↑ ㈱小学館 ビッグコミックス 1~18巻 1995年8月1日~ 初版
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小人たちが笑う部屋
連載中はちらちらと見ていた程度で、その頃から重厚過ぎて連載でブツブツ切れたものを見てもきっと良さの伝わらない作品なんだろうとは思っていました。最後の方、ちょうどまるまる18巻の頃は、大作がラストを迎えるというので私なんぞでも連載中の雑誌を立ち読みとかしてみたが、前の話を覚えていないしなかなか決着がつかないので立ち読みもやめたような記憶があります。
この方の作品は決着がついたところで一気読みですよね。(偉そうに言う)
偉そうといえば浦沢作品にはディープなファンもいっぱいいらっしゃるので、解説や感想などはそちらにお任せするとして、この中で個人的にぐっさり来た事をここで書いてやろうと読んでる最中は思ってました。
1巻の前半で、高慢な病院長の娘がこともなげに言う言葉
「人の命は平等じゃないんだもの」
はい、私たちはわずかなお金のワクチンが打てずに日に何百人と子供たちが死んでいく国があることを知っています。飢餓で死んでいく子が今だ地球上にいることも知っています。
でもそれは私たち普通の日本人にとっては言ってはなんだけど、TVの向こうの出来事。この 「MONSTER モンスター」 という作品が始まる1980年代のドイツでは、そんなことありませんよね ? ましてや今の日本では。
私の だんな は去年と今年ガンの治療の為入院の必要があり、大病院の空きベット待ちをしました。両方とも1ヶ月以上待たされ、特に2度目の時は再発ということで、こちらも精神的に辛く、差額ベッド代の比較的安いものでなくて料金の高い部屋にすぐに入ってしまおうかとか、いろいろ考えてしまいました。
もちろん、1度目の入院の時には素晴らしい先生に手術をして頂き、肺活量が低下して走ることはできませんが、仕事にも復帰してゴルフを楽しむ以前の生活に戻れました。2度目の時もラッキーなことにガンの数値というんでしょうか、高いと思っていたものが低くなり、化学療法もせずに短い入院で家に帰ることができました。
でも、ガン数値が高いままで待っている間にどんどん悪くなって行ったら ? 実際1度目の時は待っている間に医者が思っていたよりも肺に出来たガンが大きく育ってしまっていました。
大きな良い病院で、1日3万円や10万円の部屋もあるところです。そういう部屋ならすぐに入院出来て、すぐに検査を受けられて、すぐに手術や治療が受けられるの ? 庶民はそう思ってしまいますよね。実際そうなんでしょう。
それでも 国民皆健康保険 を唱っている日本はまだ良い方です。アメリカ・ハワイに住んでいる姉の話を聞いていると嫌な言い方ですが、医者にかかるのもリアルにお金次第なんだそうです。
大体健康保険という考えがない国もあるでしょうからね~。まだしも日本国民でよかったと思わないといけないのでしょうか。こういうことは知識として知っていても、実際身近に経験してみないと胸の深い所に響いてきませんね。
ところで、この言葉は始めの方に出てきて、言っているのもさして作品中重要と思われなかったお嬢様で、その傍若無人な性格を表すだけのセリフかと思っていると、ずっと後でまた出てきます。しかもこのお話の深い所を突いているのです。
読者はあとで気がつく事になるのです。これが重要な主題だったのかと…。浦沢さん凄い。
この言葉と対をなして語られる言葉が又、真理過ぎて嫌になる。
もう一人の主人公、ヨハンの言葉
「誰にも平等なのは 死 だけだ」
「MONSTER モンスター」 の主人公である ドクター テンマ は後から搬入された市長の手術より、先に搬入された 男の子供 の手術を院長に逆らって行い、結果的に立場を悪くしてしまいます。(これはまだ事件の始まりでしかないのでこの後いろいろあるのですが) 話が進んでもテンマの正義感は揺るがずに読者は彼に肩入れせずにはいられません。
又、ストーリーも読者が途中であ~じゃないか、こ~じゃないか、やっぱりこうだろうな~、いやひょっとすると、と推理出来て大変面白かったです。まとめ読み出来て良かった、満天さんありがとう !