文化逍遥。

良質な文化の紹介。

柳家喜多八師匠を悼んで

2016年06月28日 | 落語
 先月、5月17日、柳家喜多八師匠が亡くなった。66歳だった。
いつ頃のことだったか確かな記憶は無いが、かなり以前に国立演芸場で高座に接したことがあった。けっして派手さは無いが、飄々とした中におかしみを含み、独特の味わいのある噺家さんだった。これを落語の符牒で「フラ」というが、持って生まれたもので、これだけは真似が出来ない。ある意味、代え難い噺家さんだった。最近は、若い人たちに落語の人気が出てきて、演芸場などでは開場前に列が出来ることもあるらしい。スマートフォンにイヤホンをつないで音楽などを聞くのが普通になった時代。落語に限らず、生の良さが再認識されるのは良いことと思う。

 喜多八師匠は小三治師匠のお弟子さんということだが、次代を担うべき弟子に先立たれた師匠の気持ちも察して余りある。ご冥福をお祈りしたい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2015年トルコ映画『裸足の季節』

2016年06月24日 | 映画
 6/23木曜メンズデイの千葉劇場にて。トルコの方田舎で、両親を亡くし祖母の家で暮らす5人姉妹の物語。


 
 古い因習が残る地方都市。常にその枠外へ出ようとする自由闊達な女の子たち。ついには部屋から外に出ることを許されなくなってしまい、年長の娘から順に結婚させられ、3女は精神のバランスを崩し行きずりの男と関係を持ち遂には自殺してしまう。4女の婚礼の夜、5女のラーレはイスタンブールへの逃亡を決行するが・・・。

 メガホンを取ったのはデニス・ガムゼ・エルギュヴェンという女性で、これが初の監督作品という。リーフレットには「少女たちの反逆の物語」と謳われているが、私はそうは観なかった。悪しき因習に束縛された女性の苦しみを、映画を通じて訴えているように思えた。抑圧された生あるいは性は、暴走し最悪の場合自分にその刃が向いてしまう。

 全編を通じ、少女達の人格を守ろうとする人物は2人しか出てこない。イスタンブールに転勤していった女性教師と、ラーレの逃走を最終的に助けることになるトラックの運転手。ただ、故意かはわからないが、少女たちを拘束するものがあくまで悪しき慣習であり、イスラム教の教えではないように描いているように思えた。写真を見てわかるように、少女達は髪や肌をかなり露出している。コーランには、女性は顔と手以外は露出すべきではない旨の記述があると聞くが、映画の中でそれについて厳しく注意する人物は出てこない。そのあたりが興味深いところだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

着圧ハイソックス

2016年06月19日 | 健康・病気
 ふくらはぎに血管がボコっと浮き出て目立つようになってきた。これは「下肢静脈瘤」という病気らしく、血管の中にある逆流を防止する弁が機能しなくなって起こると言われている。日本人では3人に1人が罹り、加齢のほか立ち仕事の人や、女性では出産により発症することもあるという。命に関わるような病気ではないが、長く歩くと下肢がだるいし少しむくむようになってきた。

 若い頃ずっと立ち仕事をしていたからなあ。その影響もあるのかもしれない。長く使っていると体も機能が落ちてくる。まあ、仕方ないけどね。女性などは、スカ-トを着用して脛から下が露出した時に見た目が悪いので、外科的処置をして治す人も多いらしい。保険が適用され、今ではレーザーによる技術が進んで安全に短時間で治療出来るらしい。最近では、「血管外科」という専門の外来を持つ医院も増えてきた。いずれは、そういった治療を受けなければならないかもしれないが、取りあえずインターネットでふくらはぎに圧を加える「着圧ハイソックス」というものを買ってみた。今回は初めてなので、締め付けの度合いがそれほど強くない膝までのものを選んでみた。医療用になると「弾性ストッキング」といい、かなり締め付けが強くなるが、それを使うには医師などによる指導が必要になる。

 期待していなかったが、使ってみるとこれがけっこう効く。付けた感じも悪くないし、歩いても疲れにくく、むくみも改善した気がする。ただ、これから暑くなると一日中着けているのは辛いかも。

 
 しかし、昨日は暑かった。千葉でも32度、北関東では35度を越えて猛暑日を記録した。この時期の暑さはこたえるなあ。
今年は関東のダムの貯水量が少なく、10%の取水制限がすでに始まっている。農業などへの影響も懸念されるが、暑くて水が無い生活は厳しいものがある。こうなると、例年では鬱陶しい梅雨の雨も恋しくなるから勝手なもんだ。せいぜい、今から節水に心がけたい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

