私がその手の話をすると 「オトコ同士の愛 ? なあにそれ」 と質問攻めに会う時代でしたから。それが今ではあたり前という雰囲気でしょ。まだ 「日出処の天子」 も最初はどうか同性愛の話に行かないでくれって頼まれたものです。それが連載が終わる頃になると 「今の時代、少女マンガはホモが入ってないと駄目。ホモさえ入れれば何だってウケます。」なんですから・・・もう・・・ねぇ(笑)


 時代ですねぇ。今じゃBL (ボーイズラブ) として一ジャンル確立してますから。又、ここでは言っていませんが、ネーム (映画で言う絵コンテ) の段階ではオトコだったが、編集部のOKが貰えず女同士にしてやっとOKが出たとかどこかで言っていたと思います。
 
 他に

「遠い賛美歌」 初出 りぼんコミック 1970年12月号
「水の中の空」 初出 りぼん 1970年10月号

 が収録されていますが、いずれもアンハッピーな終わり方。主人公達は納得しているのですが、死んでしまったり、誤解のあるままに立ち去ったり。他人が見たらハッピーじゃないです。誤解が解けて、大団円、生きてて良かったね、でもいいじゃないかと読者は思うのですが。

 山岸氏は最近でも去年の 「舞姫 テレプシコーラ」 第1部終了間際の悲劇とか、すぐ後の 「ヴィリ」 でも主人公が事故にあったり娘といろいろあったり、決してすんなりハッピーエンドにならないのですよね。いつも救いようがない絶望の中とか、暗いままいつまでも続く・・・みたいな終わり方だったり、まったくないわけではないけれど、昔からハッピーエンドが少ない作家さんですね。そこが読者にはひねった印象を与えて、気になる作家であるのですが。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山下 和美 「不思議な少年」 1~5巻

2007年11月16日 08時59分36秒 | マンガ家名 やらわ行
           満天さんよりお借りしています。


     山下 和美著 「不思議な少年」 講談社 モーニングコミックス


 私の年代だと 「不思議な少年」 と言うと 手塚 治虫氏 の時間を止めることが出来る 「ふしぎな少年」 を思い出します。生放送で見てました。太田 博之可愛かったなぁ。 「マグマ大使」 では江木 俊夫が主人公をやっていて、当時は少年ヒーロー役というとこの二人だったっけ。
 何を隠そう 「鉄腕アトム」 も実写でドラマになったことがあるんですよ。

 それはさておきこちらの作品、山下氏はその手塚先生のライフワークだった  「火の鳥」 を山下版で描きたいのかな、と思いながら読み始めた。火の鳥も少年も狂言回しに過ぎず、作者の描きたいのは人間そのものなんだろうと。

 しかし流石に同じ事を描くはずもなく、設定の幅は大きくなっていて、主人公の少年 (少年と青年の中間位かな) はタイムマシンのように時間と場所と性別までも自由に移動できるだけでなくて、パラレルワールドへも行き来自由らしい。読者は彼に付いて、古今東西、あらゆる場所、時間どころか、この世の物ならぬ他の世界の人間までかい間見ることになる。

 これって 世界をお造りになられた神 以上の存在ではないか ? 

 又、少年は興味を引いた人間にくっついて人生を送り、旅をしたり家族に成りすまして一緒に生活したり、執事になったり、奥さん (!) になったりしている。
 そしてその人の死まで見届けたり、している。火の鳥が時々  永遠の命を得ることになる自分の血 を人間にあげる以外は (例外的に人との間に娘を持ったりするが) 人の世を諦観とともに静かに眺めているのと比べると、より積極的に人間に関わっている。
 
 彼は時々背中に羽の生えた天使になったり、天女の羽衣のようなものを肩にふわりと掛けた格好で描かれているが、もちろんこれは人間にそう見えるようにしているだけで、演出というヤツだ。人間の歴史の合間、合間にそういった彼の姿が壁画や絵画などで留められることになる。
 が、この少年という姿ももちろん仮の姿、ということになるから、彼の本当の姿、正体って何 ?

 彼の存在自体謎だけれど、そうまでして人間に関わる彼の目的ってなんだろう ? と考えてしまう。これは 「いつでも、どこに行っても人間は同じだね」 というのが口癖の、永遠の命を持つ少年の壮大な暇つぶしなのか ?

