フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

12月10日(木) 晴れ

2009-12-11 17:37:15 | Weblog
  9時、起床。クリームシチュー、トースト、紅茶の朝食。近所の内科医院へ行って風邪(とくに咳)の薬を処方してもらう。その後、母についてT医院へ。昨日は母が一人でT医院へ行ってところ、猫に噛まれた傷が膿んでいたので、傷口を切開して膿を出された。今日は看護師さんがそれをやってくれるので、家の人もそれを見てできるようにしたらいいと言われ、私が一緒についていくことになった。まず傷口を水でよく洗ってから、傷口の周囲をギュッと押して膿みを出すのだが、昨日ほどは出なかった。終って、もう一度傷口を洗い、小さく切ったガーゼを傷口に埋め込む。これは傷口が塞がらないようにするためだが、ピンセットか、ピンセットが家になければ、爪楊枝でガーゼをツンツン突いて傷口に埋め込むのだ。麻酔は使わないので、カーゼの挿入作業は痛そうである。これを私にやれとな?
  昼前に家を出て、大学へ。3限は大学院の演習。4限は空き時間。「ホドリ」に遅い昼食をとりに行く。祭り定食といって、250グラムのカルビ、ワカメスープ、サラダ、ご飯で800円。しっかり食べる。普段は昼食に焼肉など食べないのだが(麺類が多い)、昨日の鰻重と同じで、風邪気味のときはしっかり食べることにしているのだ。ちゃんと寝て、ちゃんと食べて、暖かくしていること、これが風邪の最善の対処法である。医者からもらう薬はあくまでも身体の抵抗力を回復させるための補助的手段である。
  5限は基礎演習データベース講座。ところが指定の104教室にいってみると、I先生の基礎演習の授業とバッティングしていることが判明。すぐに事務所に連絡して代替の教室を探してもらう。学生たちを引き連れて301教室へ移動。気を取り直して授業を始めたが、終盤でVHSにトラブルがあり、『東京物語』の映像を見せることができなかった。ストーリーは言葉で説明できるが、映像を言葉で置き換えることはできない。きっちり準備して臨んだだけに残念である。
  6限は演習「ケーススタディの方法」。ケース報告を3件。1つ1つみんなで検討する。机をロの字型に配して、参加者は15名(欠席4名)。演習としては理想的な人数だ。参加者の中には卒業研究を選択してゼミに所属していない学生もいるが、こうした演習に参加していれば、ゼミに所属していなくても、プレゼンや質疑応答やコメントの能力は身につくはずである。
  一日の授業を終えて論系室に顔を出す。助手のAさんとTAのH君がいた。Aさんがタッパに入れて家からもってきた夕食を食べている。煮物と納豆の臭いが部屋に満ちている。「そうか、もう夕食はお済ですか。残念だな、日頃の感謝の気持ちをこめて、何か夕食をと思ったのだが・・・」と言うと、地団駄踏んで悔しがっていた。本日、論系室には5人の1年生が進級相談に来たという。無理に現代人間論系に引っ張り込む必要はなく、学生の興味関心を聞いて、ふさわしい論系を紹介してあげるという方針で対応してくれているようで、それでよろしい。文化構想学部は6つの論系から構成される共同体であり、セクショナリズムはよろしくない。
  10時、蒲田着。「満月」で鍋焼きうどんを食べる。帰宅して、風呂を浴びてから、明日の「ライフストーリーの社会学」の講義資料をコースナビにアップロードする。娘が帰宅して、風邪気味だというので、私が医者からもらった薬の一部を分けてやる。風邪気味ならば早く寝ればよいものを、娘は居間のテレビで『アメトーク」(録画)なんぞを観ている。若者に人気のある番組だ。おかげで私は『不毛地帯』(録画)を観ることができない。さっさと寝ることにする。

12月9日(水) 曇り

2009-12-10 00:53:19 | Weblog

  8時半、起床。あんこトースト、紅茶の朝食。風邪気味である。少し寒気がして、軽い咳が出る。「咳をしてもひとり」は尾崎放哉だが、私も即興で一句。「咳をすれば雀が首をかしげる朝」。


ご主人さま、お風邪ですか?

