新竹県・尖石郷の錦屏温泉から更に奥へ入ったところに「小錦屏温泉」という人気の野湯があるという情報を得たので実際に行ってみたくなり、事前にググってみたところ、たしかにネット上ではたくさんの訪問記などを見つけることができたのですが、道の険しさを理由にみなさん現地まではオフロード車でアクセスしているらしく、FFの普通車ではどこまで行けるのか、歩くとなるとどのくらい時間を要するのか、私が欲しかったそのあたりの情報が見当たらず、仕方ないのでよくわからないまま、とりあえず現地へ向かってみることにしました。
いきなりですが、現地までの概念図を掲載させていただきますので、この図に記されている内容をもとに以下の文章を読み進めていただくとわかりやすいかと思います。なお温泉までは歩いて向かったのですが、距離が掴めなかったので、各画像のキャプションにはその地点を通過した時刻を一緒に記入いたしました。
【8:40 歩行開始】
宿泊した「美人湯館」を8:30にチェックアウト。ホテル前の一本道を奥へ進んで錦屏集落を抜け、数百メートル走ったところで、左側に空き地を見つけました。この先も道は舗装されているのですが、幅員が狭くて勾配も急なので、レンタカーに万一の事態が発生することを防ぐため、この空き地に車を止めて、リュックに荷物(水着・カメラ・ペットボトルの水・飴玉など)を詰め込んで歩行を開始しました。空き地の先からいきなり急坂がはじまります。
空き地からちょっと登った右手にはレンガの倉庫が建っていました。見るからに相当古そうですね。何年前の建造物なんでしょうか。
【8:50 分岐その1】
小錦屏温泉への道のりは、勾配こそ急であるものの、分岐はあまり多くないので、道に迷う危険性は少ないかと思います。上画像の地点が数少ない分岐点の一つでして、ここは左へと進みます。なお右の道は坂を下って養魚場(画像右(下))へとつながっています。分岐点をよく見ると、右側の路肩に進入禁止の標識が立っていますね。そちらの方へ行かなければ良いわけです。
ひたすら坂を登ります。途中、車が離合できる路肩やS字カーブの外側スペースなど、駐車可能なポイントが数ヶ所ありました。先の見えない登りが延々と続き、息は切れる、腰は痛む、そして喉も乾きはじめます。
途中にはこのような水場があるのですが、衛生状態がさっぱりわからないので、さすがに飲む気にはなれません。出発前に水を必ず携行しましょう。私はホテルの客室に用意されていたミネラルウォーターを持参していきました。
【9:10 登り坂のピークに建つ小屋・分岐その2】
勾配が緩やかになりはじめると、やがて左手に小屋(倉庫?)が見えてきます。この辺りが登りのピークでして、これ以上登ることはありません。なお小屋の手前の路肩には2~3台駐車できるスペースがあり、もしここに駐車しても他車の離合に支障が出ないほど余裕がありますので、私みたいに苦労して歩いて登らず、ここまで車に乗ってきても問題ないかと思います。実際に温泉から帰ってくるときに、ここで1台の乗用車(カローラクラス)とすれ違いました。
小屋の先には2つ目の分岐があり、ここは右へ進みます。なお誤って左へ行ったとしても、すぐに閉鎖中のゲートによって進めなくなりますから、ここでも道に迷うことはないでしょう。
【9:15 砂利道の急な下り坂スタート】
2つ目の分岐点からは一転して下り坂となります。しばらくは舗装路面が続きますが、途中で舗装は途絶えて砂利道となり、そこから更に下り勾配が急になります。なお舗装路面終了地点の手前にある路肩スペースは普通車にとっての最終駐車可能ポイントですので、もし普通車でここまで来てしまったら、その路肩スペースに止めるか、あるいは転回して引き返しましょう。
ここから先は普通車の通行ができません。オフロード車のみ通行可能です。
見晴らしの良いところで右の方を眺めると、眼下に渓流の谷が見えました。あの谷底まで一気に下るわけです。
【9:18 Z字の坂】
この白い看板は渓流の禁漁を告知する新竹県の掲示なのですが、この看板のすぐ下にある坂がこの道のハイライトかもしれません。というのも・・・
このようにZ字状になっており、ここを車で通行する場合はスイッチバックの要領で進まなければならないのです。しかもガードレールが無いため、バックの塩梅やハンドルの切り方を誤れば谷底へ転落してしまいます。このスリルあるジグザグ路を運転したいために、敢えてオフロード車で小錦屏温泉を目指す方も多いようです。
