温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

泥湯温泉 天狗の湯

2013年10月10日 | 秋田県

泥湯温泉の隠れキャラ的な存在である露天風呂「天狗の湯」には、「泥湯保養団地組合 天狗の湯」という正式名称があるんだとか。妙に仰々しいネーミングだこと。決して目立たぬ場所にありまして、あまり大っぴらに外来利用を受け入れてないような雰囲気があるため、念のため何処にあるかは秘密にしておきますが、ま、温泉ファンでしたらご存じの方も多いことでしょうから、もし詳しくお知りになりたければ、名称などでググってみてください。窪地の底に潜んでいるかのような無人の露天風呂ですが、利用に際しては事前に某所で料金を支払う必要があり、私の場合は某所での入浴と一緒に利用を申し出ましたら、某所の入浴料300円と天狗の湯の100円を合わせて400円を請求されました。そして「もし露天風呂が熱くて入れなければ100円をお返しします」とのことでした。


 
某所での入浴を済ませた後、一旦着替えてから道路を歩いて「天狗の湯」へと向かいます。現地に到着してみますと、案の定、誰もいません。この日の「奥山旅館」は日帰り客で賑わっていましたが、さすがにここを知っている人は少ないのでしょう。掃除用具倉庫のような脱衣場で着替えます。お風呂は露天のみで内湯はなく、洗い場などもありません。湯船の半分ほどはステンレス板葺きの屋根で覆われています。


 
二分割された湯船には泥湯温泉らしい灰白色に強く濁った硫黄のお湯が張られており、浴槽の脇には「天狗の湯」と記されたプレートが横に置かれていました。某所の方が仰っていたように湯船のお湯はかなり熱く、加水しようと思っても水道も何も無いので、温度を下げたければ、備え付けの桶でお湯を掻き混ぜる他ありません。


 
二分割されている湯船の内、奥側の浴槽には塩ビパイプから源泉がアツアツの投入されており、湯船の温度を測ったら50.8℃でした。温泉はこのパイプの他、その右側の岩を流れて注がれてくるものもあります。もちろんこの温度では熱すぎて入浴できませんし、上述のように加水できませんので、とりあえず桶で湯もみを試みましたが、熱さはほとんど下がらず、こちらでの入浴は断念…。


 
一方、奥側からお湯が流れ込んでくる手前側の湯船もかなり熱かったものの、何とか入れそうな感じでしたので、懸命に掻き混ぜてみたところ、46.5℃まで下がりましたので、熱さに耐えながら入浴してみました。お湯が熱いのはアツアツの源泉をそのまま投入していること、加水していないこと、そして入浴した日は猛暑の真っ只中で浴槽周りの石材もかなり熱せられていたことが、その原因かと思われます。従いまして気候によってはこの日よりも入りやすい状態になっているのではないかと推測されます。
お湯は某所の内湯よりもやや黄色みが強く、且つ青白っぽさも兼ね備えている濁り方をしており、またイオウ感や酸味も強くて口腔内の収斂もはっきりしていました。

道路の傍にありながら、位置的な関係によって道路から入浴姿を見られることはなく、開放的なロケーションで他人に気兼ねなく入浴できるのが嬉しいところ。目の前は沢と小さな湿地、そして山の緑が広がり、東北の自然に抱かれながら硫黄の濁り湯を楽しむことができました。


温泉分析書掲示なし

秋田県湯沢市高松字泥湯沢
(詳しい場所の特定は控えさせていただきます)

利用方法及び料金等は本文参照

私の好み:★★★
コメント (4)
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泥湯温泉 小椋旅館

2013年10月09日 | 秋田県
 
盛夏の某日、秋田県の泥湯温泉でひとっ風呂浴びようと、以前拙ブログで取り上げた「豊明館」を訪おうとしたのですが、あいにく休業中で固く扉を閉ざしていたため(※)、第二候補である「小椋旅館」で日帰り入浴をお願いすることにしました。私がこちらを訪れるのは6~7年振りです。拙ブログでも以前に「豊明館」の記事で述べましたが、旅館名の「小椋」は木地師に見られる典型的な姓名であり、全国の小椋さんの祖先を追ってゆくと近江国(滋賀県)愛知郡小椋庄にたどり着くことは、民俗学の世界ではよく知られた話です。
通りを挟んで旅館棟と浴場棟の2つに分かれており、まず旅館棟で料金を支払ってから、反対側の浴場棟へと向かいます。
(※)「豊明館」はどうやら長期休業のようです。ついでに言えば、泥湯温泉唯一の飲食店である「どろゆ食堂」も玄関が戸板で打ち付けられ、店じまいしてしまったようでした。当地ではちゃんとした昼食が摂れなくなっちゃいましたね(奥山旅館の売店で玉こんにゃくかおにぎりなら食べられますが…)



