二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

メンデルスゾーン 交響曲第3番“スコットランド”

2012年10月21日 | 音楽(クラシック関連)

いちばん最初に、メンデルスゾーンの交響曲第3番イ短調を聴いたのはいつだろう。
三十代のなかばころ、事務員から住宅業界に転職し、深夜11時12時まで仕事づくめだったきびしい日々が、3年半ほどつづいたことがある。
以前より収入がアップしたので、オーディオなるものを買って、LPからCDに移行し、5、60枚のCDをあつめて、ヒマがあるときなど、聴いてすごしたものだが、そのCDの90%はクラシック音楽だった。
その中に、廉価版のメンデルスゾーン、第3番第4番のカップリングがあった。
演奏はクレンペラー&フィルハーモニア管。
だから、推測では、この音楽に魅せられてから、おおよそ25年がたっている。

“スコットランド”は、わたしを、ある種の幸福感で満たす。
あこがれと、憂愁の音楽とでもいえばいいのか?
クレンペラー盤のあと、図書館で借りたショルティ盤だか、ムーティ盤だかでも聴いたはずだが、ほとんど印象に残っていない。

このあいだ、音楽之友社から上梓されている「新編 名曲名盤300」を見返していたら、つぎのようなデータが出ていた。
1.クレンペラー指揮フィルハーモニア管(1960年) 23点
2.アバド指揮ロンドン響1984年) 7点
3.ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ(1994年) 7点
4.カラヤン指揮ベルリンフィル1971年) 5点
(以下省略)

カッコ内は録音年度、右の数字は、音楽批評家10人による人気投票の得票点数。
ご覧のように、クレンペラー盤がぶっちぎりの1位である。
それほど支持率が高い演奏だとは知らずに聴いてきたので、いまだにこれだけ人気をたもっている・・・というのが、不思議な気がする。
数日前、BOOK OFFの散歩でEMIから発売されている“正規盤”が眼についたので、買ってきて、二度ばかり聴きながら至福の一時をすごすことができた。

若かったころは、メンデルスゾーンはヴァイオリン協奏曲もごたぶんにもれず、よく聴いたが、いまあらためて聴いてみると、あまりにロマンチックで、甘口で、やや女性的な曲想と感じられて物足りない。第4番“イタリア”のほうがおもしろいが、この曲はスコットランドのあとで聴くと、やっぱり少し物足りない。
しかし、管楽器の使い方の美しさは特筆ものだし、第4楽章の充実度はすばらしくわくわくさせられるので、もっと聴きこんでいく必要があるかもしれないし、あるいは“イタリア”の場合、他の名盤をさがしたほうがいいかもしれない。
さっき「新編 名曲名盤300」を参照したら、4番では、トスカニーニ&NBC響の人気が高い。

わたしの印象では、クレンペラーは、どちらかというと厚ぼったい、重々しい音楽づくりをする指揮者である。たとえばモーツァルトでは、ワルターまたはベームが基準となっているわたしの耳に、クレンペラーの演奏が「もっさり」と聞こえるというか、あまりに“巨匠ふうで”、モーツァルトらしくない。
ところが、メンデルスゾーンの3番の場合は、そうではない。
かゆいところに手が届くようなアゴーギク(テンポやリズムの意図的なゆらし方)とでもいったらいいのだろうか? ドラマチックだが、ドラマチックすぎず、甘美なのだが、甘美すぎない。必要なところには、苦味、渋味が効いて、なんともいえないフレーバーな香りがたちのぼってくる。
この曲を、25年にわたって、何度聴いただろう?
だけれども飽きないし、これからも聴くだろう。むろん、名盤とはそういうもののことをいう。
何度も何度も聴いて承知しているのに、数ヶ月、数年たって、あらたな気持で聴きなおすと、やっぱりまた「ブラボー!」と叫びたくなったりする(^^;)
以前もこのdiaryで書いたことがあったように、クレンペラーには他に名盤といわれるものがあるらしいが、わたしにとっては、なんといっても“スコットランド”なのである。
生まれてから一度も笑ったことがないようなあのいかめしく、気むずかしそうな顔をした男のどこから、こんな音楽がこぼれてくるのだろう。

いま、ひとつ気になるのは、カラヤンがこの曲をどう演奏しているか・・・だろうか。
聴きくらべることによって、見えにくい部分、いわば月の裏側のようなものに理解がとどくようになる。
・・・こうして、CDがまたふえていく(笑)。



※写真は、仕事場から会社へ引き返す途中、信号待ちのワンショット。
微光量すぎ写らないと思ったが、CX6の夜景マルチショットは、まずまずのシーンを、わたしの意図にそってフォローしてくれた。

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