↑ 写真は 「僕は旅をする」 が収められている文庫版コミック 「砂の上の楽園」
今 市子さんの初期短編が絵柄、お話共に好きなのは以前言ったが…。
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マンガ家の絵柄の変わる時 今 市子
今さんは近年もっとも好きな作家さんのお一人ですが、BLものもいいけれど初期の短編が絵柄、お話共に好きな物が多くて。もちろんBLの長編も好きなんですけど、長編だと作者の性格なのかあれもこれもと話が枝分かれしたり飛んだり、登場人物も多くなって収拾がつかなくなりそうになることが多いみたい。
それでも最後は上手くまとまるのはさすがですけど。
初期短編というと、1993年デビューの今さんだと同人誌時代の 1991年 「ユディトの帰還」 (Ⅱものちに読みました) 「神々の花」 1992年 「夜の雫」 を除いて2000年までとしても、
1993年 「マイ・ビューティフル・グリーンパレス」 コミックイマージュ
「夏服の少女」 眠れる夜の奇妙な話以下 ネムキ 「GAME」(1993年-1996年 Xi ザイ」 「図書館で会いたい」 コミックイマージュ 僕らの季節(1993年、コミックイマージュ)
1994年 「僕は旅をする」 ネムキ 「懐かしい花の思い出」 ネムキ 「眠りにつく前牛乳を」 ネムキ 「六月病」 コミックに描き下ろし ちょいBL趣味 「昼の月」 ネムキ 「精進おとしの客」 (のちの百鬼夜行抄に繋がるお話) ネムキ 「へんなやつら」(1994年、コミックイマージュ)
1995年 「百鬼夜行抄」 連載中、ネムキ 「五つの箱の物語」(1995年-1996年、小説イマージュクラブ 「花曇り(1995年、コミックイマージュDX、白夜書房
1996年 「笑わない人魚」 COO 「文鳥様と私」 あおば出版 「雨になればいい」 ネムキ 1997年 「青髭の友人」 COO 「夜の森の底に」 ネムキ
1998年 「真夏の城」 COO 「砂の上の楽園」 ネムキ 「赤い袖」 ネムキ
1999年 「真夜中の食卓」 ネムキ増刊
2000年 「沈黙」 ネムキ 「遺影がない!」 ネムキ増刊・大ピンチ!
2000年までの作品で私が読んでいるのはこのくらいか。あと、私が読んでいないのは以下のものなど。
青少年のための少女マンガ入門(3) より
「ファミリー・ブルー」雑誌「メロディ」(白泉社)掲載、単行本未収録
「DREAM AWAY」(86年作品。ネムキ99年10月号増刊掲載、単行本未収録)
「Walts」(86年作品。ネムキ99年10月号増刊掲載、単行本未収録)
「木の下闇」(94年作品。ネムキ99年10月号増刊掲載、単行本未収録)
読んでいるものの中では、掲載誌の関係かちょっと怖かったり奇妙なお話が多いのだけど、その中でも私のお気に入りは 「眠りにつく前牛乳を」 と 「僕は旅をする」 のふたつ。
「僕は旅をする」 はTVの「世にも奇妙な物語」にて稲垣吾郎主演で映像化されたので覚えている方も多いかな。
ウィキによるTV版記事はこちら →
「僕は旅をする」
どちらもシンプルなお話ながら見えない怖さ、なんだかわからない恐さ、で大いに恐い。
「眠りにつく前牛乳を」
ある大学の古い学生寮では七不思議がまことしやかにささやかれていた。僕はある日部屋のドアの外から 「牛乳をください。」 という声を聞く。
毎晩あげているうちにお返しに美味しいお酒をくれるようになった。姿の見えない何者かに寮の皆は面白がって牛乳と空き容器を並べ、酒をもらうようになる。ある日ぱったりくれなくなり…。
「僕は旅をする」
弟の克也は旅行に行くと言って家を出た。しかし何時間もしないうちに踏み切りで事故に遭い首のない死体で家に戻ってくる。姉のひとみは弟が死んだことに実感が持てない。ところが克也が死んでいたはずの時間に言っていたのと違う旅行先の旅館に泊まっていた事がわかり、真相を知ろうとひとみは克也を追いかけて旅に出かける。
ひとみは生きている克也に出会えるのか、克也はなぜ皆に嘘を言ってまで旅に出かけようとしたのか…。
ハリウッドが作っていたホラーは怖いというよりグロでとても好きになれない。恐れる者の正体がはっきり分からない方が恐怖は倍増する。他の人のホラーマンガでも正体が分かると面白みが半減する。日本的なホラーが近年欧米でも評価が高いのは、人間誰でも分からないものの方が怖いと見える。
今さんが不思議で怖い物語を作り続けることができる秘密を少し。
2009年01月10日asahi.com 今市子さんの記事 →
asahi.com:【9】漫画家 今市子さん-マイタウン富山