前々回の猿谷要著『ミシッシッピー川紀行』の中で紹介されていた本。すでに絶版となっているが、どうしても読みたくなって古本で手に入れた。原題は『The Keepers Of The House』( by Shirley Ann Grau,1965)。
この作品はアメリカ深南部の旧家(ハウランド家)を代々受け継いできた人々を描いた作品で、1965年ピューリッツァー賞小説部門を受賞している。物語は、語り手である「私」の祖父が愛した黒人・白人・インディアンの血をひく女性との日々が抒情的な文章で綴られ、やがてその事が地域に残る古い因習と衝突し悲劇的な結末へ繋がってゆく。
もちろんこれは小説であり、架空の物語だ。しかし、架空の物語だからこそ歴史と真実を表現し得ていることもあるだろう。
ブルースなどを基にした音楽をやっているので、自分なりにアメリカの風土や文化を勉強してきたつもりだ。が、こういう作品を読むと複雑なアメリカの様相が垣間見えて、やはり一筋縄ではいかない所だなと思わざるを得ない。こういうすぐれた作品が入手困難になっていることは、大きな損失と思う。幸いにして、今はインターネットというものがあり古本が見つけやすいが、それでも文庫化されていて手に入りやすければ、どんなにいいだろう。特に、アメリカの文学を学ぶ学生達には大切な作品と思われる。ただし、アメリカでは今でも出ているようで、わたしもネットで原書を注文した。到着は来週まで待たねばならないが、こういう時にはインターネットのありがたみが良く分かる。我々の学生時代は、洋書を取り扱っている書店まで出向き、探さねばならなかった。注文ともなれば、最低でも1ト月は待たねばならず、入荷後受け取りに行く必要もあった。
若い人たちには、ぜひ読んでもらいたい作品である。