温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台湾・北横公路横断ドライブ その1

2013年04月24日 | 台湾
台湾中北部の苗栗県や新竹県で計画していた湯めぐりをひと通り済ませた私は、次なる目的地を北東部の宜蘭県に定めていました。今回はレンタカーという万能な交通手段があるので、車道さえあれば大抵のルートなら走ることができます。まずは台湾北部を示す次の地図を御覧ください。


地図上のAが出発点である新竹県尖石郷錦屏温泉、Bが目的地である宜蘭県大同郷百韜橋です。この2点間は台湾島の脊梁となっている山岳地帯を越えて西から東へ横断すれば地図上では最短となるわけで、青いラインが実際に車で走れるその最短ルートをトレースしています。一見すると大したことのない経路のように思われますが、試しにGoogleMapで両地点間をルート検索してみたところ・・・


(上画像をクリックするとGoogleMapのルート検索結果が表示されます)
ななんとなんと、最短距離を進むのではなく、台北市街経由で高速道路をグルっと大きく迂回したほうが所要時間が短くなるという答えが出されたのです。山越えの最短ルートは約85km・3時間超に対し高速経由の迂回路は約160km・2時間59分。2倍の走行距離なのに所要時間がほぼ同じということは、それだけ山越えの道が険しいことを示しているのでしょう。また地図を見る限り最短ルートのほうが遥かに走行距離が短そうに見えますが、実際には2倍しか差がないのですから、最短ルートが非常にクネクネしていることも推測できます。
でもせっかく観光で台湾に来たのですから、実用本位な高速ではなく、多少苦労してでも山奥の絶景を眺めてドライブした方がきっと想い出に残るはず・・・。そんな考えの私に高速道路を選択する発想などなく、当然のように山道ドライブを敢行することにしました。


では実際にどんなルートなのか。2点間を拡大した次のマップを御覧ください。


青いラインが今回のルートです。太い線で描かれているため判かりにくいのですが、ひたすらクネクネ道が続くことは一目瞭然。しかも単なるクネクネではなく、ヘアピンカーブや狭隘路、急勾配など、初心者ドライバーだったら間違いなく泣き出しちゃうような難関の連続なのであります。

また途中の巴陵という場所から先は台7線を進んでいますが、この区間は北部横貫公路、略して「北横公路」と呼ばれており、台湾の脊梁山脈を越える数少ない東西横断道路のひとつであります。台湾の南北に聳える山脈には玉山(3952m)や雪山(3886m)など富士山よりも高い山が存在しており、島自体は九州と同じような大きさでありながら、その険しさ故に島を横切る交通路が非常に少なく、この「北横公路」の他は「中横公路」や「南横公路」程度しか道がありません。この3本の横断道路は「台湾三大横貫公路」と呼ばれています。今回はそのうちの一つで台湾島を横切るわけです。険しい道ゆえに越えたときの達成感があるため、自転車でツーリングする日本人の方もいらっしゃるようですが、そんな体力の無い私は1.5Lのトヨタ・Yaris(ヴィッツ)で山越えに挑んだのでありました。


●錦屏から玉峰まで

【11:15 錦屏橋】
前回取り上げた小錦屏温泉から戻って車に乗り込み、錦屏温泉を通り過ぎて、錦屏後山産業道路(※)との接続点である錦屏橋へとやってきました。錦屏温泉からここまでは約3km離れていますが、今回の記事では便宜上、ここを起点とさせていただきます。上画像において、画像中央に写っている錦屏橋(錦屏一号橋)を渡ってまっすぐ進むと秀巒温泉・玉峰方面、右は錦屏温泉や小錦屏温泉方面、左は内湾を経由して竹東・新竹方面です。今私は画像の右方向からやってきましたので、これから橋を渡って正面方面に進みます。
(※)日本で産業道路といえば工場地帯で大型車が走るような大通りをイメージしますが、台湾に於いては山間集落の生業を支える生活道路であり、ほとんどは林道に毛が生えた程度の狭くて険しい山道です。



