二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

おもちゃ箱をひっくり返す(ポエムNO.2-01)

2013年02月10日 | 俳句・短歌・詩集

記憶の底にわだかまるおもちゃ箱をひっくり返す。
クラッシュするスコアボード。
フラスコの中のたてがみのない透明な馬。
垂直にのびるヒコーキ雲。
マスタードの味がするトラックのヘッドライト。

捨てられない奇妙ながらくたが飛び出してくる。
あれはなに?
なんだろう。
真っ白いまな板のうえで影絵のモーツァルトがお辞儀している。
まぶたの裏でコオロギが鳴き
鮎が数匹跳ねる 跳ねる。

見えるのにそこにないもの。
見えないのにそこにあるもの。
手さぐりで歩く。
歩いてはきみは立ち止まる 胸騒ぎの
まっただ中で。

ああ



「あれだ!」なーんて叫んでは立ち止まる。
闇夜の奥でカラスが鳴き騒ぐ。

きみ自身がそのおもちゃ箱の住人なんだね。
それなら筋が通っている。
つじつまのあわないものばかりでできた過去と
このさきどうつきあったらいいのか
寄せ返すエロチックな波がきみの脇腹をくすぐる。

見えるのにそこにないもの。
見えないのにそこにあるもの。
名づけられない存在が空の高みでマストのようにはためき
ものはものと闇夜の底で密会する。
さあ
おとといの塀ぎわまでもどって「あの日」のきみを探すんだ。
コオロギのように動きまわる夢のかけらを追いかけて。



※写真と詩のあいだには直接的な関連はありません。

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