  昼過ぎに家を出て大学へ。2時から運営主任会があるのだ。咳は電車の中でもずっと出ていた。会議の前に、「すず金」で鰻を食べることにした。鰻重+肝焼き+肝吸いで1900円なり。贅沢な昼食だが、滋養をとらねばならない。
  会議は1時間半ほどで終了。事務所へ行って雑用を片付けてから、論系室へ行く。1年生の進級相談のためだが、来たのは1人だけで、後は増山先生や助手のAさんやゼミ生のNさんらとおしゃべりをしていた。
  8時、帰宅。今夜は早めに寝ることにする(とはいっても、すでに午前1時だが)。


12月8日(火) 晴れ

2009-12-09 02:13:06 | Weblog

  9時、起床。鮎の甘露煮、味噌汁、ご飯の珍しく和風の朝食(今日は朝昼晩ともご飯だった)。基礎演習の全員のレポートをPDFファイルにしてコースナビにアップする。各自が全員のレポートに目を通して、とくに興味をもった数本のレポートについてBBSに感想を投稿するというのが基礎演習の最後の課題。締め切りは12月31日午後23時59分。基礎演習24のクラス27名全員が無事レポートを提出できてまずはよかった。


駅への道

  昼から大学へ。3限は「現代人間論系総合講座2」。前回に引き続いて多田千尋先生の講義。授業の途中で、全員が2人1組となって、大きな輪を作り、話し合いをする(テーマは「日本の社会に一番大きな影響を与えた人物は誰だと思うか」)。それをペアーを変えて3回行った。多田流の授業法である。私は傍でそれを見ていたが、もし私が聞かれたら、「野口英世」か「福澤諭吉」をあげたであろう。近現代日本人の人生の物語のモデル(努力をして上昇する)を提供した人だからである。ちなみに子供が読む伝記の主人公で一番取り上げられてきたのが「野口英世」で、断トツである。しかも現在、千円札の肖像となっており、命脈はまだまだ続くであろう。


フォークダンスの輪のように

  4限は空き時間。文学部前の「レトロ」に遅い昼食をとりに行く。オムライスと珈琲。持参したゼミの文献に目を通す。5限は大学院の「質的調査法特論」。


ふんわりオムライス

  スロープの上には現代人間論系の進級相談の看板が置かれている。今月15日が進級希望論系・コースの申請の締め切りで、いま1年生たちはあれこれや悩んでいるところだろう。9日(水)の5限は私(主任)もプレハブ校舎3Fの現代人間論系室にいるので、相談のある方は気軽に来てください。何が何でも自分の論系に呼び込もうなどとは考えていません。話を聞いて、「それなら○○○○論系がいいでしょう」というアドバイスをいたします。


どうぞお気軽に!


12月7日(月) 晴れ

2009-12-08 02:47:38 | Weblog

  8時、起床。ベーコン&エッグ、トースト、紅茶の朝食。9時半に予約してある近所の歯科医院に行く。親不知の抜歯の予定だったのだが、少々風邪気味で市販の風邪薬を飲んでいることを話したら、抜歯は体調がよいときにしましょうということで、一週間延期になった。
  昼食は「鈴文」に食べに行く。予定通り抜歯をしていたら、昼食にトンカツなど絶対になかったであろう。私の隣に若い男女の客がいて、女性の方は韓国人であったが、驚いたことに、とんかつのお替りをしていた。特製ロースカツ(300グラム)を食べている女性は何回か見たが、ランチのとんかつ定食とはいえ、とんかつのお替りをしているのを見たのは男女を通じて初めてである。チラリと顔を見たが、肥満体ではなく、精悍な「肉食系女子」という感じであった。がる~。
  食後の珈琲は「ノンノン」という喫茶店で。以前、『散歩の達人』が蒲田・大森特集をしたときに表紙を飾ったスパゲティ・ナポリタンはこの店のマスターが作ったものである。しかし女性雑誌みたいな店名が気恥ずかしくて、私は入ったことがなかった。そのうちマスターが体調を崩して入院したという話を聞いて、気になっていたのだが、今日店の前を通ったら開いていたので、入ってみることにした。店内はアーリーアメリカンな雰囲気で、マリリンモンローやジェームズ・ディーンの写真が壁にたくさん貼ってある。カウンターの中に女性が一人いるだけで、マスターの姿はなかったので、やっぱり入院中なのかと思ったら、ちょっと外出していただけのようで、珈琲を飲んでいたら戻って来られた。雑誌で見たとおりの方である。今度、あのナポリタンを注文してみよう。


