二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

新しい私小説の書き手・西村賢太

2011年09月18日 | 小説(国内)


昨日は管理物件の草刈りやら、クモの巣払いやらで6時間あまりをついやした。
9月の三分の二が終わろうというのに、連日33~4℃。この残暑がいつまでつづくのだろう(^^;)
作業が終わるころには、いくらか目眩が・・・。
帰りがけ、木陰に止めたクルマの中で、エアコンをかけて一休み。ふう~。スポーツドリンク1本を、あっというまに飲み干した。
街撮りを再開しようともくろんでいるのだけれど、この猛暑ではとても、とてもそんな気が起こらない。
気象情報によると、20日(火)ごろから、気温がさがって平年並みにもどるらしいが・・・。

さて、今日は平成における私小説の新星、西村賢太さんについて少々書いておこう。
ここ数日、BOOK OFFで見かけた西村さんの小説を3冊買ってきてある。
この人の名前をはじめに聞いたのは、2、3年前かな?
ある書評がきっかけで「どうで死ぬ身の一踊り」を読んだが、これがとてもおもしろかったので、読んでみるといいよ――と、友人から紹介を受けたが、いまさら私小説でもあるまいと思い、放置しておいたら、そのまま時間がたってしまった。

ところで、このところの三毛ネコの読書は、ドキュメンタリーに関心が向かっている。
日本特有の「私小説」というのは、西洋的な意味における小説ではなく、エッセイ、もしくはドキュメンタリーなのである。そう見極めたうえで読まないと「あれれ? なんだ、これ」と、裏切られた気分を味わうのが関の山。
しばらくまえに登場した「赤目四十八瀧心中未遂」の車谷長吉さんも、一般的には私小説の書き手と目されているけれど、じっさいは、早稲田出のインテリで、かなりの演技派であるようである(短編を3、4作しか読んでいないので詳しくは知らない)。
小説の中の「私」もしくは主人公は、半分は芸を演じる芸人なので、そのつもりで読まないと、まんまと作者の術中にはまる。

国民の大半が大卒だから、西村さんの「中卒」という経歴は稀少性がある。
父親が犯罪者、ご本人も俗にいう「前科もん」で、借金の踏み倒しはするし、女性に暴力をふるうし、朝から大酒をくらうような人なので、そういう書き手の芥川賞に、いっとき、話題が集まった。
http://www.youtube.com/watch?v=c8Z2NBsRQp0&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=LCV4D05Phrs
http://www.youtube.com/watch?v=Fjo5CyRh2MI&feature=related

本のオビに「平成の世に突如現れた純粋無垢の私小説」というキャッチコピーが躍る。
わたしはまだ、「墓前生活」しか読んでいないが、底力をもった表現者であることは間違いない。
川上未映子さんや朝吹真理子さんなどとは対極の世界の住人であり、年齢ににあわない、反時代的なすごい「おやじパワー」の持ち主で、徹底して泥臭く、滑稽感がにじんでいる。大正や昭和の破滅型の私小説作家と比べられることもあるようだが、彼らと違って、「芸術」なるものをお題目のようには信じていないはず。「友達も恋人もいない」と率直に語るこの小説家が、その真価を発揮するのはこれからだろう。
買ってしまった以上、「暗渠の宿」「どうで死ぬ身の一踊り」「「苦役列車」の三冊は、まあ、つきあってみようと考えている。インタビューの動画を拝見しているかぎり、この人も身のやつし方がうまいし、もしかしたら本物の小悪党なのかなと思わせるところが、芸人の芸と通底するものがあるような気がする。
平成の世には、平成の世を述べるにふさわしい私小説作家が必要なのだろう。ポストモダンの模索といわれながら、やっぱりわが日本における「表現されたもの」と読者をつなぐ構造は、不変な部分が存在する。
昨今は女子供向けの小説ばかりなので、わたしなどは、現代小説離れがはなはだしかったのである。私小説の潜在的な需要のようなものを西村さんはたくみな戦術によってつかまえ、登場してきている。すでにうもれて久しい藤沢清造というマイナーな小説家へのこだわりを見ていると、その道具立ての新鮮さには、本好きなら、大抵の人が、ふと足を止めてみたくなるはず。





そのほか、今日の鞄には、
「芭蕉 おくのほそ道」萩原恭男校注(岩波文庫)
「芭蕉」山本健吉他著 グラフィック版 特選日本の古典(世界文化社)
「北のまほろば」街道をゆく41 司馬遼太郎著(朝日文芸文庫)
「津軽」太宰治著(新潮文庫)
などが入っている。
「フィクションは、しばらく遠ざけておきたいなあ」という思いがあって、ドキュメンタリー、ノンフィクション系の洗濯、・・・いや選択となっている(=_=)
さらに、東日本大震災の影響を意識下にひそませつつ「東北地方」を、もう一つの選択のキーワードとしてある。

・・・それにしても、はやく例年並みの秋の気候がもどってこないものだろうか(^^;)
エアコンは弱めの温度設定なので、この日記を書きながら汗だらだら。





BGMは、今日は大好きなブルックナー3枚。
「交響曲第0番 ニ短調」エリアフ・インバル指揮 フランクフルト放送響
「交響曲題4番 変ホ長調(ロマンティック)」ヨッフム指揮 ベルリン・フィル
「交響曲第8番 ハ短調」ヨッフム指揮 ドレスデン州立管



<参考>
「根津権現裏」新潮文庫
http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/135616.html
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 復路にて(ポエムNO.57) | トップ | ミラーレス一眼の新機種 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小説(国内)」カテゴリの最新記事