葉室 麟氏は、1951年生まれ。地方紙の記者などを経て2005年頃から本格的に作家活動に入ったという。遅いデビューと言えるだろうが、人の「想い」を表現するには、どうしてもその位の年齢になるまで待たねばならないような気もする。今年2012年の146回直木賞を受賞し、最近注目されている作家のひとりでもある。が、個人的には文学賞とか学会の賞とか「OO賞」と名の付くものは、あまり気にしない、というか信用してない。
わたしの個人的な思い入れだが、すぐれた作家、あるいは広く表現に関わる研究者には、賞などと無縁な人の方が多い。
たとえば、後世に残る漢字の研究をなした白川 静氏。学閥から外れていた為、評価されたのは最晩年だった。長生きされたから良かったが、下手をすると死後になってから認知されていたことになりかねなかった。もう一人、わたしの好きな作家で、ほとんどの作品を読んでいる宮城谷 昌光氏。やはり直木賞作家だが、むしろ直木賞をとる以前の初期の作品の方が優れた物が多い。それら初期の作品は、当初出版することにすら難儀したという。はっきり言って、編集者や各賞の選考委員の読解カ・選考基準に疑問を抱かざるを得ない。
この小説は、江戸時代(幕末)を背景にしてミステリーの要素を加えたような作品。スピード感があり一気に読ませてしまう。感情表現にもすぐれていると感じた。が、気にかかったのは登場人物に作者の理想が投影されすぎている感じがしたことだった。ひとつの作品に仕上げていく上で、それは仕方のないことなのかもしれないが、特に女性の描き方に男の理想が加わり過ぎているような・・・もうすこし、人間臭いほうが個人的には良いと思うのだが、そのあたりは読者の好みということだろう。
最近は本を置く場所にも困っているような状態で、仕事も少なくなってきてフトコロもさみしいし、単行本は買わないようにしている。が、やはり、こういう小説を真新しい本で一枚一枚ページをめくっていくと「やっぱり、いいなあ」と感じる。さらに、読後感が良かった作品だったことも付け加えておきたい。
というわけで、もう一冊買ってしまった。
こちらの方が、よりミステリーの要素が強い感じの、やはり幕末を舞台にした作品。ちなみに、この『蜩ノ記』が直木賞受賞作。
作者の力量を感じさせ、時代小説の醍醐味を味わえる。また買ってしまいそう。ううっ、懐に風が吹く。
こういった作品を読むと、どうしても故藤沢周平氏の時代小説を想いうかべてしまう。書いた人にとって、それは不本意というか、比較される事は迷惑なことかもしてない。それでも、藤沢作品の後を襲う事が出来るのはこの人しかいないのではないか、という期待がある。違うのは、感情表現。つまりは「思い入れ」かな。時代、街並み、人と人とのあり方、みな想像で描いていくわけだから作家の思い入れがそこに色濃くあらわれる。理想と挫折。その中で「意志」を描き切れれば達人だ。
宮部みゆき氏にも江戸時代を舞台にしたミステリー『孤宿の人』という佳作がある。が、どうも女性の描く男は不自然さが残る。高村薫氏など他のすぐれた女性作家の作品も読んだが、「こんな男はいねーなあ」と感じることが多々あった。逆に、男が描く女は、女性から見てどんな感じなのだろうか。
わたしの個人的な思い入れだが、すぐれた作家、あるいは広く表現に関わる研究者には、賞などと無縁な人の方が多い。
たとえば、後世に残る漢字の研究をなした白川 静氏。学閥から外れていた為、評価されたのは最晩年だった。長生きされたから良かったが、下手をすると死後になってから認知されていたことになりかねなかった。もう一人、わたしの好きな作家で、ほとんどの作品を読んでいる宮城谷 昌光氏。やはり直木賞作家だが、むしろ直木賞をとる以前の初期の作品の方が優れた物が多い。それら初期の作品は、当初出版することにすら難儀したという。はっきり言って、編集者や各賞の選考委員の読解カ・選考基準に疑問を抱かざるを得ない。
この小説は、江戸時代(幕末)を背景にしてミステリーの要素を加えたような作品。スピード感があり一気に読ませてしまう。感情表現にもすぐれていると感じた。が、気にかかったのは登場人物に作者の理想が投影されすぎている感じがしたことだった。ひとつの作品に仕上げていく上で、それは仕方のないことなのかもしれないが、特に女性の描き方に男の理想が加わり過ぎているような・・・もうすこし、人間臭いほうが個人的には良いと思うのだが、そのあたりは読者の好みということだろう。
最近は本を置く場所にも困っているような状態で、仕事も少なくなってきてフトコロもさみしいし、単行本は買わないようにしている。が、やはり、こういう小説を真新しい本で一枚一枚ページをめくっていくと「やっぱり、いいなあ」と感じる。さらに、読後感が良かった作品だったことも付け加えておきたい。
というわけで、もう一冊買ってしまった。
こちらの方が、よりミステリーの要素が強い感じの、やはり幕末を舞台にした作品。ちなみに、この『蜩ノ記』が直木賞受賞作。
作者の力量を感じさせ、時代小説の醍醐味を味わえる。また買ってしまいそう。ううっ、懐に風が吹く。
こういった作品を読むと、どうしても故藤沢周平氏の時代小説を想いうかべてしまう。書いた人にとって、それは不本意というか、比較される事は迷惑なことかもしてない。それでも、藤沢作品の後を襲う事が出来るのはこの人しかいないのではないか、という期待がある。違うのは、感情表現。つまりは「思い入れ」かな。時代、街並み、人と人とのあり方、みな想像で描いていくわけだから作家の思い入れがそこに色濃くあらわれる。理想と挫折。その中で「意志」を描き切れれば達人だ。
宮部みゆき氏にも江戸時代を舞台にしたミステリー『孤宿の人』という佳作がある。が、どうも女性の描く男は不自然さが残る。高村薫氏など他のすぐれた女性作家の作品も読んだが、「こんな男はいねーなあ」と感じることが多々あった。逆に、男が描く女は、女性から見てどんな感じなのだろうか。