二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

ここにいる(ポエムNO.2-25)

2013年11月11日 | 俳句・短歌・詩集
空から人の声が降ってくる
いろいろな声がぼくを取り巻く。
過去に読んだ詩の一節だったり歴史書の数行だったりする。
それらの大部分は 本来は文字だった。
それが 明け方の薄闇にまたたく星屑のように降ってくる。
そしてぼくの胸のドアをたたく。

これはどういうことだろう。
年をとって ぼくの五感はもうずいぶんにぶって
眼も悪くなって 味にも鈍感。
世界は確実に じわじわと遠ざかっていく。
「年をとるとはこういうことか」と友人が嘆く。
若いころは世界との距離はずいぶん近かった。

磐座(いわくら)のつぶやき
雑草やケヤキのささやき。
モズやカラスや声をもたないはずの文字のざわめき。
耳をすまさなくても聞こえてくるよ。
聴覚だけが敏感になった・・・というわけじゃないのに
どうしてだろう?

ぼくはなぜかここで十分だ。
ほんとうにそうか と自分にたずねてみても
答えは変わらない。
いま ここにいることの充足。
「勝手にほざけ」といわれるかな?
まあそれもあり だろうが・・・。

ぼくはここにいる。
ぼくという人間の中に
わたしやおれという人間の中に。
そこから出られないことに苦しんだ時代があった。
ぼくはなにものかときっと和解したんだろう。
ぼくは ここにいる。

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