猫とマンガとゴルフの日々

好きな物を題名に↑ 最近はゴルフとグルメお出かけ主体に。以前は1960年~70代マンガを紹介していました。ネタバレ有り。

山岸 凉子 「白眼子 はくがんし」

2008年03月19日 20時15分39秒 | マンガ家名 やらわ行
     
        潮出版社 希望コミックス343 2000年12月5日 私の持っているのは第1刷発行のもの。


 「白眼子」 初出 「月刊コミックトムプラス」2000年5月~9月号に掲載。 
 同時収録 「雨の訪問者」 初出 「月刊セブンティーン」1979年7月号掲載
 
 この本には特に書いて無いので原作は無いのでしょうが、モデルになった方はいます。運命観相家として昭和20年代~40年代始めに北海道で有名だった 白眼子 という盲目の男性です。この方は印相の本や趣味の短歌の本なども出版されています。

 山岸氏は同卿の実在の運命観相家 (易や占いとは別ということですが、私もよく分からない) 白眼子(はくがんし) のことにとても興味があったのでしょう。子供の頃北海道で大人の話題や新聞などでも評判になっていたのでは無いかと思います。ご自身も 見える人 なので霊能者・異能者には興味あるのでしょう。
 山岸氏は資料を探して読み、じっくり調べてこの作品をお描きになったのでしょう。又、直接話を伺ったのかは不明ですが、この話の語り手で白眼子の養女、光子さんが書いたものか、ご本人から聞いたと思われるような細かいところまで描写しています。
 白眼子ご本人や、この作品に対する慈しみのようなものが感じられます。

あらすじ
 
 終戦直後、親戚とはぐれ闇市で震えていた孤児の光子 (みつこ) は 白眼子 と呼ばれる運命観相家とその姉に拾われ 最初は怖いと思っていた盲目の 白眼子 も姉の加代にも慣れ、籍も入れてもらい学校にも行かせて貰って 白眼子 の観相の手伝いなどをして育ちます。

 白眼子の元には、時節柄戦争で行方不明になった息子の消息を聞きに来る夫婦や子供の病気快癒を願うもの、景気の行方を気にする実業家などが訪れ、光子は様々な不思議な体験をするのです。

 ある写真から実の親戚が見つかり、喜んで遊びに行ってそのまま親戚の方にいることになり、そのうち結婚もして白眼子の方とは疎遠になり・・・。しかし夫の乗った船の遭難という悲劇の最中、光子の夢枕に 白眼子 が現れるのです。
 
 その後もいろいろな出来事がありますが、事実らしい淡々とした描き方なのに無口な 白眼子 が時々口にする言葉が実にいいのです。

「どうやら人の幸・不幸はみな等しく同じ量らしいんだよ」

「災難を避けよう避けようとしてはいけない。災難は来る時には来る。どう受け止めるかが大事なんだ」

「必要以上に幸運を望めばスミに追いやられた小さな災難は大きな形で戻ってくる」

 この ↑ 最後の言葉 私はとっても胸に来たんですけど、皆さんどうですか ?

 自らを、小さな災難を小さな幸せに変えるだけしかできないという白眼子。(それだって凄いことだと思うけれど。)
 宗教とは違うし諦観とも取れるこれらの考えは、言われて はっと 思い当たる世の中の真理。新興宗教にはまるよりこういうマンガを読んだ方がよっぽどためになる。
 何か気になる作品なので時々繰り返し読んでいます。山岸ファンでなくてもぜひ読んで損はなく、白眼子 の人柄のように穏やかな気持ちになれる名作だと思います。

 作品中で藤田乙姫という美少女霊能力者がちらっと出てきますが、この乙姫のモデルは知ってます。戦後最大の占い師として有名で、政財界に多数のファンがいた 藤田 小女姫 さんですよね。ハワイで銃殺されて亡くなったのは1994年か~。もう14年前なんですね。いまだに謀略説があるというのも、政財界の裏話が書かれていたという藤田氏の見つからないノートと相まってミステリーより事実は・・・ですね。
コメント (19)
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