「山の湯」と書かれた浴場棟を入りますと、薄暗い館内は天井が低くて床が軋み、山奥の秘湯らしい鄙びた風情たっぷり。この日、隣の「奥山旅館」は多くのお客さんで賑わっていましたが、対照的にこちらは混雑とは無縁の静かな時間が流れていました。


 
立派な露天風呂が用意されている「奥山旅館」と違って、こちらは男女別の内湯があるばかりの、至って古典的且つシンプルなお風呂があるばかり。脱衣室も極めて質素でありますが、そのシンプルさこそ私のような温泉ファンのハートを鷲掴みにしてくれるんですね。


 
総木造の浴室には四角い浴槽が一つと洗い場の水栓が2つ、そして奥の方には打たせ湯も用意されています。洗い場に設けられてる2つのオートストップ式水栓からは、ボイラーのお湯が吐出されるのですが、この時はチョロチョロとしか出てきませんでした。


 
総木造の浴槽にはパイプから源泉が投入されており、縁からしっかりと溢れ出ていました。湯船のお湯は薄いグリーンを帯びた明るいグレーに濁っており、浴室に入った時には浴槽内のステップが目視できましたが、私が湯船に入ると槽内の沈殿が撹拌されて濁り方が強くなり、透明度がほぼゼロになってしまいました。
お湯を口に含むとマイルドな酸味があり、口腔を少々収斂させます。その他、弱塩味やイオウ味、そして粘土のような味が感じられました。湯面からは仄かにイオウ臭や泥のような匂いが漂っています。まさに「The 泥湯」という感じのお湯です。この時は先客がたっぷり加水したのか、ややぬるめの湯加減となっており、じっくり長湯を楽しめました。



槽内にはお湯を濁らせる湯泥が沈殿しており、特に湯口直下にはたくさん溜まっていましたので、その湯泥を掬って桶に入れてみました。湯船に浸かった人は誰しもこの泥を手に取りたくなるようで、湯船上の壁には泥による文字や手形がたくさん残されていました。湯浴みの想い出なんですね。


山の湯温泉
単純酸性泉 64.9℃ 溶存物質429.8mg/kg 成分総計519.8mg/kg
Na+:11.1mg, Ca++:12.3mg, Al+++:7.8mg, Fe++:7.2mg,
Cl-:5.0mg, HS-:10.6mg, S2O3--:0.1mg, HSO4-:10.6mg, SO4--:199.7mg,
H2SiO3:162.7mg, CO2:90.0mg, H2S:<0.1mg,

秋田県湯沢市高松泥湯沢25
0183-79-3035

300円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (2)
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秋の宮温泉 新五郎湯

2013年10月07日 | 秋田県
※残念ながら閉館したようです。

 
前回取り上げた「太郎兵衛」から程近い場所にある「新五郎湯」でも立ち寄り入浴を楽しんでまいりました。こちらは元禄15(1702)年に開湯されたという秋の宮最古の温泉なんだとか。



浴室の外には貯湯タンクが立っており、浴室内からはドバドバとお湯が落ちる音が道路まで響いています。



帳場の前ではおばちゃん向けの衣類が販売されていました。こちらに限らず、地方の温泉旅館ではえてしておばちゃん向けの地味な服が売られていますが、地域を限定せず広範囲にわたって同じ販売形態が見られるということは、温泉宿というチャンネルを通じたアパレル(という横文字表現が似つかわしくない気もしますが…)のマーケットがそれなりに存在するということであり、且つ宿泊する婆さま達も「今度湯っこさ入りに行くどぎ、一緒に服さ買うべ」なんて発想を当たり前のようにするってことなんですね。


 
玄関を上がって右手に浴室があり、2つ並んでいるうちの奥側が男湯。脱衣室はストレスを感じさせないほどの広さがあり、ロッカーは無いものの、ドライヤーや扇風機は備え付けられています。
浴室は内湯のみですが、湯治宿とは思えない清潔感のあるオフホワイトのタイル貼りに統一されており、内装の新しさから想像するに、この浴室は改装されてまだ数年程度しか経っていないものと思われます。洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基並んでいました。


 
大文字の"D"のような形状をしたタイル貼りの浴槽は6~7人は同時に入れそうな大きさがあり、その縁をグルッと廻るようにして檜のカバーが這わされており、カバーの終着点から突き出た口より源泉がチョロチョロと注がれています。投入量が絞られているのは湯温調整のためかと思われます。
お湯は無色透明で薄い塩味とパラフィンっぽい薬品的な味・匂いが感じられますが、味・匂いともに薄くてアッサリとしていました。少々トロミのある湯船に浸かると、入りしなはちょっと引っかかる感じがあるのですが、肌に馴染むとサラスベ浴感が全身を覆ってくれました。総じてマイルドでやさしい浴感が印象的なお湯でして、じっくりと湯治するには相応しいものと言えそうです。



浴室の奥には打たせ湯があり、室内に滝のような音を轟かせていました。表で聞こえた音はこれだったんですね。実際に打たれてみますと、結構圧力が強く、肩甲骨のまわりや背筋・腰などツボの要所要所をグイグイと押してくれましたので、入浴効果も相俟って使用後は体がスッキリできました。


ナトリウム-塩化物温泉 61.5℃ pH7.5 自然湧出 溶存物質1.28g/kg 成分総計1.30g/kg
Na+:367.8mg(85.06mval%), Ca++:32.8mg(8.72mval%),
Cl-:583.3mg(87.59mval%), SO4--:41.8mg(4.63mval%), HCO3-:84.0mg(7.35mval%),
H2SiO3:115.7mg, CO2:22.0mg,

秋田県湯沢市秋ノ宮湯ノ岱71
0183-56-2331
ホームページ

※残念ながら閉館したようです。
9:00~17:00
400円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず

私の好み:★★
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秋の宮温泉 太郎兵衛

2013年10月06日 | 秋田県
 
秋の宮温泉の老舗旅館「太郎兵衛」で日帰り入浴利用してまいりました。こちらのお宿は早朝から入浴利用ができるので、旅行者にとってはありがたいですね。駐車場に車をとめますと、宿のおじいさんが玄関に立って私を出迎えて下さいました。建物自体はかなり年季が入っていますが、館内は綺麗に維持されています。


 
玄関から右側へ伸びる廊下を進んだ先に男女別の浴室があり、手前側が男湯です。脱衣室には棚が括りつけられているだけで、鏡すら無く、至ってシンプルです。こういう施設のお湯は「当たり」である場合が高いので、浴室へ入る前から期待に胸が膨らんでしまいます。


 
浴室も装飾性の少ない実用的な造りですが、コンクリの床一面に塗られた国電時代の京浜東北線みたいな色が目を引きます。訪問時は床が完全に乾いていたので、多分私がこの日の一番風呂だったのでしょうね。洗い場にはシャワー付き混合水栓が1基設置されていました。



地味な雰囲気の浴室にあって、男女の仕切りはガラスブロックとコンクリブロックが交互に(市松状に)組まれており、向こう側が見えるか見えないかという、ちょっとしたエロチックな意匠が施されていました。この仕切塀は意外と低く、高身長の人だったら向こう側が覗けちゃうかも。きっとこの仕切塀は浴室が出来上がった当時からある古いものでしょうから、かつての日本人はこの低い仕切りで十分カバーできるほど平均身長が低かったということなのかもしれません。


 
浴槽は5~6人サイズで、天井を這ってきた配湯パイプが湯船へと潜り、槽内底部にて源泉が投入されています。館内表示によれば清掃時のみ加水されるそうですが、利用時には加水されている様子は無く、鮮度感も良好でしたから、完全掛け流しに近い状態だったものと思われます。

お湯は無色透明で薄い塩味を有し、食塩泉にありがちなフンワリとした温泉臭(香ばしい出汁の匂いを薄めたような匂い)を漂わせていました。湯船に浸かるとちょうど良い湯加減で、弱いツルスベ感があり、湯上がりもしばらくは温浴効果が続いて、汗がなかなか引きませんでした。
昔ながらの湯治宿風情が漂う静かなお宿で、新鮮な掛け流しのお湯を楽しめる、素敵なお風呂でした。


ナトリウム-塩化物温泉 71.5℃ pH7.6 動力揚湯 溶存物質1.27g/kg 成分総計1.29g/kg 
Na+:365.6mg(84.31mval%), Ca++:33.4mg(8.85mval%),
Cl-:594.5mg(88.59mval%), SO4--:39.0mg(4.28mval%), HCO3-:79.4mg(6.87mval%),
H2SiO3:107.3mg,
清掃時に限り温度調整のため加水

秋田県湯沢市秋ノ宮湯ノ岱64  地図
0183-56-2036

6:00~18:00
300円
シャンプー類あり

私の好み:★★
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仙台市某所の温泉施設跡 2013年夏 (ついでに定義の油揚げ)

2013年10月05日 | 宮城県
●某所にある温泉施設跡の廃墟

杜の都仙台を象徴する風景の一つである広瀬川も、中流域では河岸段丘を形成し、川自体は深い峡谷の底を流れています。こんな山深い景色が広がるこの界隈も、住所の上では仙台市内なんですよね。



川の写真を撮った橋の近くには一部のマニアで有名な、某温泉施設跡の廃墟があり、建物は既に解体されているものの、湯船とお湯はその後も残っていて、最近までは実際に入浴することもできました。しかしここ最近はこのお風呂に関する新たなレポートがネット上で見られなくなっているので、念のため現状を確認すべく、現地を訪問してみることにしました。上画像の地点からヤブの中へと入っていきます。以前はこのカーブのところに入浴者の車が止まっていたものですが、現在はこの道が橋梁工事のために車両通行止となっているので、車の姿は見られませんでした。


 
ひたすら鬱陶しい藪漕ぎです。奥へ行けば行くほど、踏み跡はほとんど消えていました。もうこの時点で、お風呂の現状がどうなっているかは、たやすく想像できてしまうわけですが、念のために現物を見ておきましょう。



ということで、浴槽の前に到着です。タイル貼りの浴槽は残っていますが、案の定、周りは荒れ放題で、湯船にお湯なんて溜まっていません。


 

浴槽のすぐ目の前は断崖絶壁。というか、がけ崩れにより浴槽の一部は宙に浮いているような状態ですから、私のように迂闊に立ち入って、脆い地盤が崩落して広瀬川の峡谷へ落っこちても自己責任です。


 
浴槽に溜まっているのはただの泥水。ちっとも温泉じゃありません。単なる雨水でしょう。人は入れませんが、アメンボが水面を自由気ままに動きまわっていました。


 
石積みの湯口からは去年までお湯が出ていたそうですが、今ではすっかり止まっていました。
もうここでの湯浴みは不可能です。みなさん、諦めましょう。


●定義の油揚げ
 
上述の温泉がこのような惨状に陥っていたのは事前に想像できていましたが、そんな光景を目にしただけで潔く諦めるほど私はマヌケじゃない。温泉がダメなら小腹を満たせ! ということで、完全に廃墟と化した温泉跡から更に山奥へと車を走らせ、仙台市民にはおなじみの定義如来(西方寺)へとやってまいりました。


 
まずは山門をくぐって貞能堂を参拝。


 
つづいて本堂へ。


 
そして、浄土くんに導かれて五重塔へ。どうでもいいけど、浄土くんっていうユルいネーミングは一体何なんだ。一休さんのまがい物じゃねぇのか。


 
己の小腹を満たす前に、五重塔近くの池で鯉に餌付けをしました。人影が近寄るだけで鯉たちは一斉にその方向へと集結し、餌を撒くと、死に物狂いのとんでもない形相で鯉たちはバクバク音をさせながら口を開け、餌に食らいつこうとします。その光景はあまりに恐ろしく、夢に出てきそうでした。でもそんな鯉の本能むき出しの旺盛な食欲を見ていたら、私も本格的に腹が減ってきたぞ。


 
参拝を済ませたところで門前に戻り、「定義とうふ店」で名物「定義のあぶらあげ」をいただきました。仙台人なら誰でも知っているけど、そうでなければ知名度ゼロという、何とも不思議な名物であります。揚げたての大きな油揚げに、醤油と七味をかけて食うと実に美味なのです。



「定義とうふ店」の前に設置されている自販機は、なぜか伊藤園の「おーいお茶」ばかり。油揚げにはお茶が一番合うということでしょうか。

ちなみに、この近くには「定義温泉」という知る人ぞ知る秘湯があるのですが、長期療養の湯治専門温泉であり、一般人の立ち入りは拒絶されるそうですから、興味本位で伺うことはやめておきます。
コメント (2)
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