二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

琥珀いろの時間 (ポエムNO.30)

2011年07月21日 | 俳句・短歌・詩集

台風六号がもたらした気候のせいだろうか夕べやたらと情緒的になって
「恋は遠い日の花火ではない」なんて昔のCFをYouTubeで見ながら
その日チョイスしたバーボンの水割りを立て続けに飲んでいた。
古着みたいな味わいがあるサントリーのコマーシャルがいいね。
めったに味わえない そんなステキな酔いごこちは始末が悪いけど。
涙もろくなって ちょっぴり役者気分。
ぼくのこころは そのときずいぶん遠くへ出かけている。
たとえば大原麗子さんが蹴飛ばしたボストンバッグのかたわらへと。

ブリリアンカットをほどこされたサファイアみたいな空。
そいつは白髪頭のぼくには似合わなかったな
いまではいくらか太ったきみにも。
「娘はアメリカで元気にしてるかい?」
「おやじさんの墓参りもたまにはいったほうがいいぜ」
ぼくの友達はぼくよりもっと涙もろくて
それを下ネタ・ジョークでごまかし ごまかし
ゆがめた唇の端で笑っている。

金色のというより
やっぱり琥珀の 琥珀いろの・・・時間なのさ。
そんなに輝いてはいないけれど輝いている。
たいした価値はないけれどなくなるとその価値がわかる。
どことなく草臥れているけれどまだもちこたえている。
年月が息をふきかけたように 少しくもったりなんかして。
妻を亡くした男と 妻と別れた男のあいだに
音楽が軽井沢のあの夏のせせらぎみたいに流れているんだ。

「さあ もっとお飲みなさい」とカウンターの向こうの麗人がそそのかす。
「お二人とも ステキに歳をとったんだから」
そんな営業トークもつまみのうちさ。
涙もろくなって ちょっぴり役者気分をあじわいながら
愉しい思い出をとびっきりの夕景のように慈しんで
めったに手に入らない 夜をくぐる。
友達がなんだかテレビの中でしか出会うことのできない異国の人のように見えるな。
シルクロードに消えたあの小国の王侯のような その末裔のような。

日に焼けた皺ぶかい横顔の琥珀!



※写真は浅草の夜。
ただし、詩と写真のあいだには直接の関係はありません。

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