千葉市美術館『ふたつの柱―江戸絵画/現代美術をめぐる』

2016年06月15日 | アート・文化
 千葉市の中央区役所7階8階にある市立美術館に行ってきた。





 今は、同館所蔵の江戸期の絵画・版画と現代美術の展示。入場料200円は安い。
特に江戸絵画は良かったなあ。若い頃はあまり魅力を感じなかったが、今見ると大胆な中にも繊細さがあり、線の1本1本に魂が込められているようで引き込まれた。団扇なども展示されていたが、江戸期の庶民は今では美術館に展示されているようなものを普段の生活の場で使っていたのだから、ある意味贅沢だ。版画などは襖の補修に使われることも多かったらしい。量は少なくても人の手が掛かった物があることは、精神の安定に寄与する部分が多いように思うが、どうだろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画『ルーム』2015、アイルランド・カナダ、

2016年06月11日 | 映画
 6/9、木曜メンズデイの千葉劇場にて。



監督レニー・アブラハムソン。原作・脚本はアイルランドのダブリン生まれで現在はカナダ在住のエマ・ドナヒューで、そのため制作国にアイルランドが入っているらしい。

 北米のとある地方。主人公の女性は高校生の時、男に誘拐され、以後7年間小さな天窓ひとつしかない狭い部屋に幽閉される。
週に一度食糧を運び、女性を抱いては帰る男。結果、生まれた男の子が今は5歳になる。二人は、決死の覚悟で脱出を試み家に戻るが、父母は離婚しており、高校生まで暮らした家にはすでに母の新たな恋人がいる。父は誘拐犯の子である孫を正視出来ず、逃げるように去ってしまう。世間は好奇の眼差しを向け、二人とも安心して普通の生活をすることが出来ない。そして、男の子ジャックは、「あの部屋に帰ろう」と言い出す。主役の女性役はブリー・ラーソン、子役はジェイコブ・トレンブレイ。この二人の演技は秀逸。

 この映画を見ていて、安部公房の小説『砂の女』を思い起こした。やはり、1969年に安部公房本人の脚本により映画化されている作品だが、テーマに近いものがあるように感じたのだ。拘束と自由の狭間で揺れ動く実存。拘束の中にいれば自由は無いが選択に苦しむことも無い。行動の自由があれば何でも出来るが、その責任は選択した者の肩に全て掛かってくる。
 調べてみたところ、原作の訳書も2011年に講談社から『部屋』として出ている。読んでみたくなった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中川右介著『戦争交響曲―音楽家たちの第二次世界大戦』朝日新書2016刊

2016年06月06日 | 本と雑誌
 最近は本を買うことがほとんど無く、もっぱら図書館で借りての読書だが、どうしても手元に置きたい本や早く読みたいものも稀にある。今回買って読んだのもそんな本で、この4月に出たばかりの新書だ。



 帯を見ただけでクラッシック音楽が好きな人ならおよその内容が想像できるかもしれない。わたしはと言えば、クラッシック音楽には疎いのだが、第二次大戦前後のヨーロッパで音楽家達がどのような行動を取ったのかは興味深いところ。独裁者の恐怖政治の中でミュージシャンはどんな行動を取るべきなのか、重い選択が演奏家や指揮者に迫られた、そんな時代。時の政府に加担した者、あるいは演奏そのものを拒否してパルチザンに加わった者。様々な演奏家あるいは指揮者100人ほどがこの本には取り上げられている。時代のうねりの中で、結局は時の政府に音楽が利用され消耗してゆく姿が描かれていて、400ページ近いが引き込まれて読んだ。

 著者は音楽誌などの編集・発行に長く携わった人で、多くの史料に当たり1冊の本にまとめる編集力には頭が下がる思いだ。全体に、記録文学というよりは、「史実に基づく小説」として読んだ方が良いように感じた。

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

柳家小三治独演会

2016年06月01日 | 落語
 5/31(火)夜、JR津田沼駅前にある習志野文化ホールで柳家小三治師匠の独演会を聴いた。

 昨年暮れにも友人の招待で四街道で聴いたが、今回も同じくご馳走になってしまった。なんという贅沢。ただただ感謝。
習志野文化ホールは今回初めて訪れた。駅からすぐの所だし、1400余りの座席を持つきれいなホールだった。特に、パイプオルガンが据え付けられているのには驚いた。聞くところによると、パイプオルガンは維持管理にかなりな経費が掛かるという。なので、きちんとした整備でいつでも演奏可能な状態にしておくことは簡単ではないらしい。

 それはそれとして、今回の演題は『時そば』と『転宅』。どちらも良い出来だったが、さすがに長演はきつそうだった。ファンとしてはいつまでも元気に口演を続けてもらいたいが、持病もあるとのことでお体も大切にしてもらいたい。今回、休憩の後に出た(落語の符牒で「食いつき」というらしい)三味線端唄の「柳家そのじ」という人が良かった。普段は下座さんを勤めているというが、声もいいし、三味線も音程がしっかりしていて巧み。すこし調べてみたら芸大の邦楽科出身とのこと。寄席の客席からは見えない所で普段演奏していて、裏方にしておくのは惜しい人だ。

おまけの写真。暮れなずむ津田沼の街をホールの前の広場から携帯で撮影。歩道橋の奥がJR津田沼駅。写真より実際は暗かったので、少しブレ気味。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする