温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

遠刈田温泉 旅館大忠

2013年10月04日 | 宮城県
 
遠刈田温泉の公衆浴場「寿の湯」の近くにある「旅館大忠」の前を通りかかったとき、玄関前に日帰り入浴の利用を歓迎する看板が立てられていたので、その文言に誘われて利用させていただくことにしました。外観は料亭を思わせ、玄関には水が打たれており、館内に入ると帳場の周りをはじめとした廊下は畳敷きになっていました。下足場に靴を脱ぐと、スタッフの方が靴をきちんと並べておいてくれました。



帳場で直接料金を支払い、スタッフの丁寧な説明に従って、右手に進んで浴室へと向かいます。


 
男湯の脱衣室の壁は紺色に塗られており、そのシックな趣きには誰しもが落ち着くはず。洗面台には紅色の陶器が用いられており、その周りも小洒落た感じにまとめられています。アメニティ類の備え付けもしっかり。しかもエアコンが取り付けられているので、室温は快適な状態が保たれていました。建物自体は決して新しくないのでしょうが、創意工夫を凝らしたリノベーションにより、居住性も実用性も向上させており、諸々の努力には敬意を表したいものです。



浴室にはシャンプーが備え付けられていますが、その他にも浴室入口にはいろんな種類のシャンプーが用意されており、お客さんの好みに合わせて自由に選べちゃうんですね。こうしたサービスは女性のみならず男性だって嬉しいものです。


 
ステンドガラスが美しい浴室には、温泉が張られた四角形の浴槽と並んで温泉蒸気の寝湯があり、気品のある大正モダンを連想させる、和洋折衷の素敵な雰囲気です。床には厚い木材が敷かれており、足元から伝わってくる感触が優しく、見た目のみならず肌感触も上品な浴室です。
温泉蒸気の寝湯に敷かれているスノコの下では、70℃の源泉がシャワー状に流されており、スノコのスリットから湯気が上がって体をじんわりと温めてくれます。実際に寝っ転がってみますと、上がってくる湯気は結構熱いのですが、決して嫌な熱さではないので、何度も利用して独特の温浴を楽しみました。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が4基並んでいます。シャワー前に備え付けられているボディーソープやシャンプー類のケースは、浴室のステンドガラスの色に合わせているのかな。シャワーヘッドから吐出される水流は、中央が太くて円周部が細く、繊細な水流がとても気持ち良いものでした。


 
結構大きな浴槽は、縁が木で槽内はタイル貼り。木組みの湯口から直接触れないほど熱いお湯が注がれており、縁の切り欠けから排湯されています。湯口の樋はV字型になっており、その下部にはトゲトゲ状の析出がこびりついていました。源泉温度が高いために多少は加水されていますが、加温循環消毒は行われていない放流式の湯使いでして、源泉投入量を絞ることにより加水量をできるだけ減らしているようでしたが、それでも湯船はやや熱めの湯加減でした。

使用源泉は遠刈田の7号泉でして、この源泉は拙ブログで既に取り上げている周辺の他旅館(「あづまや旅館」「たまや旅館」など)でも引かれている主力源泉のひとつです。湯船のお湯は窓越し降り注ぐ光を受けているためか、橙色に明るく濁っており、底が辛うじて見える程度の透明度でした。他の宿のお風呂より濁り方がやや強いかもしれません。新鮮金気と共に土類系の味と匂い、そして石膏や芒硝の味と匂いが感じられ、湯船に浸かるとキシキシ浴感と同時に全身を毛布で覆われているような優しい安心感に包まれ、遠刈田らしいしっかりとした浴感と、湯上がり後のツルスベ肌を堪能出来ました。

私がお風呂から上がって退館しようとすると、帳場ではその日に泊まるお客さんが続々とチェックインしていました。ネット上での評判を拝見しますと皆さん高く評価なさっているようですが、今回日帰り入浴しただけでも十分に好印象でしたから、人気を集めるのも納得できます。お風呂は今回利用した内湯の他、露天の貸切風呂があり、別途料金(1回3000円)を要しますが日帰り利用も可能とのこと。次回は是非宿泊利用してみたいものです。


遠刈田7号泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉 68.7℃ pH7.0 蒸発残留物2081mg/kg 溶存物質2256.2mg/kg 
Na+:389.8mg(52.87mval%), Ca++:276.0mg(42.92mval%),
Cl-:234.1mg(21.58mval%), SO4--:876.6mg(59.66mval%), HCO3-:342.1mg(18.34mval%),
H2SiO3:74.7mg, CO2:186.3mg,
源泉が高温のため加水
加温循環消毒なし

白石蔵王駅・白石駅よりミヤコーバスの遠刈田温泉方面行バスで遠刈田湯の町バス停下車・徒歩1分
宮城県刈田郡蔵王町遠刈田温泉旭町1  地図
0224-34-2306
ホームページ

日帰り入浴11:00~20:00
600円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品類は帳場預かり

私の好み:★★★
コメント (4)
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小原温泉 ホテルいづみや

2013年10月02日 | 宮城県
 
猛暑が日本列島を灼き尽くしていた真夏の某日、小原温泉の「ホテルいづみや」に立ち寄り、日帰り入浴してきました。何と申しましょうか、「西部警察」のロケ地に出てきそうな、いかにも昭和の雰囲気漂うどっしりとした構えの外観ですね。


 
玄関まわりには国産クラシックカーが2台置かれていました。グレーはいすゞの117クーペ、水色はダットサン・ブルーバードですね。カーマニアには垂涎もの? 


