正式版ルールを真面目に読んでみたシリーズ(!?)の第3弾です。
今回は、一番マイナーな RoboCupJunior Rescue Simulation 2023 です。
Rescue Simulation のルールはあんまり把握していないので、2023ルールでなにが変更になったのか正確にはわからないのですが・・・
・エリア4が追加になった
が大きいと思います。
後は、他の競技と同様に競技結果だけでなくドキュメント評価が総合得点に影響するようになったようです。
じゃあ・・・他の2つと同様に、ルールを読んで「んっ!」と思ったところを書き出します。(2023ルールで変更になったところではないかもしれません)
Before you read the rules
The English rules published by the RoboCupJunior Rescue Technical Committee are the only first draft rules for RoboCupJunior Rescue Line 2023.
最初から、ダメダメですね。
まず、これって Draft ルールなの? 違いますよね正式版(Final rules)ですよね。 こんな基本的なことを、誰も確かめないの?
さらに・・・ Rescue Line じゃないよね Rescue Simulation だよね!
もう一度書きます・・・こんな基本的なことを、誰も確かめないで公開してるの?
Summary
A sample Area 4 (Tentative):
2023ルールで追加されたエリア4ですが・・・もう、これは、LiDER限定のエリアですよね。で、そのエリア4なのですが・・・Area 4 (Tentative)って「仮」なの? これ、正式版ルールじゃないの? いつ「仮」じゃないのが出るの?
2.1.5. Teams are encouraged to develop their worlds and upload these to the forum to enable sharing.
そのまま訳すと「世界を創りなさい」みたいに書かれているけど、worldとは競技フィールドのことなんですよね。その説明がどこにもないから、ルールだけを読んだ人は、恐らく何のことだか分からないと思います。
2.2.2. Area 4
2023年ルールで追加されたエリア4です。 めっちゃ難易度高いと思います。 こんなに難易度が高いと・・・(それでなくても少ない)参加者が減ってしまうのではないかと心配です。
このエリア4は、壁が自由に設計できるので、これまでの常識(壁は直線で東西か南北方向に置かれているなど)が通用しません。
2.3.2. Silver tiles will be placed randomly at the start of each game.
銀のタイルは競技開始時にランダムに配置される、と書かれていますが、嘘です。 そんなのは見たことがありません。 少なくとも Rescue Simulation では意味ないです。
2.4.1.7. Black tiles will affect the determination of wall type (linear or floating) since they can be considered virtual walls.t wall.
黒のタイルは壁とみなす・・・というのは良いのですが・・・エリア2とエリア3では通路の半分が壁でふさがれていて、「壁はつながっていないけどロボットが通れない通路」が存在します。 リニア壁、フローティング壁の判断は、そういうのをちゃんと考慮しているのか不明です。
(壁の種類や配置が被災者の得点にかかわるので)
2.4.2. Area 4
2.2.2 も Area4 で、項番が違うだけ。 これ、タイトルの付け方や項番が整理されていない感じです。
で、この2.4.2 の下に 1. 2. と続いてエリア4の絵があって また1. 2. と続きます。 おそらく下の 1. 2. は 3. 4. の間違いだと思います。
2.4.2.2. Area 4 will not exceed one-quarter of the entire arena.
2つある2.4.2.2 の後の方です。 arena という表現はどこにも使用していません。 おそらく field が正しい表現だと思います。
2.4.3. Division of Areas
The colors of the connection tiles are as such:
• Between Area 1 and 2: Blue
• Between Area 2 and 3: Purple
• Between Area 3 and 4: Red
• Between Area 4 and 1: Green
もう、なんでこんな基本的なことを突っ込まなければならないのでしょうか?(苦笑)
まず、2.4.3に書かれている説明が、最初にあるフィールド全体の絵
と合っていません。
エリア1とエリア2の接続部分 ルール(青) 絵(青) ここはOK
エリア2とエリア3の接続部分 ルール(紫) 絵(赤)
エリア1とエリア3の接続部分 ルールなし 絵(紫)
もうこれだけで、なんだこのルール? という感じです。
上に書いたようにルールにはエリア1とエリア3の接続部分が書かれていません。 これは、接続しない(接続させたらルール違反?)ということでしょうか? (でも、2.2.1.3には、すべてのエリアはつながってると書かれてるよ)
ルールではエリア3とエリア4の接続部分が赤ですが、上の図では赤はエリア2とエリア3の接続部分です。
そして、エリア2とエリア4の接続部分がルールにはありません。
一体、どれが正しいのでしょうか?