 まだ連載は続いているようなので、山下氏がどのようにこの物語を終わらせるのか、非常に楽しみです。

 
PS. 佐藤 史生氏 「この貧しき地上に」 「鬼追うもの」 現在草稿中。これが又世界が大きくて。

 
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山椒と毒の間

2007年11月15日 11時38分29秒 | マンガ家名 やらわ行
 昨日、最寄のブック○フで 吉野 朔美さん → 以前の記事 吉野 朔美 「記憶の技法」 の違う短編集を立ち読みしてて、相変わらず毒をちりばめて描いてるな~などと思っていたのです。そして、はっと気づいてしまったのですね~ 

 以前今年6月22日の記事で紹介していた 槇村 さとるさん → 槇村 さとる 「Do Da Dancin!」 個人的に、とても綺麗な絵でお話もノーブルで好きな作家さんなんですが、なぜかコミックスを集めるほど好きではないようで、1冊も持っていないのです。
 その コミックスを集めるほどではない  好きさ加減がこれか~と思い至ったというわけ。
 反対に又毒が強すぎて、吉野 朔美さん は集めるほど好きじゃない。私には人から借りるか、まんが喫茶で読む作家さんなんです。

 もう十分大人のわたくし、の手元にある本たちを眺めるに、直球そのものの作品より、ちょっとはひねったところがなくちゃつまらない。
 猛毒じゃなくて山椒やわさびのようにぴりりと利く程度の皮肉や、酸いも甘いもかみ分けた大人のエスプリや、でもやっぱりものの本質を鋭く突いた普遍的なものが根底にないと納得できないし・・・と、いろいろ我儘。

 好きな作家さんの中でも、例えば萩尾 望都氏の作品の中で、どうも 「残酷な神が支配する」 は毒が効き過ぎて、読んでて辛くて好きになれない。でもやっぱり気になる作品なので、そのうち時間が経ったらじっくり読んでしまう作品かも知れないけど。同じ作家さんでも、作品によって皆さん好き嫌いはあるでしょう ? 
 
 普通の男女の恋愛話より最近BLに走っている (笑) のも、普通じゃもうつまんないのでしょうね~ ? イマドキ障害のある恋愛なんて男女の間では皆無ですもの。
 BLに関してはもう自分の好み全開で、特に笑いのセンスが好きな方 (山田ユギ氏・西田東氏) でないと読んでてつまらない。BLは私にとって娯楽作品そのものです。

 バランス中間よりやや毒ッ気の多い作品の方が好きかも。これはこちらをお読みの諸姉の皆様も同じでしょう。いやいや、今更そんなことに気づいたの、とあきれられるかも。

 思いつくまま書きなぐっていたら、なにやらまとまりがない記事になってしまいましたが、

山椒の辛さから猛毒一歩手前まで、この中に入るあなたのキャパはさて、何冊くらい ?
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山下 和美 「寿町美女御殿」 1~2巻

2007年10月11日 16時15分52秒 | マンガ家名 やらわ行
              YOU 2003年14号より連載中

              満天さんよりお借りしています。


 本屋でコミックスを見かけ、読んで見たかったんですよ、これ~。だって見るからに今までの年配女性の概念とは違う怪女のあでやかな立ち姿の表紙絵  連載誌をちらちら立ち読みすると、どうやらこの美女は102歳らしい 

 おばあちゃんが主人公のマンガなんて、「おトラさん」 (西川 辰美原作 読売新聞朝刊 1954-1955 柳家金語楼 主演で舞台-TV中継あり- や映画で人気を博しました) とか  いじわるばあさん が頭に浮かぶこちとら昭和20年代生まれ。最近ではやはり満天さんにお借りした ほのぼのタッチの 「利平さんとこのおばあちゃん」 を読んだくらいか。

 マンガの中で以前から例えば、主人公の少年少女の祖母で飛んでるおばあちゃん、というのは良く出てくるキャラだった。中にはスーパーマンのようなおばあちゃん達もいたが、あくまで脇役で彩り程度でした。これは堂々の主役です。
 流石は超高齢社会に突入寸前の日本、これからこういうマンガが多くなるのか ? 

 表紙見返しで、作者は 「サイバーーパンク嫁・姑モノです。」 と言ってますが、ここには姑が3人、嫁が4人 (一人は死亡、2名は姑でもある) 若い娘2人も出てきて、一つ家に住んでいるのですから嫁の私には読むだに恐ろしい。 

 しかし、何といっても一番凄まじいのはこの102歳のエリザベスおばあ様なのは言うまでもなく、この人多分ロシア人で、王位継承16位の座を捨て、(っていつの時代じゃい) 全てを捨てて (でもドレスは持ってきた) 日本人の彼を追って来日したらしい。もの凄いお金持ちで、外観は純日本家屋、中は最新機器満載の豪邸地下に住み、1階にはさっきの女ばかりの家族5人が住んでいるという設定になってます。

 エリザベスのひ孫に当たるこの家唯一の男性、秀行さんが死んで3ヶ月後、無用心だからという理由で下宿人1号になった 菅平 彰造君 大学一年生の不幸 (得がたい体験?) は始まるのであった・・・。
 