 
日帰り入浴客は玄関入って左側の下足箱を利用し、帳場で直接料金を支払います。帳場の方は快く日帰り入浴を受け入れ、お風呂場の場所を親切に教えてくださいました。ロビーにはたくさんのこけしが並べられています。廊下を進んで浴室へ。


 
2つある浴室は男女入れ替え制となっており、この時は右側の浴室に男湯の暖簾がかかっていました。浴室入口のスペースにはクラシックな体重計が置かれているのですが、建物の外観、クラシックカー、そしてこの体重計…。昭和の面影にあふれる、小さなタイムスリップを体感できるホテルなんですね。


 
広いガラス窓のおかげで渓流の陽光が降り注ぐ浴室。窓の下には大きな浴槽が据えられています。床には緑色凝灰岩の石材が用いられており、足元には多孔質な岩ならではの柔らかい質感が伝わってきました。洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基設置されています。



浴室の隅っこには「小原温泉」と書かれた湯もみ板と思しきものが立てかけられていました。でもこの日の湯船は湯もみするほど熱くはなかったですよ。


 
15人は余裕で同時入浴できそうな大きさの浴槽は、縁がワインレッドの石材で、槽内はタイル貼り。コップが置かれた湯口より注がれた源泉は湯船を満たした後、窓下の排水溝へと流下していきます。湯口から出た直後のお湯は触れないほど熱いのですが、広い湯船で熱が放出されるのか、湯船の温度は体感で42℃ほどでした。また湯口周りには白い析出が現れていますが、実際に口にしてみますとほぼ無味無臭でして、味や匂いのみならず浴感も、癖が少なくて優しいお湯でした。館内表示によれば加温加水循環消毒のない完全掛け流しとのことでして、まじりっけのない優しい効能なのか、湯上りに得られた肌のスルスル感は素晴らしいものがありました。


 
続いて露天風呂へ。山の緑に囲まれながら白石川の渓流を眺める爽快なロケーションに、4人サイズの岩風呂が設けられています。お風呂だけでなくそのまわりの足元にも石材が敷かれているのですが、猛暑のこの日は炎天下で石が熱せられ、まともに歩けないほどアツアツな状態でした。そんな石焼ビビンバ的なコンディションの影響なのか、お風呂のお湯もかなり熱く、1分も入れないほど高温でした。尤も普段はそんなことはなく、心地よい環境の下で気持ち良い湯あみが楽しめると思います。


 
お湯は内湯と同じものが竹筒から注がれていました。この源泉は昭和29年にホテルの敷地内にあるさいかちの木の根元下50メートルから湧出した自家源泉なんだそうです。ところで湯口の右側では、眠たそうな眼を開きながら不気味な笑みを浮かべるキャラの石像が佇んでいました。これって何者ですか?


さいかちの湯
単純温泉 65.0℃ pH8.3 165.6L/min(動力揚湯) 溶存物質866.3mg/kg 成分総計866.3mg/kg
Na+:208.3mg(76.98mval%), Ca++:49.3mg(20.90mval%),
Cl-:160.1mg(38.14mval%), SO4--:299.1mg(52.57mval%), HCO3-:39.5mg(5.49mval%),
H2SiO3:82.0mg,
清掃時に限り適温調整のため加水

白石蔵王駅・白石駅より白石市民バス(土日祝は運休)の小原線または七ヶ宿町営バス(土日祝も運行)の七ヶ宿白石線で小原温泉バス停下車
宮城県白石市小原字湯元9  地図
0224-29-2221
ホームページ

日帰り入浴12:00~21:00
500円
ロッカー(貴重品用)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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白石湯沢温泉 旅館やくせん

2013年10月01日 | 宮城県

かつて奥州街道の脇往還であった羽州街道は、桑折宿から分かれて小坂峠を越えて仙台藩領に入り、現七ヶ宿町を通り抜けて現山形県上山市の楢下宿に至って、更に北上して津軽の油川を目指していました。この街道の上戸沢や下戸沢といった旧宿場が並ぶ長閑な田園地帯の一軒宿、白石湯沢温泉「やくせん」にて日帰り入浴してまいりました。