「ノンノン」外観


マリリン・モンローの写真がいっぱい


「ノンノン」のナポリタン

  珈琲を飲みながら、持参したアンリ・カルティエ=ブレッソン写真集『ポートレイト 内なる静寂』を眺める。昨日、東京都写真美術館の売店で購入したものだ。写真集というのは一般の本よりも値が張るもので、本書も5千円したが、表紙のサミュエル・ベケットのポートレイトに惹きつけられ、手に取ってページをめくったところ、圧倒的な存在感のある素晴らしいポートレイトばかりで、購入せずにはいられなかった。


カフェ・ゴトーで誰かを待ちながら眺めるのもよいかもしれない

  帰宅して、『坂の上の雲』の第二話(録画)を観て、その後昼寝をする。

  夜、今週の木曜日(5限)の基礎演習データベース論文講座の準備をする。基礎演習データベース論文講座というのは文化構想学部と文学部の1年生を対象にしたもので、詳しくは下記のとおり。

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                             2009年11月4日
  基礎演習登録者各位
                              文学学術院

         基礎演習データベース論文講座開催通知
          ~論系・コースの特色に沿って~

  文化構想学部・文学部の1年次生の皆様。基礎演習最終課題などでお忙しい時期かと思います。そのような折とはなりますが、2009年度から新たな試みとしまして「基礎演習データベース論文講座」を開催することとなりましたので、お知らせします。
  本講座は、基礎演習データベース論文に関連する内容だけでなく、2年次に所属する論系・コースの特色に沿った内容にも触れられます。そのため、基礎演習データベース論文に興味をお持ちの方々はもちろん、進級希望先の学問に触れてみたいとお考えの方々も対象となると考えております。
  下記の通り、本講座の開催概要を記しますので、この機会に是非ともご参加くださいますよう、お願いいたします。

                         記

  ■講師・所属
   第1講義:紙屋 敦之教授・多元文化論系
   第2講義:大久保孝治教授・現代人間論系
   第3講義:嶋崎 尚子教授・社会学コース
   第4講義:沖  清豪教授・教育学コース

  ■論文題目
   第1講義:紋船の再検討
   第2講義:近代日本における『人生の物語』の生成
   第3講義:「できちゃった婚」からみえる日本の結婚規範
   第4講義:英国型学校監査制度の日本への導入に関する一考察
   ※本講座では論文の内容に加えて論系・コースの特色にも触れられます。

  ■開催日時
   第1講義:2009年12月14日(月)16:30-18:00
   第2講義:2009年12月10日(木)16:30-18:00
   第3講義:2009年12月17日(木)16:30-18:00
   第4講義:2009年12月21日(月)16:30-18:00

  ■会場・定員
   第1講義:31  号館104教室・50名
   第2講義:31  号館104教室・30名
   第3講義:33-2号館114教室・40名
   第4講義:32  号館228教室・40名

  ■申込期間
   2009年11月4日(水)9:00-2009年12月9日(水)

  ■申込方法
   1.「Waseda-net portal」にログイン
   2.「システム・サービス」をクリック
   3.「アンケート回答」をクリック
   4.「基礎演習データベース論文講座申込フォーム」をクリック
   5.「学籍番号・氏名」を入力
   6.「申込講座」を選択
   7.「登録」をクリック

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  この講座の依頼(募集)があったとき、一度は多忙を理由に断ったのだが、ちょうど1年生が論系・コース進級希望申請をする時期であり、現代人間論系の宣伝になるかと考え、引き受けることにしたのだが、わずか4講座とは思わなかった。文構では多元文化論系の紙屋先生と私だけだ。
  ちょうど講義「ライフストーリーの社会学」で、近代日本における人生の物語の生成の話をしたばかりなので、それとは内容が重複しないように工夫しなければならない。小津安二郎の『東京物語』を教材にしながら、成功の物語のモチーフとしての上京と、幸福の物語の場所である家族の戦後的変容の話をしようかと考えている。  


12月6日(日) 晴れ

2009-12-07 12:23:51 | Weblog

  9時、起床。ハンバーグ、トースト、紅茶の朝食。今日の講演の資料をプリントアウトして10時半頃に家を出る。「清水幾太郎先生を偲ぶ会」は、昨年と同じく、JR代々木駅から歩いて10分ほどのところにある代々木倶楽部である。定刻(11時半)の15分前に会場に到着し、世話人の方々と挨拶を交わして、ほどなくして講演の開始。予定通り30分で話し終える。私に続いてもうお一人、清水ゼミの卒業生で中央大学教授の臼井久和氏が講演をして、その後は1時間ほど会食。清水幾太郎が晩年の著書『「社交学」ノート』(1984年)で提唱したスモールグループでの談話を地でいく会であった。次回(来年)は高尾霊園にある清水の墓参りをして、その後で近くの蕎麦屋で講演&食事というプランが世話人の方から出る。はい、いいですね、と答えたが、墓参りの後の講話というのはなんだかお坊さんのようである。