谷底を流れる川へ辿り着くまで、まだまだ急な下りは続きます。ダート路なのでとても滑りやすく、何度も足元を掬われそうになりました。
勾配が緩くなって道が樹林帯の中へ入ってゆくあたりを歩いていたら、川の方からオフロード車がやってきて、ドライバーの方が私に手を振りながらZ字坂に向かって去っていきました。
【9:25 川原へ下りきる】
Z字坂から約300~400メートルで坂を下りきり、川原の広場へ出ました。オフロード車はここに駐車します。
広場から川の下流を眺めますと、岩陰からテントのシートがチラっと姿を覗かせているのですが、これが今回の目的地である「小錦屏温泉」であります。ここからは川原を下流へ向かって歩いてゆきます。ゴールが見えてきたので足取りが俄然軽くなりました。
崖下には浴槽の跡と思しきコンクリ製の構造物がありました。ここにはかつて温泉施設があったのでしょうか。
【9:30 小錦屏温泉到着】
駐車した空き地から歩き始めて50分で小錦屏温泉に到着しました。大きな岩の傍に立てられた木の柱にテントを張って屋根がけされており、その下には温泉が湧出している湯溜まりがあるのです。子供の頃に作った秘密基地のような、とても原始的な小屋ですね。
コンパネを立てて側壁にしているこちらの小屋は脱衣ルームです。こんな山奥にもかかわらずこの温泉は人気があって、意外と人がやってきますので、たとえ到着時に誰もいなかったとしても、念のために水着に着替えておきましょう。私もちゃんと着替えましたよ。
川原一帯が温泉湧出地帯であり、あちこちから湧き出ているのですが、その多くは川に沿って並んでいる3つの湯溜まりに収斂されています。この3つある湯溜まりのうち、最上流側に温度計を突っ込んでみると39.6℃となっており、お湯は足元から湧出している他、さらに上流側に点在する小さな泉源から流れてきたお湯もこちらへ注がれていました。しかしながら、湯溜まりのサイズが小さい上、巨大な岩とテントに挟まれているためにかなり薄暗く、閉塞感も否めません。テントはかなり堅牢に造られており、内部には時計やコップなどが備え付けられていました。
続いて真ん中の湯溜まりへ。こちらはややぬるくて38.1℃です。湯溜まりは岩に囲まれた深い位置にあり、しかも小さいので、実際に入ってみると圧迫感がありました。
下流側の湯溜まりは41.3℃という最適な湯加減であり、こちらも足元湧出や周辺の小さな泉源から集められたお湯がプールされているのですが、上2つと異なりこちらは何の囲いもない完全な露天風呂であり、2人同時に入っても余裕のあるサイズですので、私としてはここが非常に気に入りました。
お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、神経を研ぎ澄ませて嗅いでみるとタマゴ臭が微かに香っているようであり、また石膏泉的な甘さを含んでいるように感じられました。なお人が湯溜まりに入るとしばらくお湯が灰色っぽく濁りますが、数分で元の澄んだ状態に戻ります。
私が訪問した時には先客が一人いらっしゃったので、一緒に入浴させていただきました。
このおじさん(画像左側)は新竹にお住まいの侯さん。週に2回もこの温泉に入りに来るほど小錦屏温泉の愛好家なんだそうでして、この日もご自宅から約40kmの道のりを1時間ほどかけてオフロード車でやってきたんだそうです。そういえば川原の広場には一台の赤いスズキの4駆車がとまっていたのですが、あれはおじさんの車だったんですね。入浴中に侯さんから「荷物はちゃんと目の届くところで管理しておいたほうがいいよ」とアドバイスされたのですが、置き引きなどとは無縁なこの地でなぜそんな注意を要するのかといえば、ここは野生の猿が多く棲息しており、しばしばイタズラして荷物を持って行ってしまうんだとか。特にバーベキューをやっていると美味いものに限って狙われてしまうんだそうです。それだけ自然が豊かなところなんですね。私がのんびり湯浴みしていると、侯さんはおもむろに湯船から出て川に入って冷水浴を楽しんでいらっしゃり、その後温泉入浴と川での水浴びを頻りに繰り返していました。
