さがす さがしつづける。
死んでこの世から消えてしまった人や
その人が書き残したあの本を。
さがしつづける ときには小人の赤い帽子をかぶって。
カメラを手にしてさがしている。
この世にある かもしれないものを。
そこにしかない ひっそり輝くものを
だれかの忘れ物を。
自作自演の観客のいないステージ つまり
この世界の片隅のべたべたする迷宮をあとにして
おもしろさを咲かせるタネを拾いあつめている
そのタネを背中のリュックにいっぱいつめこんで
書き割りめいたありふれた日常の
ありふれた一瞬 一瞬を横切る。
出会った人やものの
出会ったばかりのうるわしさ。
雨があがり 木々の枝にしずくがたくさん光っている。
うん そういうものさ。
こころと体の傷を癒してくれる。
さがしているのは それだね。