代々木駅前

  帰り道、恵比寿で下車して、東京都写真美術館で開催中の「木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン 東洋と西洋のまなざし」展を見物する。2人の共通点はライカ。ライカが登場するまでカメラというのはファインダダーを上から覗いて、90度の屈折を経て、手前にある被写体を見るものだった。それがライカの登場によって眼の高さで一直線に被写体を捉えることができるようになった。しかも1回のフィルム装填で36カットの連続撮影が可能になった。

  「ライカD(Ⅱ)型ならば、小さくはあるけれども、その機能は大きな機械にも優っている。眼で見ると同時にシャッターを押せるのである。つまり人間の眼とレンズの眼とが完全に一つになり得るのである。従って人間の眼と中枢神経との完全なコンビネーションが保たれているのと同じように、レンズの眼は神経中枢の命ずるままに、自由自在に、あらゆる角度から、あらゆる焦点距離で、あらゆる絞りにおいて、対象を捕らえることが出切るのである。」(木村伊兵衛、「ライカの眼」、1934)。

  「写真家の眼は、絶えず(事柄を)評価している。写真家は頭をほんの1ミリ動かすだけで線を一致させ、膝のわずかな屈伸でパースペクティブを変化させることができる。カメラを対象に近づけたり、遠ざけたりすることで、写真家はディテールを描くのだ。―それを自由にできることもあれば、それに振り回されることもある。ただ、彼はシャッターを切るのとほぼ同時に構図を構成する。それは反射神経のスピードで行われる。」(アンリ・カルティエ=ブレッソン、写真集『決定的瞬間』の序文、1952)


アンリが撮った伊兵衛(左)と伊兵衛が撮ったアンリ(右)

  展覧会のカタログの解説(金子隆一)によれば、2人は若干の交換レンズを使うことはあったが、標準レンズとされる焦点距離50ミリを愛用したという。それは人間の眼の延長としてもっとも相応しいレンズであった。結果として、2人の作品はスナップショット的になるわけだが、2人の作品の共通点は「トリミングの拒否」にあるという。

  「トリミングすることを拒否する、もしくはできないような写真を撮るという意味についてだが、通常、写真家が写真を発表するには3つの段階を経る。最初はシャッターを切るとき、次に撮影したネガから1カットを選ぶとき、最後がプリントを焼くとき。この3度の選択を経て、ひとつの作品が世に送り出される。そしてトリミングが行われるのはプリントを焼く際で、画面を整理して、シャッターを切った瞬間に見たものの一部を削除するということに他ならない。それに対してトリミングをしないということは、シャッターを切った瞬間に、写真家が意識的であろうとなかろうと、カメラがとらえた現実を無条件に受け入れるということである。それは写真家が現実と向き合った時空間そのものを第一義と考える態度の表れである。」(12頁)

  しかし、トリミングの拒否という共通性があっても、2人の作品を見比べればその違いは明らかである。アンリが幾何学的な構図に意識的であるのに対して、伊兵衛はそうではないということである。ただし、それは伊兵衛が構図に無関心だったということを意味しない。会場には伊兵衛の代表作「本郷森川町」とその一枚が撮られた前後の一連のカットが展示されていたが、伊兵衛が本郷森川町の交番の前の風景を撮った10枚のカットの中からベストショットとして選んだ一枚が12人の人物の配置の見事さにおいて群を抜いていることは明らかである。伊兵衛も構図には敏感であったが、作為的であると観る者に思われることを嫌ったのである。両者が互いを撮った作品を観てもそれは明らかであろう。
 売店で以下の資料を購入し、「シャンブル・クレール」で生ハムのオープンサンドと紅茶で一息入れてから帰る。

  「木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン」展カタログ
  アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集『ポートレイト 内なる静寂』(岩波書店)
  アンリ・カルティエ=ブレッソン『瞬間の記憶』(DVD)


恵比寿ガーデンプレイス