美しい自然に抱かれながら、足元湧出の新鮮なお湯を堪能できる、極上の野湯でした。
50分かけて急坂を歩いた甲斐がありました。おすすめです。
新竹県尖石郷錦屏村 地図
野湯につきいつでも入浴可能(キャンプ&バーベキューをして夜を明かす人もいます)
無料
私の好み:★★★
いきなりですが、現地までの概念図を掲載させていただきますので、この図に記されている内容をもとに以下の文章を読み進めていただくとわかりやすいかと思います。なお温泉までは歩いて向かったのですが、距離が掴めなかったので、各画像のキャプションにはその地点を通過した時刻を一緒に記入いたしました。
【8:40 歩行開始】
宿泊した「美人湯館」を8:30にチェックアウト。ホテル前の一本道を奥へ進んで錦屏集落を抜け、数百メートル走ったところで、左側に空き地を見つけました。この先も道は舗装されているのですが、幅員が狭くて勾配も急なので、レンタカーに万一の事態が発生することを防ぐため、この空き地に車を止めて、リュックに荷物(水着・カメラ・ペットボトルの水・飴玉など)を詰め込んで歩行を開始しました。空き地の先からいきなり急坂がはじまります。
空き地からちょっと登った右手にはレンガの倉庫が建っていました。見るからに相当古そうですね。何年前の建造物なんでしょうか。
【8:50 分岐その1】
小錦屏温泉への道のりは、勾配こそ急であるものの、分岐はあまり多くないので、道に迷う危険性は少ないかと思います。上画像の地点が数少ない分岐点の一つでして、ここは左へと進みます。なお右の道は坂を下って養魚場(画像右(下))へとつながっています。分岐点をよく見ると、右側の路肩に進入禁止の標識が立っていますね。そちらの方へ行かなければ良いわけです。
ひたすら坂を登ります。途中、車が離合できる路肩やS字カーブの外側スペースなど、駐車可能なポイントが数ヶ所ありました。先の見えない登りが延々と続き、息は切れる、腰は痛む、そして喉も乾きはじめます。
途中にはこのような水場があるのですが、衛生状態がさっぱりわからないので、さすがに飲む気にはなれません。出発前に水を必ず携行しましょう。私はホテルの客室に用意されていたミネラルウォーターを持参していきました。
【9:10 登り坂のピークに建つ小屋・分岐その2】
勾配が緩やかになりはじめると、やがて左手に小屋(倉庫?)が見えてきます。この辺りが登りのピークでして、これ以上登ることはありません。なお小屋の手前の路肩には2~3台駐車できるスペースがあり、もしここに駐車しても他車の離合に支障が出ないほど余裕がありますので、私みたいに苦労して歩いて登らず、ここまで車に乗ってきても問題ないかと思います。実際に温泉から帰ってくるときに、ここで1台の乗用車(カローラクラス)とすれ違いました。
小屋の先には2つ目の分岐があり、ここは右へ進みます。なお誤って左へ行ったとしても、すぐに閉鎖中のゲートによって進めなくなりますから、ここでも道に迷うことはないでしょう。
【9:15 砂利道の急な下り坂スタート】
2つ目の分岐点からは一転して下り坂となります。しばらくは舗装路面が続きますが、途中で舗装は途絶えて砂利道となり、そこから更に下り勾配が急になります。なお舗装路面終了地点の手前にある路肩スペースは普通車にとっての最終駐車可能ポイントですので、もし普通車でここまで来てしまったら、その路肩スペースに止めるか、あるいは転回して引き返しましょう。
ここから先は普通車の通行ができません。オフロード車のみ通行可能です。
見晴らしの良いところで右の方を眺めると、眼下に渓流の谷が見えました。あの谷底まで一気に下るわけです。
【9:18 Z字の坂】
この白い看板は渓流の禁漁を告知する新竹県の掲示なのですが、この看板のすぐ下にある坂がこの道のハイライトかもしれません。というのも・・・
このようにZ字状になっており、ここを車で通行する場合はスイッチバックの要領で進まなければならないのです。しかもガードレールが無いため、バックの塩梅やハンドルの切り方を誤れば谷底へ転落してしまいます。このスリルあるジグザグ路を運転したいために、敢えてオフロード車で小錦屏温泉を目指す方も多いようです。
谷底を流れる川へ辿り着くまで、まだまだ急な下りは続きます。ダート路なのでとても滑りやすく、何度も足元を掬われそうになりました。
