それは一瞬の出来事。
なにか見えない気配がすっと近づいてきて
ぼくのこころのどこかを叩いて通りすぎた。
ん?
なんだろう とぼくはあたりを見回す。
季節の移ろいの真っただ中に身を置いて
色のひとつ足りない虹や
耳だけやけに大きな猫や
石の中にとじこめられた古代人の眼や
・・・。
どこにもいかずにここにいる。
六月のこころは
なじみ深い風景のかたわらに置かれたガラス瓶なのだ。
きっとそうだ。
いろいろなものが映り込む。
知らずしらず いろいろなものがその瓶の底に溜まる。
溜まる・・・。
そこから自由になろうとして ぼくは身動きし
歩きまわったりする。
手には大抵 カメラがある。
ここがぼくの領土だなんて
いったいだれが決めたのだろう。
街角のアジサイのように変化しつづける記憶が悩ましい。
その先端部に 真っ白い灯台のようにぼくの一日が聳えている。
必要なものはなーんにもない。
そしてすべてが必要なのだ。
・・・きっと。いや
違うかな?
ぼくは気をとりなおし 慎重にかまえて
必要なものと そうでないものを区分けしていく。