2.6.2. Visual victims are uppercase letters printed on or attached to the wall.
ここにだけ Visual victims という表現があります。 これ、昔のルールの名残で修正漏れと思われます。
3.5.5. All teams have to submit their source code before the competition. The organizers will share them online after the competition such that other teams can draw inspiration and learn from them.
ソースコードを事前に提出させるのは、他の競技でもやっていますね。(私は意味があるとは思わないのですが・・・) ここからがびっくり! そのソースコードを他のチームの勉強のため、ということで競技会後に公開するそうです。 これは、参加チームは嫌がると思うのですが・・・(まあ適当なソースコードを提出しておこう・・・につながるのでは・・・)
3.6.3. Any software specifically designed to complete any single primary task of RoboCupJunior Rescue, e.g., any letter recognition libraries such as Tesseract or EasyOCR, etc., will be prohibited.
被災者の発見と種類の判断は、カメラを使用した画像解析の技術に依存することになると思います。 その画像解析に Tesseract や EasyOCR など、既存のライブラリを使ってはダメ・・・なんだそうです。
これらのライブラリが 「RoboCupJunior の主要タスクを実施する特別なソフトウェア」だとは思えないのですが・・・
さらに疑問なのは・・・これ、Rescue Maze のルールでは使用を禁止していないのですが、Rescue Mase では使用可能なの?
4.3.7. Pre-mapping the field or victim’s location is prohibited. Pre-mapping activities will result in immediate robot disqualification for the round.
プレマッピング禁止というのは一般的には分かるけど・・・4.3.4でプログラムを提出した後で競技コースを公開するのだから、実質的にプレマッピングは不可能だよね。もし、プレマッピングするとしたら、スタッフに共犯者が必要・・・ということになります。
4.4.4. The game time allowed is 8 minutes in real time (not simulated time). Since this is a simulation, an additional one-minute real-time will be allowed. Thus, judges will terminate the controller when 9 minutes of real-time expire.
う~ん意味が良く分かりません。普通に考えるとシュミレータがカウントする8分が競技時間だと思うのですが・・・シュミレータの8分と、私たちが生活しているリアルタイムの8分で多少の違いがある、ということでしょうか? シュミレータの8分の方がちょっと長いので9分にしている・・・ということなのかなぁ?
もしそうなら、最初の The game time allowed is 8 minutes in real time が合わないですよねぇ。The game time allowed is 8 minutes in simulation time なら、納得なのですが・・・
4.4.6. * Judges will start the game with the submitted code loaded on the simulation platform.
チームはコードを提出しないよね。 コードの入ったPCを提出するんだよね。 なんか表現が(これまでの流れと)マッチしていません。
審判が競技をスタートさせるのですが・・・4.4.3でも同じように「審判がスタートさせる」と書かれています。 なぜに4.4.3と同じことが書かれているのでしょうか?
4.5.2 The Robot can be installed in any direction.
競技進行停止後の再スタート時にロボットの方向を自由に設定できるように書かれているけど・・・ 実際にはできないと思います。
4.6.2. For successful victim identification, the center of the Robot must be equal to or less than half a tile distance from the location of the victim when the Robot indicates a victim has been identified.
被災者の発見ですが・・・ロボットの中心が被災者から6cm(経路の半分の長さ)以内で「被災者発見のアピール」をする。 と、一見まともなルールのように思えますが・・・
この図のように・・・ロボットが経路の真ん中を進んでいると、被災者発見になるか微妙な感じです。 確実に被災者発見を認めてもらうためには(経路の真ん中ではなく)被災者に寄らないと得点になりません。 これ、Rescue Maze のようになりませんかねぇ・・・
(ただ、実際のシュミレータでは、被災者からかなり離れていても被災者発見の得点になっていましたので、シュミレータがルールより、かなり緩い感じでした)
4.6.3の下の図
右側が Hazard Maps という表記になっていて、用語が古いです。 これも修正漏れと思われます。
4.6.5. Victim misidentification (VMI). Suppose a robot identifies the victim’s location as greater than half the tile size away from the true position.
誤発見の説明ですが・・・誤発見は被災者しかないのでしょうか? そんなことないですよね、危険物標識も誤発見がありますよね?
4.6.7. Lack of progress (LoP). Each LoP will cause 5 points deduction. However, the total points will never go below zero points.