切り立った岩壁を削って設けられた洞門をくぐります。このすぐ先には「天然谷温泉」という温泉施設があるのですが、今回は時間の関係で利用しませんでした。


 
【11:18 青蛙石】
「天然谷温泉」の先には「青蛙石」と呼ばれるちょっとした名所があるらしいので、駐車場に車を止めて見学してみることに。
路肩と渓流に挟まれたスペースは小さな公園のように整備されており、ひょうきんなポーズをとる大小のカエルの石像が置かれているのですが、「青蛙石」とはこの石像ではなく、渓流の中でドシンと構える岩のことを指しているようでした。画像右(下)の真ん中に写っている岩をよく見ますと、こちらを睨んでじっと座っている蛙に見えるような見えないような・・・。



険しい地形ですので、あちこちで斜面崩壊・土砂崩れが起きています。このように法面が崩壊したばかりの箇所を通過する瞬間は、土砂に飲み込まれそうな恐怖感に襲われました。


 
GPSの画面には小腸も顔負けのクネクネ道が表示されました。非常に見通しが悪いので、路肩には「常時ライト点燈せよ」の標識も立てられています。


 
標高が高くなるにつれて霧が濃くなっていき、昼間とは思えない暗さに。


 
【11:45 峠の集落】
ひたすら続くヘアピンカーブの急勾配を登り切って峠のピークへたどり着くと、そこには小さな集落が道にそって形成されていました。



【11:50 玉峰・秀蘭分岐点】
峠の集落からちょっと下るとこのような分岐点となります。ここをまっすぐ進むと以前拙ブログで取り上げた秀巒温泉へ辿りつけますが、今回はここを左折して玉峰方面へ進みます。


 
分岐点からは何故か道幅が広くなり、カーブの回転半径もいくらか緩和されて走りやすくなりました。部分的に道路改良が進んでるのでしょうね。エンジンブレーキを多用しながら谷底へ向かう坂を下り、やがて玉峰集落へ。


 
【12:10 玉峰】
玉峰という小さな集落に入りました。小学校や警察の派出所などひと通りの公的施設は揃っており、集落で生活するための小規模な商店も点在していますが、コンビニなどはありません。小吃と書かれた看板もありましたので、そのような看板の店では軽い食事がとれるのかもしれませんが、営業しているか否かは不明です。
道は集落の途中で二又に分岐しており、標識によればどちらへ進んでも桃園県に出るとのこと。


 
分岐の左は荒れた砂利道、右は橋を渡ってさらに山奥へと伸びています。さて、どちらに進むべきか・・・。ちょうどすぐ傍で歯っ欠け爺さんがウロウロをしていたので、この爺さんに「(北横公路に接続する)巴陵へはどちらですか?」と訊いてみたところ「左へ進め。右は道が悪くて遠回りだ」と答えてくれました。いや、お爺さんの話す言葉はほとんど聞き取れませんでしたが、身振り手振りや、たまに聞き取れる単語から推測すると、そのように教えてくれているようでした。



お爺さんを信じて荒れた砂利道へ進むと、分岐から数百メートルで砂利道は終わって舗装路面に戻りました。非舗装は川沿いの区間のみで、ちょうどそこだけ陥没しているようになっていたので、おそらく水害などで路盤が流失してしまい、とりあえず砂利道で仮復旧させているのだろうと思われます。しかし、その後もこんな感じで路肩が崩壊している区間とあちこちで出くわしました。

玉峰からは先は道路状況がかなり悪いようです。まだまだ先は長いですし、しかもまだ中央の脊梁を越えていません。この時私の脳裏によぎったのは、数日前に遭遇した南投県紅香温泉へ向かう一本道における現在進行形の土砂崩れ現場の様子でした(拙ブログの当該記事をご参照あれ)。災害は何の予告も無く我々に襲いかかってきます。もし目の前で道路に障害が発生したらどうしよう。直接的な被害に遭わなくても、行く先が通行止だったら、今やってきた道を戻って大きく迂回しなければなりません。

果たしてこの先はどうなることやら・・・
(次回へつづく)
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