 その後もいろいろな理由で増える男性同居人ともども、奇想天外なお話が続くこと。しかもエリザベスさん段々若くなってるし。日ごろのうっぷんを晴らすように嫁・姑話を笑いながら読み進むが、時々マジで笑えないところも有り~の、娘二人の恋愛話にハラハラし~の、謎の男性秘書にどきどきし~の、で大変面白ろうございましたわ~。

 印象に残ったお話は、第5話のエリザベスの孫の嫁、テイさんが一時的に家出した時のお話。荷物をまとめて家を出てきたくせに、町で3枚セットの赤いパンツを見れば3人で分けるとすると・・・と嫁と姑の顔が浮かび、派手なフェイクファーを見ればエリザベスおばあさまに似合いそう、と思い出しとどうしても家族の顔が浮かぶのです。
 行くあてのないテイさん結局家に戻るのですが、一つ家に住んでいると家族という意識は自然と生まれてきて愛憎半ば、なんにつけても無視の出来ない関係になってしまうんですね。愛情の反対は無視ですから、やっぱり愛してるってことかしら。

 ところで、テイさんの夫 (エリザベスの孫) の名前は 省吾 というんです。もしかして山下氏、浜田 省吾ファン?
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

芳崎せいむ 「金魚屋古書店出納長①②」 「金魚屋古書店」1・2巻

2007年08月21日 09時07分36秒 | マンガ家名 やらわ行
         
          どちらも小学館刊 「金魚屋古書店」 は3巻~5巻も刊行済み 
   
         たれぞ~さん にお借りしています。


 まんが専門古書店 金魚屋 に間借りしている斯波さんが金魚屋の底知れぬダンジョン (地下倉庫) を指して言う。

 「ここにある全ての本だってこの世の漫画の本の一部なんですよ。」

 「そしてオレもここにある漫画の全てを読んでいるわけじゃない。だけど・・・」

 だけど漫画のことが好きなんですね~~ うんうん!

 「金魚屋古書店出納帳」 ののっけの話から石森(当時)章太郎氏の 「サイボーグ009」 のコミックスの話でね~。しかも私の持っている 秋田書店サンディーコミックス ね。 過去記事 →  石森章太郎(当時) 「サイボーグ009」

 いいな~、羨ましいな~、私本当はこのブログにこんな記事を書きたかったんですよね。しかも 芳崎 せいむ氏 はマンガでやってるしな~。いえね、自分の実力も知識も到底足りないってのは重々承知しておりますから、このマンガのファンの方及びマンガマニアの皆様、「何様!」 って怒らないで 「バカなやつ」 って見過ごしてくだせぇお代官様~
 それにこのブログに書いているまんがに関する自分の話は大体本当のことですからね、創作じゃ有りません。思い違いというものはあると思いますが。
 

 あっ、読んだことない方にご説明しますと、場所はとある町はずれ小川の流れに沿った道に建つまんが専門古書の金魚屋という小さな店。しかしその地下にはまんが古本でないものは無いと言われる広大なダンジョンが続いていた・・・・。
 実在のマンガにちなんだ話が続々と現れてマンガファンには堪えられませんし、古いマンガの知識も増えるし、からむお話も人情あるちょっといい話ばかりだし。
金魚屋の店主であるおじいちゃんが又良い味でね~。ハヤリのせどりさんやまんがマニア達も絡んで今の業界話もちらっと覗けます。(笑)
 
 金魚屋の正体不明の居候、不要にイケメンなまんがバカ 斯波 尚顕と同店店長代理 (おじいちゃんの孫ね) 鏑木 菜月 (鏑木というのは浮世絵師の鏑木清方から取っているのかな) の恋の掛け合いが又おんもしろい~。菜月は斯波のことこの店ごと自分を好きなだけだと思っているけど、最後は一緒になって店を継ぐのかな~ ? 私は2巻までしか読んでいませんが、「金魚屋古書店」 は5巻まで出ているし、まだ月刊IKKIで連載中らしいので早く続きが読みたいです。

            まんがファンなら必読でしょ !
コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山田 ユギ 「おひっこし?」

2007年05月21日 11時53分14秒 | マンガ家名 やらわ行
          山田 ユギさん の新刊 ボーイズラブ なしです。
 
白泉社 ジェッツコミックス 2007年5月5日 初版

 やっぱり、山田 ユギ氏 初の非BLコミックスだそうで。それどころか、女の子も出てきて恋愛話か?と思ってるとキスさえありませんよこのマンガ。でもおもしろかった~。まだ未読の方多いと思うし、お貸ししようと思う方もいるのであらすじなし。