勾配が緩くなって道が樹林帯の中へ入ってゆくあたりを歩いていたら、川の方からオフロード車がやってきて、ドライバーの方が私に手を振りながらZ字坂に向かって去っていきました。
【9:25 川原へ下りきる】
Z字坂から約300~400メートルで坂を下りきり、川原の広場へ出ました。オフロード車はここに駐車します。
広場から川の下流を眺めますと、岩陰からテントのシートがチラっと姿を覗かせているのですが、これが今回の目的地である「小錦屏温泉」であります。ここからは川原を下流へ向かって歩いてゆきます。ゴールが見えてきたので足取りが俄然軽くなりました。
崖下には浴槽の跡と思しきコンクリ製の構造物がありました。ここにはかつて温泉施設があったのでしょうか。
【9:30 小錦屏温泉到着】
駐車した空き地から歩き始めて50分で小錦屏温泉に到着しました。大きな岩の傍に立てられた木の柱にテントを張って屋根がけされており、その下には温泉が湧出している湯溜まりがあるのです。子供の頃に作った秘密基地のような、とても原始的な小屋ですね。
コンパネを立てて側壁にしているこちらの小屋は脱衣ルームです。こんな山奥にもかかわらずこの温泉は人気があって、意外と人がやってきますので、たとえ到着時に誰もいなかったとしても、念のために水着に着替えておきましょう。私もちゃんと着替えましたよ。
川原一帯が温泉湧出地帯であり、あちこちから湧き出ているのですが、その多くは川に沿って並んでいる3つの湯溜まりに収斂されています。この3つある湯溜まりのうち、最上流側に温度計を突っ込んでみると39.6℃となっており、お湯は足元から湧出している他、さらに上流側に点在する小さな泉源から流れてきたお湯もこちらへ注がれていました。しかしながら、湯溜まりのサイズが小さい上、巨大な岩とテントに挟まれているためにかなり薄暗く、閉塞感も否めません。テントはかなり堅牢に造られており、内部には時計やコップなどが備え付けられていました。
続いて真ん中の湯溜まりへ。こちらはややぬるくて38.1℃です。湯溜まりは岩に囲まれた深い位置にあり、しかも小さいので、実際に入ってみると圧迫感がありました。
下流側の湯溜まりは41.3℃という最適な湯加減であり、こちらも足元湧出や周辺の小さな泉源から集められたお湯がプールされているのですが、上2つと異なりこちらは何の囲いもない完全な露天風呂であり、2人同時に入っても余裕のあるサイズですので、私としてはここが非常に気に入りました。
お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、神経を研ぎ澄ませて嗅いでみるとタマゴ臭が微かに香っているようであり、また石膏泉的な甘さを含んでいるように感じられました。なお人が湯溜まりに入るとしばらくお湯が灰色っぽく濁りますが、数分で元の澄んだ状態に戻ります。
私が訪問した時には先客が一人いらっしゃったので、一緒に入浴させていただきました。
このおじさん(画像左側)は新竹にお住まいの侯さん。週に2回もこの温泉に入りに来るほど小錦屏温泉の愛好家なんだそうでして、この日もご自宅から約40kmの道のりを1時間ほどかけてオフロード車でやってきたんだそうです。そういえば川原の広場には一台の赤いスズキの4駆車がとまっていたのですが、あれはおじさんの車だったんですね。入浴中に侯さんから「荷物はちゃんと目の届くところで管理しておいたほうがいいよ」とアドバイスされたのですが、置き引きなどとは無縁なこの地でなぜそんな注意を要するのかといえば、ここは野生の猿が多く棲息しており、しばしばイタズラして荷物を持って行ってしまうんだとか。特にバーベキューをやっていると美味いものに限って狙われてしまうんだそうです。それだけ自然が豊かなところなんですね。私がのんびり湯浴みしていると、侯さんはおもむろに湯船から出て川に入って冷水浴を楽しんでいらっしゃり、その後温泉入浴と川での水浴びを頻りに繰り返していました。
美しい自然に抱かれながら、足元湧出の新鮮なお湯を堪能できる、極上の野湯でした。
50分かけて急坂を歩いた甲斐がありました。おすすめです。
新竹県尖石郷錦屏村 地図
野湯につきいつでも入浴可能(キャンプ&バーベキューをして夜を明かす人もいます)
無料
私の好み:★★★