文化逍遥。

良質な文化の紹介。

映画『セラフィーヌの庭』2008年フランス・ベルギー・ドイツ

2010年09月26日 | 映画
 24日の金曜日は休みをもらえたので、久々に岩波ホールに行って映画を観ることが出来た。
 実在の画家セラフィーヌ・ルイ(1864-1942)の半生を描いた『セラフィーヌの庭』。
家政婦をしながら天啓を受けたと信じて絵を描き続け、やがて画商ウーデと出会い援助を受けながら本格的に画業に励むことになるセラフィーヌ。が、やがて彼女の精神はバランスを失い現実の認識が出来なくなってゆく。67歳で精神病院に収容、そのまま78歳で没する。
 もし画商に出会うことなく、家政婦を続けながら絵を描いていたなら、彼女は精神のバランスを崩さずにいられたのではないか・・・そう思うと切なくなった。芸術家達は、ときに売れていくことで苦しむことも多い。薬物や、アルコールに依存して苦しむ人も少なくない。制作そのものに苦しむ人、売れる作品と自らの理想とする作品のギャップに苦しむ人。様々だが、本来人のためにある芸術作品に苦しめられるのは、あまり良いこととは思えない。

 帰り道、お茶の水の楽器街を歩いてきた。以前よりさらに店舗が増えて、異常な過熱ぶり。こんなに楽器店がひしめいていて商売になるのか?あまりに多すぎて何がいいのかどこが安いのか、かえって迷ってしまう。一生使うかもしれない楽器を取り扱うのだから、もう少し冷静な商売をしてほしいと感じた一日であった。


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やっと秋

2010年09月19日 | 音楽
 狂ったような暑い夏がようやく終わり、やっと秋を感じさせる風が吹き始めた。最近は、古い日本の歌曲をウクレレでポロンポロンと弾いてメロディーや歌詞を噛みしめたりしている。その中であらためて感じることは、 日本の歌曲には季節を感じさせてくれるものが多い、ということ。
たとえば今の季節なら、『故郷の空』

夕空はれて あきかぜふき
つきがげ落ちて 鈴虫なく

もっともこの歌は、メロディーはスコットランドの民謡だということだ。作詞は大和田建樹。
さらに、『赤とんぼ』

夕やけ小やけの 赤とんぼ
負われて見たのは いつの日か

秋の夕暮れが目に浮かぶ。作詞は三木露風、作曲は山田耕筰。
わたしは長い間[追われてみた]と思い込んでいて、草原でたくさんの赤とんぼに追われて走りまわっている情景を歌ったものと思い込んでいたのだが、譜面は[負われて見た]なので誰かに背負われて見ていたことになるわけだ。
三番の歌詞、

十五でねえやは 嫁に行き
お里のたよりも 絶えはてた

婚姻制度への配慮から、戦後の音楽の教科書では削除されたという。

時代を感じさせてくれるすぐれた歌曲が多くあることに気づかされる今日この頃であります。



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