別府での湯めぐりでは鉄輪の「双葉荘」でお世話になっていました。鉄輪ではおなじみの貸間湯治宿のひとつであり、温泉街のはずれにある地獄原バス停すぐ目の前なので、アクセスの利便性も頗る良好。入口は2つあり、地獄原バス停側が正面玄関、鉄輪の中心部側は裏口なのですが、そそっかしい私はそのことに気づかずに裏口から入ってしまい、何度声を掛けても応答が無かったので、てっきりどなたもいらっしゃらないのかと勘違いして、携帯電話で女将さんを裏口まで呼び出してしまいました。
裏口の路地ではニャンコがのんびりお昼寝中。
普段は空気も読まずに勝手気ままにほっつき歩き、お腹が空いた時や寂しくなった時だけ「ニャー」と声をあげる猫の行動スタイルって、自分の性格と重なるところがあるように思えてなりません。
今回通されたお部屋は正面玄関真上の2階の一室。窓から遠くを眺めると別府湾がちょこっと覗けました。室内にはエアコンもテレビも備え付けられていますが、いずれも有料ですので、テレビに関しては自分のスマホのワンセグを使いました。押入れの中には炊事道具が揃えられています。
自炊するためのキッチン。自炊宿では客室と並んで毎朝毎夕お世話になる重要な設備ですね。
敷地の中央で勢い良く噴き出している地獄蒸しの噴気はもの凄く、その塔に付着した夥しい析出にも圧倒されます。釜の上には素材別の蒸し時間の目安が案内されていますから、これを参考にいろんな食材をどんどん蒸しちゃいましょう。とっても熱いので火傷に注意。釜の近くには耐熱の手袋が用意されていますから、使用時はできるだけ手袋を装着しましょうね。なお徒歩5分くらいのところにスーパーマーケットがありますし、宿の裏手には地獄蒸しセットを売っている八百屋さんもありますから、食材の調達には全然苦労しませんでした(少量で買えないお米などは持参しましたが)。
僭越ながら私の地獄蒸し料理をちょっとご紹介。上の写真は某日の夕食でして、部屋に用意されていた羽釜で炊いたご飯(持参した新米の宮城県産ひとめぼれ)、地元で揚がった天然もののブリ、豆もやし、じゃがいも、そして(蒸してはいませんが)太刀魚の刺身です。地熱で炊いたお米はツヤツヤで本当に美味しかった!
そういえば、他のお客さんはジャガイモにトマトピューレをかけてチーズを載せた、とってもイタリアンな料理を地獄蒸しでつくっていらっしゃいましたよ。蒸す手順に慣れてくるに従い創作意欲が湧いてきますね。
こちらは朝食。ウインナー 肉まん、そして茹で卵。いずれも数分で蒸し上がるので、この程度だったら寝ぼけ眼でつくっても全然だいじょうぶ。
●混浴風呂
双葉荘では、混浴と男女別内湯の2種類のお風呂が利用可能。まずは混浴の方から入ってみました。
混浴とはいえ実質的には貸切での利用となっており、浴室使用時には入口の戸を締めて、使い終わったら戸を開ける。その開閉状態により使用中か否かを示すのがこちらのお宿の暗黙の了解となっているんだそうです。
半地下のような空間に小さな浴槽がポツネンと据えられており、その上を屋根が覆っているのですが、外の風が入り込んでくるので半露天のような感じです。崖を蔓が這い、葉の下ではコオロギが啼いていました。
浴槽上に祀られた薬師如来に見守られながら入浴するのですが、仏様の他にもいろんな人形が並んでおり、恐山などの霊場のような一種独特の雰囲気に包まれていました。夜に入ると人形の目がこちらを凝視しているように思われ、ちょっと不気味だったりして…。
浴槽は2人サイズのかわいらしいもので、シャワーなどはありません。それどころか、仏様のお風呂であるため、石鹸などは使用禁止なんだそうです。源泉の温度が100℃近くあるため、湯音調整のため投入量が絞られてチョロチョロ程度にしか注がれていません。、お客さんが立て込んでいる場合にはお湯がちょっと鈍ってしまいそうですが、こちらは立ち寄り入浴を受け入れてないので、極端に汚れるようなことはないでしょうね。
湯口周りにはトゲトゲの白い析出が現れています。桶が被せられた床の一部からも蒸気が上がっていました。無色透明ではっきりとした塩味を有し、ほぼ無臭ですがほんのりと噴気孔の火山ガス的な微弱な刺激臭を含んでいるようにも思われました。
宿泊中は朝晩入らせていただきましたが、その都度仏様に合掌。
●男女別浴室
男女別浴室は混浴浴室の奥に位置しており、混浴浴室を通り抜けるか、あるいはツッカケに履き替えてその脇の廊下を歩いてゆきます。
あたかも共同浴場のような佇まいで、脱衣室と浴室が一体となっているレイアウト。混浴と比べれば新しいのですが、とはいえこちらも相当年季が入っています。女湯との仕切りは曇りガラスであるため、仕切りの向こう側が透けて見えるのがちょっとエロいんですよ。
タイル貼りの浴槽は2人入ればいっぱいになっちゃいそうな大きさ。シャワーは無いので湯船から桶でお湯を汲んで掛け湯します。上述のように混浴の方は仏様のお風呂ですから石鹸は使用禁止でしたが、こちらは実用本位の浴室ですから、シャンプーも髭剃りもOKです。
湯口には白い析出がコンモリ付着しています。混浴のお湯と同様に無色透明でトロトロとした感触とスベスベした浴感が印象的なのですが、塩味はこちらの方がよりハッキリしているように感じられました。
源泉の温度が激熱なので投入量を絞って湯加減を調整していました。なるべく加水せずに湯温を加減するには熱湯の投入量を絞る他ないわけですが、何しろ沸騰に近い状態のお湯ですから、投入量の調整はかなり難しいようで、バルブをちょっとでも余計に開いちゃうと湯船は入れないほど熱くなってしまうのでしょうか、お湯のバルブを完全に締めてしまうお客さんもいらっしゃるようでして、湯口の上には「温泉を止めないで下さい あとから入る方がぬるくて風邪を引きます 皆様困っています」という注意書きが貼られていました。幸い私の宿泊中はいつも適温がキープされていましたので、湯口のバルブを特に触ることもなく済みました。
風情あるお風呂はもちろんのこと、地獄蒸しの料理って本当に面白いですね。お安く泊まれて別府らしい温泉情緒を存分に味わえるこちらのお宿はリピーターがとっても多いんだとか。今度から私もその一員に加わらせていただきます。
ナトリウム-塩化物温泉 94.8℃ pH5.0 溶存物質4.061g/kg 成分総計4.072g/kg
Na+:1024.0mg(84.87mval%), K+:178.3mg(8.69mval%),
Cl-:1753.0mg(87.12mval%), SO4--:334.4mg(12.26mval%),
H2SiO3:628.7mg, HBO2:70.7mg, CO2:11.0mg,
源泉温度が高いため加水
「地獄原」バス停すぐ
大分県別府市鉄輪147
0977-66-1590
ホームページ
1泊素泊まり3,500円
日帰り入浴不可
私の好み:★★★