 オムニバス形式で登場人物に関する家及び引越しに関するお話が続きます。まだ月刊メロディにて連載中というか、掲載が続いているようなので2巻・3巻も期待したいですね。
 キャラの一人一人がしっかり描き分けられていて引き込まれます。むーん、これ以上言っちゃうとネタバレしそうだから我慢…我慢…。

 あ~ん、こんな不動産屋あったら毎月でもお引越ししたいですわん。私はスマイリー (上の段左側のハンサム君) 狙いです。もちろん、ただのハンサムじゃないですよ~。(爆)


コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

女流の開拓者 矢代 まさこ氏

2007年05月09日 13時01分12秒 | マンガ家名 やらわ行
 写真は貸本時代の代表シリーズ ようこシリーズ の中から 「おしゃれなヨーキ」

 私が 矢代 まさこ氏 の作品を最初に見たのはいつ頃のことだったか。COMに初めて掲載された女性まんが家は 水野英子氏 で、次が矢代氏だったが、もっと前から知っている人だった。別冊マーガレットの昭和41年(1966)12月号に載った 「ミミー、みっつ」 はまねてスケッチブックに画いた覚えがあるので、それ以前からの 別マ で時々見ていたのでしょう。けっこう好きな絵柄の人で、見つけると喜んで見ていた。模写もしていたように思う。

 矢代 まさこ氏 はデビューが昭和37年(1962) 金園社刊 貸本雑誌の (すみれ24号) 掲載 「ちいさな秘密」 (わたしは未見) で、その後も貸本の世界で人気を得て、28巻も出た 「ようこシリーズ」 という個人集まである。1話づつ違うようこちゃんが出て来るシリーズ。
 この 「ようこシリーズ」 は、私も貸本屋で何冊か見ている。完結の 「おしゃれなヨーキ」 を浦和の貸本屋で見つけ、売ってるものと勘違いして店主の老夫婦とちぐはぐな問答をしたことがある。進学塾の帰りだったから多分私が中学3年の頃のことで、すでにその頃昔ながらの貸本屋というのは絶滅寸前だった。それからしばらくここは私の桃源郷と化していたっけ。


                  


                  貸本 よっこヒヨッコ逃亡記 表紙



 今思えば、老夫婦に渡りを付けておいて、廃業するとき矢代作品はすべて引き取らせてもらえばよかった。他にもその小さな店には、少女向けでは 高橋 真琴・巴 里夫・白土 三平 (少女まんがも描いてたんですよ!)・赤塚 不二夫・池田 理代子・貸本時代の最後を飾った 山田 美根子(ミネコ) 等も有ったはずだ。少年、青年向きでは覚えているだけでも さいとう たかを・佐藤 まさあき・辰巳 ヨシヒロ・つげ 義春などが有ったはず。
 あーっ、もったいなかったって・・・中学生ではそんなこと思いも出来もしなかったか。

 矢代氏のファンの方がとてもくわしいHPを開設していらっしゃいます。 ↓

       矢代 まさこ漫画館

 この中の作品リストを眺めていると、 別マ の作品にはなんとなく憶えのある題名が多い。「ミセス・モンローのお嬢さん」 昭和42年(1967)とか  「キキの新しい歌」 昭和43年(1968)1月号  「トムピリビに会った?」 デラマ 昭和45年(1970)春の号などなど。
 「キキの新しい歌」 は、昭和45年(1970)7月号のCOMに 「ノミの歌」 として再掲されている。COMには再掲の断り書きがしてあったが、個人的にどこかで見たなーと思ったのは 別マ で、でしたか。

 COMの姉妹誌 「ファニー」 も読んでいたはずなのに、「ファニー」 掲載の題名を見ても何かピンと来ない。昭和44年(1969)~昭和48年(1973)頃ではもう少女マンガに関心が薄れてきた頃か。

 矢代氏は女流としてはほとんど始めて男性誌にもいろいろ描いている人で、昭和40年代の少年週刊誌の 少年マガジン、少年サンデー、少年キング、少年ジャンプ、少年チャンピオンにとすべて描いてますね。漫画アクションやビックコミックオリジナル、コミックアゲインにも描いてます。
 ありゃりゃ June (いわゆるひとつのBL誌の老舗) にも描いてるわ~。昭和54年(1979)5月号 「瑠璃をみる」。そういう匂いの全然ない方なので、どんなん描いてるか興味深々、どなたか見たことある方居たら教えてください。

 リストを眺めているだけで、楽しくて一記事分になってしまいました。矢代氏は奥が深い・・・深すぎる。。。いつになったらCOMの矢代作品にたどり着けるのか不明・・・。
コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする