苗栗県の泰安温泉郷は近年台湾で人気を集めている観光地なんだそうですが、路線バスの便が宜しくないため、数回に亘る私の訪台でもこれまで当地を訪れる機会はありませんでした。でも今回はレンタカーを借りましたから交通面の心配は一切不要、念願叶って当地で温泉をハシゴすることにしました。
前回取り上げたイチゴの名産地である大湖を抜けて、文水渓という大きな川に沿って一本道を東進すると、やがて風光明媚な山河の景色がフロントガラスいっぱいに広がって来ます。緑豊かで渓谷の清流も美しく、そんな環境で温泉も湧出するのですから、人気を博するのも頷けます。
泰安温泉郷は旅館が蝟集しているような温泉街は形成されておらず、比較的大きな規模の施設が山の緑に隠れるようにして点在しているのですが、唯一温泉街に近い雰囲気を漂わせているのが騰龍温泉エリアです。今回の目的地は吊り橋の対岸で緑に埋もれるように構えている「騰龍温泉山荘」でして、当エリアでは最も古い温泉旅館なんだとか。なお吊り橋をわたらなくても、並行して架かっている立派な橋を使えば車ですぐ下の駐車場まで行けます。
竜が騰(あ)がると書いて「騰龍温泉山荘」。上昇をイメージされる縁起の良い名前ですね。渓谷を望む高台に建てられており、灌木の花々がエントランスの周囲を彩っていました。正面に建つ本館は宿泊棟兼食堂でして、入浴客は「泡湯区」と記された看板に従って本館の裏手にある温泉棟へ直接向かいます。
敷地内には宿泊用ロッジがたくさん。
温泉棟は、その外観から推測するに営業を開始してからまだあまり年月が経っていない比較的新しい建物であると思われます。畳や○○のみならず、なんでも新しいものは良いですね。こちらには大浴場と家族風呂があり、いずれの場合も上画像に写っている受付で料金を支払うのですが、その際にロッカーキーの使用に対するデポジットとして料金の他に100元が求められます。もちろん退館時には返却されますのでご心配なく。なお受付へ至るまでの間に数箇所で「押金100元」と書かれた札が掲示されているのですが、押金とはそのデポジットのことを示しているわけです。余談ですが、マカオのカジノ周辺では質屋さんが大きなネオンサインで「押」の一文字を掲げていますが、この場合の「押」の字も同じような意味合いなんですね。
受付でロッカーキーと貸バスタオルを受け取り、男湯の暖簾を潜って更衣室へ。
室内はとっても綺麗で清潔感にあふれています。
こちらのお風呂は全裸で入浴するお風呂ですから、水着は不要ですよ。
広々としていて清潔な浴室は、シックな色合いの内装や抑え気味に設定されている照度のために、落ち着いた大人の雰囲気を漂わせています。また文水渓に注ぐ支流の川に面しており、川側には鎧戸が設置されていてガラスなどによる遮蔽が無いため、外気と一体になった半露天のような造りになっており、川から入り込んでくるそよ風がお湯で火照った体をクールダウンしてくれるので、とっても心地良く快適に湯浴みすることができました。
洗い場にはシャワーが9基設置されており、この水栓からは源泉のお湯が出てきます。結論から申し上げますと、浴槽よりもシャワーから出てくるお湯の方がはるかに知覚面が強く、ゆでたまごの卵黄的な匂いと味が明瞭に感じられました。
主浴槽は2つあるのですが、更衣室側の槽には熱い風呂に慣れている日本人でも熱く感じる44℃のお湯が張られており、私の後から入ってきた若者達はつま先をちょこっと入れただけで熱さにおののいていました。湯口のパイプから吐出されるお湯の投入量は多く、湯使いは不明ですが、浴槽の踏み込みの切り欠けからしっかりとした量のお湯が溢れ出て排湯されていますので、少なくとも半循環かそれ以上の湯使いなのだろうと想像されます。湯口から注がれるお湯は無色澄明で、シャワーと同様にタマゴ的な味と匂いが感じられ、湯船に浸かるとツルツルスベスベの爽快な浴感が全身を包んでくれました。
熱い浴槽の隣にぬるい槽が設けられているのですが、ぬるいと言っても温度計は41.6℃を表示していました。台湾の方はどちらかと言えばぬるいお湯を好む傾向にありますから、こんな熱くしてお客さんから文句は来ないのでしょうか。ま、私にとっては適温なんですから問題無いんですけどね。裸になる入浴スタイルばかりか湯加減まで日本の入浴文化に倣っているのかもしれません。こちらの浴槽は間違いなく加水されており、シャワーや熱い槽に比べてお湯から得られるタマゴ感は衰えていましたが、熱い浴槽同様に切り欠けから惜しみなくお湯が捨てられており、鮮度感はなかなかの状態でした。
水風呂やジェットバスも設けられていますから、いわゆる台湾のSPA的な楽しみ方もできます。熱いお風呂で軽くのぼせても、水風呂へ一気にドボンと浸かればとっても爽快です。
綺麗で落ち着いた雰囲気の中、裸で入浴することができ、しかもお湯は硫黄らしさがしっかり感じられる浴感の良いものですから、入浴料金は少々高めですが、当地に数ある温泉施設の中から敢えてこちらを選択する価値は充分にあるかと思います。おすすめ。
お風呂から上がるとちょうどお昼時でしたので、吊り橋を渡った対岸にある原住民のお店(おそらく「騰龍温泉山荘」とは無関係)で、猪肉と野菜の炒め物をいただきました。ちょっと日本語の話せるお母さんが強い火力で炒めてくれた料理は、程よい味付けとシャキシャキとした食感が味わえ、なかなか美味でしたよ。
泉質名不明
苗栗県泰安郷錦水村横龍山5 地図
037-941002
営業時間不明
280元(貸しバスタオル付)
ロッカー(100元デポジットが必要)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★