競技進行停止の説明ですが・・・Rescue Simulation では、競技進行停止ごとに 5点減点 です。 「競技進行停止≒悪」の前提の私としては、「うん、なかなか良いルールだ!」です。
4.6.8. Area multipliers (AM).
a. The scores for VI, VT, and CN obtained in each of the three areas will be multiplied by a unique multiplier.
この three area は four area の間違いだと思います。エリアは1~4まで4つあるので・・・
4.6.8
a. The multipliers are 1, 1.25, 1.5, and 2 for areas 1, 2, 3, and 4, respectively.
b. The multipliers are 2, 2.25, and 2.5 for area 4 respectively
エリア乗数ですが・・・
a. に エリア1(1.0)、エリア2(1.25)、エリア3(1.5)、エリア4(2.0)と書かれていますよね。
じやあ、b.に書かれているエリア4の2.0、2.25、2.5の3つの数字は何だろう? いや、全く意味が分かりません!? どうしてエリア4の乗数が3つも書かれているの?
4.6.10
c. For Area 4
i. Simply fill area 4 elements with arbitrary values (any character). This includes the border of area 4.
マッピングボーナスについてなのですが・・・エリア4は・・・「どんな値でもいい」って書かれているけど、なにをどうすればよいのか、全く分かりません。 マップの例もエリア3のしかないので・・・
エリア4は、具体的に、どんなマップ情報をつくるのか教えて!
4.6.13. Robot Scoring will be automated through the platform scoring engine
もう、計算式が複雑になりすぎて、理解が追いつきませんね。
で、この4.6.13の下に、計算例が掲載されています。
このエリア4のところを確認してみました。
例の表には
VI(被災者の発見)として
5点の被災者:1
10点の被災者:1
15点の被災者(危険物標識):1
30点の被災者(危険物標識):1
なので合計60点になります。
VT(被災者の種類の識別)として
10点の識別(被災者):2
20点の識別(危険物標識):2
なので合計60点になります。
CN(チェックポイント)として
10点:1
なので10点になります
これで VI+VT+CN=130点ですね
一方
VMI(誤発見)1回
なのでー5点になります。
LOP(競技進行停止)2回
なのでー10点になります。
そしてAM(エリア乗数)が2.0なので
エリア4の小計は
130×2.0ー5-10=245 で245点のハズなのですが・・・
ルールの表に書かれている小計は230点です。
恐らく、VMIとLOPにもAMを掛け算していると思われます。
ということで、この計算も、計算式が間違っているのか、表の計算結果が間違っているのか・・・いろいろと確認不足ですねぇ。
4.6.16. The final score is made up of a weighted sum of normalized scores from the robot and the rubrics score as such:
最終的な得点は
0.8×「正規化された競技得点」の合計+0.2×「正規化されたドキュメント得点」で計算されます。最初は「なるほど、競技結果8割、ドキュメント評価2割なのね」と納得していたのですが・・・よく見ると
「正規化された競技得点」の合計
になっていました。
だから、競技回数が多ければ多いほど ドキュメント評価の比率が減ります。
例えば
2回の競技ですべて満点(1.0)、ドキュメント評価も満点(1.0)だと
Total score は 0.8×(1.0+1.0) + 0.2 ×1.0 = 1.8 (ドキュメントの比率 11.1%)
これが8回の競技になると
Total score は 0.8×(1.0+1.0+1.0+1.0+1.0+1.0+1.0+1.0) + 0.2 ×1.0 = 6.6 (ドキュメントの比率 3.0%)
となり、ドキュメント評価の割合が非常に小さくなります。
これでいいの?
ここは、さあ、SUM OF NORMALIZED ROBOT SCORES ではなくて NORMALIZED SUM OF ROBOT SCORES なのじゃないの?(笑)
で、心配になって、Rescue Line と Rescue Maze のルールを見たら、正規化された競技結果の「平均」になっていました。(MEAN OF NORMALIZED FIELD SCORES )これ、Line や Maze と横並びじゃなくていいの?
4.6.11. Ties in scoring will be resolved based on each Robot’s time to complete the game.
4.6.18. Ties in scoring will be resolved based on the game time.
同点の場合は競技時間で順位を決める・・・のでしょうけど、(ちょっと表現が違うけど)これ同じことが書かれていませんか?
4.7.1. A team may elect to stop the round early at any time.
細かい指摘ですが・・・競技終了で、チームがゲーム終了を宣言したら round が終了するのではないですよね、終了するのは game ですよね。
競技会(Competition) 競技全体(tournament)競技回(round)個々の競技(game)がしっかり区別されていないように思えます。
はい、長かったですね・・・
以上です。
お疲れ様(俺)