 
敷地内には「湯沢神社」と称する小さな神社があり、温泉の縁起を記した石碑が設置されています。曰く、その昔、当地で営業していた宿にみすぼらしい格好の坊さんがやってきて宿泊を乞うたが、宿賃の取りっぱぐれを危惧した宿はその坊さんを門前払いにした。すると坊さんは持っていた杖で地面を叩いてその場を去ったのだが、しばらくするとその場所からお湯が湧き出た。その後しばらくこのお湯は忘れ去られた存在であったが、後年このお湯に浸かった者がその効能に驚き、温泉宿として再興した。かつて杖を叩いた僧侶は弘法大師ではなかったか・・・とのことです。弘法大師が杖もしくは錫杖を突いたら温泉が湧き出した、という伝説を有する温泉は日本全国に余多あり、そのほとんどは弘法大師が訪れたのではなく、山師として流浪の人生を送っていた高野聖であったことに想像は難くないわけで、もしこの伝説が本当であったとしたら、当地も高野聖が何かを掘り当てようとした際に温泉を発見したのかもしれません。



祠の傍らには「くすりの泉」と刻まれた碑とつくばいが藪に半身を隠していました。お宿の名前である「やくせん」とは薬泉という意味であり、ご近所の萬蔵稲荷神社の神主さんが命名したんだそうです。


 
玄関から上がって帳場で入浴料金を支払い、お風呂のある奥へと進みます。玄関の帳場と反対側にあるカウンターにはこけしがたくさんこちらを向いて微笑んでいました。



ちゃんとした旅館だけあり、フローリングの脱衣室は綺麗に保たれており、ロッカー・ドライヤーなどベーシックな備品の他、ルームエアコンも1台設置されているので、暑い日の湯上がりでも涼しく快適に着替えることができました。壁には「温泉でガンが消えた」という内容のレポートが貼り出されているのですが、真偽の程はいかに…。


 
お風呂は男女別の内湯のみですが、その浴室はスペースが広くて天井も高く、梁や柱、そして床材に用いられている重厚な味わいの石板タイルなど、諸々の部位が立派でして、和風旅館らしい風格が感じられます。なお洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基並んでいました。


 
浴槽は13~14人は同時に入れそうなほど大きなもので、縁は木材、槽内の側面はタイル、底には御影石系の石材が用いられています。そして白木の縁の上を、浴槽のお湯が絶えずオーバーフローしています。槽内には吸引口らしきものが確認できますが、稼働している気配はありません。加温しているにもかかわらず放流式の湯使いを実践しているのは立派ですね。


 
源泉温度が40℃に満たないため、2本ある太い竹筒より、加温されたお湯が浴槽へと供給されています。2本の筒からは若干温度が違うものの同じようなお湯が吐出されていましたので、てっきり同じ配管を分配させているだけかと思っていたのですが、筒の根元がある窓の外を覗いてみますと、2本はそれぞれ別の配管とつながっていました。両者にはどんな違いがあるのでしょうか…。

湯口の上には「保健所の指導により、ここでは飲めません」と記されていますが、飲泉については後述します。2本の竹筒から出るお湯は44~5℃まで加温されているのですが、湯船では41℃くらいに落ち着いており、はじめのうちは体への負担が軽い状態で入浴することができました。無色透明で芒硝感と石膏感を放つお湯は、いかにも硫酸塩泉らしいトロミとともにキシキシと引っかかる浴感を有し、さざなみ立つ湯面は虹色に輝き、湯船から出した指先は青白い光を放っています。41℃という湯加減ゆえに全身浴してじっくりと長湯したくなるのですが、硫酸塩パワーが発揮されるためか、気づけばボディーブローのように体へ負担がのしかかり、湯船から出たり入ったりを何度か繰り返すはめになりました。薄そうに見えて意外とパワフルなのです。



男女浴室の入口と並んで、飲泉場の設備が別室の中に設けられており、訪問時もタンクを持参した方が車で乗り付けて、お湯をたっぷり汲んで持ち帰っていました。


 
ステンレスの流し台には、塩ビのパイプから絶え間なく生の源泉がドボドボと落とされており、壁にはホルダーに入った紙コップも用意されていたので、コップに汲んでそのお湯を実際に飲んでみますと、石膏味と芒硝味がしっかりと口の中に広がってゆき、石膏臭が鼻へと抜けていきました。味・匂いともに浴槽のお湯よりはるかにはっきりしており、やはり加温されていない生源泉の方が質感は優れているようです。

この界隈は渋くてそれほど知名度が高くないにもかかわらず、クオリティの高い温泉がポツンポツンと点在していますから、意外と面白い湯巡りが楽しめますね。


ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉 35.8℃ pH8.4 蒸発残留物1173mg/kg 溶存物質1143.8mg/kg 
Na+:206.1mg(54.94mval%), Ca++:145.0mg(44.39mval%),
Cl-:62.7mg(10.83mval%), SO4--:667.5mg(85.02mval%),
H2SiO3:32.9mg,
加温あり

白石駅・白石蔵王駅より白石市民バス(土日祝は運休)の小原線で六角バス停下車、徒歩12分(約1km)
宮城県白石市小原字下戸沢湯沢山13  地図
0224-29-2620
ホームページ

日帰り入浴10:00~19:00 第4木曜定休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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