温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

廬山温泉 夏都大飯店

2013年04月11日 | 台湾
日本統治時代には「富士温泉」と称された南投県屈指の温泉郷である廬山温泉。
私は昨年にもこちらへ訪れておりますが、その数カ月後(2012年6月)に当地は豪雨に見まわれ、急峻な谷あい地形が災いして濁流が温泉街を集中的に襲ったため、川沿いの温泉旅館は一部が倒壊し、あるいは1階部分が悉く浸水して、甚大な被害が発生しました。その時のニュース映像がYouTubeにUPされていますので、以下に埋め込んでおきます。濁流に呑まれている温泉街の哀れな姿がおわかりいただけるかと思います。なお、このVTRの中盤では今日の廬山温泉が抱える問題が紹介されていますが、これらについては後述します。



 
水害から9ヶ月以上が経っているこの日も、濁流が暴れた痕跡ははっきりと残っており、川沿いの建物が倒された川原は荒涼として妙に広々していました。


 
川に架かる橋は欄干などが流されて橋桁だけを残し、まるで仮設のような状態になっていました。また破壊された堤防に替わって川沿いには土嚢が積み上げられており、川の流路自体についても整備工事の真っ最中でした。


 
廬山温泉のシンボルである吊り橋はそのままですが、橋の上から眺めると川の両岸の旅館は洪水に襲われて廃墟と化した無残な姿をいまだに晒し続けており、日本のガイドブックでしばしば紹介されている「松田旅館」も洪水に呑み込まれ、すっかり荒れ果てていました。


 
川から離れている旅館は水害から逃れられたので現在も平常営業を継続しています。今回は吊り橋の近くにある「夏都大飯店」で立ち寄り入浴することにしました。フロントで入浴料を支払うとレンタルのバスタオルが手渡されるので、それを小脇に抱えてお風呂のある階下へと下りていきます。



こちらが浴場の入口。左側に設けられてる個室のシャワールームで水着に着替えてシャワーを浴びるのですが、この更衣スペースはかなり狭くブース数も少ないため、使い勝手はあまり良くありません。この時は浴室内に誰もいなかったので、私は浴室に入ってから着替えてしまいました。


 
浴室に入ってすぐ左手にある「按摩池」は、その字面から想像するに泡か水流などで体をマッサージする、ジェットバスやジャグジー的な設備なのでしょう。またその奥にある大きな温水プールには「沖撃」、すなわち勢いの強い打たせ湯が設置されています。両方ともお湯がぬるく淀んでいるように感じられたので、今回は利用しませんでした。


 
温水プールの脇を抜けて露天風呂のエリアへ。こちらには日本の温泉をイメージして造られた浴槽が3つ設けられています。3つのうち2つは温浴槽でして(残る1つは水風呂)、上写真の岩風呂風の浴槽はその中でも最も高温(約42℃)で深さも丁度良いものでした。



湯口から注がれているのはもちろん温泉です。規模こそ小さいものの、昨年訪れた廬山温泉の温泉頭(源泉)に見られるような石灰の析出が現れており、お湯が落ちる箇所には鱗状の模様が形成されていました。お湯はほぼ無色透明ですが完全に澄み切っているわけではなく、石灰の影響と思しきわずかな濁りを有していました。また石膏っぽい味とともに重炭酸土類泉のような味と匂いも少々感じられました。


 
こちらの浴槽は岩風呂よりも一段高いところに据えられている石板貼りの浴槽でして、やや浅めの造りとなっており、湯加減は岩風呂より若干ぬるい40~41℃くらいでした。また槽内は温泉成分によるものなのかベージュ色に染まっていました。こちらの湯口も石灰の析出が付着しており、パイプの下で瘤状の造形をなしていました。両方の浴槽ともおそらくかけ流しかそれに近い湯使いが採用されていると思われ、お湯の鮮度感は良好でした。


南投県仁愛郷栄華巷22  地図
04-9280-2020
ホームページ

入浴可能時間8:00~22:00
200元(貸バスタオル付き)
ロッカー(10元)・ドライヤーあり

私の好み:★★


●(おまけ)廬山温泉の今後
当記事の冒頭で埋め込んだYouTubeのVTRでも取り上げられていましたが、廬山温泉の一帯では山全体で大規模な地滑りが起きており、地震や豪雨を原因とする土砂崩れによって、温泉街のある谷底がいつ埋没してもおかしくない非常に危険な状態となっています。そこで行政側は廬山温泉をまるごと閉鎖し、温泉街を同じ南投県の埔里郊外にある福興農場へ移転させる方針を固めました。しかし、映像の字幕でも表示されているように、廬山温泉で旅館を経営する27業者のうち、行政からの認可を受けて営業しているのはわずか6軒にすぎず、他21業者は無認可(台湾では非合法と称している)経営であるため、移転にあたっての補償が得られず、多くの業者は温泉街の閉鎖に反対しているようです。とはいえ、危機が迫っていることには間違いないため、廬山温泉の存在が過去帳入りすることは時間の問題でしょう。なお交通部観光局の日本語ページを拝見しますと、廬山温泉には既に「廃止」の2文字が付せられています。

廬山温泉は日本統治時代から現在に至るまで台湾屈指の名湯として名を馳せてきたわけですが、そんな歴史も自然災害には抗うことができません。度重なる水害、そして老朽化した旅館が醸し出す斜陽感のためか、近年の廬山温泉は客足が激減しており、私が今回訪問した時でも、週末だというのに強引な客引きがあちこちで見られました。



コメント (2)
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