文化逍遥。

良質な文化の紹介。

葉室 麟著『散り椿』2012年角川書店、『蜩ノ記』2011年祥伝社

2012年03月29日 | 本と雑誌
 葉室 麟氏は、1951年生まれ。地方紙の記者などを経て2005年頃から本格的に作家活動に入ったという。遅いデビューと言えるだろうが、人の「想い」を表現するには、どうしてもその位の年齢になるまで待たねばならないような気もする。今年2012年の146回直木賞を受賞し、最近注目されている作家のひとりでもある。が、個人的には文学賞とか学会の賞とか「OO賞」と名の付くものは、あまり気にしない、というか信用してない。
 わたしの個人的な思い入れだが、すぐれた作家、あるいは広く表現に関わる研究者には、賞などと無縁な人の方が多い。
たとえば、後世に残る漢字の研究をなした白川 静氏。学閥から外れていた為、評価されたのは最晩年だった。長生きされたから良かったが、下手をすると死後になってから認知されていたことになりかねなかった。もう一人、わたしの好きな作家で、ほとんどの作品を読んでいる宮城谷 昌光氏。やはり直木賞作家だが、むしろ直木賞をとる以前の初期の作品の方が優れた物が多い。それら初期の作品は、当初出版することにすら難儀したという。はっきり言って、編集者や各賞の選考委員の読解カ・選考基準に疑問を抱かざるを得ない。

Tiritubaki
 この小説は、江戸時代(幕末)を背景にしてミステリーの要素を加えたような作品。スピード感があり一気に読ませてしまう。感情表現にもすぐれていると感じた。が、気にかかったのは登場人物に作者の理想が投影されすぎている感じがしたことだった。ひとつの作品に仕上げていく上で、それは仕方のないことなのかもしれないが、特に女性の描き方に男の理想が加わり過ぎているような・・・もうすこし、人間臭いほうが個人的には良いと思うのだが、そのあたりは読者の好みということだろう。

 最近は本を置く場所にも困っているような状態で、仕事も少なくなってきてフトコロもさみしいし、単行本は買わないようにしている。が、やはり、こういう小説を真新しい本で一枚一枚ページをめくっていくと「やっぱり、いいなあ」と感じる。さらに、読後感が良かった作品だったことも付け加えておきたい。

というわけで、もう一冊買ってしまった。

Img
こちらの方が、よりミステリーの要素が強い感じの、やはり幕末を舞台にした作品。ちなみに、この『蜩ノ記』が直木賞受賞作。
作者の力量を感じさせ、時代小説の醍醐味を味わえる。また買ってしまいそう。ううっ、懐に風が吹く。


 こういった作品を読むと、どうしても故藤沢周平氏の時代小説を想いうかべてしまう。書いた人にとって、それは不本意というか、比較される事は迷惑なことかもしてない。それでも、藤沢作品の後を襲う事が出来るのはこの人しかいないのではないか、という期待がある。違うのは、感情表現。つまりは「思い入れ」かな。時代、街並み、人と人とのあり方、みな想像で描いていくわけだから作家の思い入れがそこに色濃くあらわれる。理想と挫折。その中で「意志」を描き切れれば達人だ。
 宮部みゆき氏にも江戸時代を舞台にしたミステリー『孤宿の人』という佳作がある。が、どうも女性の描く男は不自然さが残る。高村薫氏など他のすぐれた女性作家の作品も読んだが、「こんな男はいねーなあ」と感じることが多々あった。逆に、男が描く女は、女性から見てどんな感じなのだろうか。



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梅にメジロ

2012年03月22日 | 日記・エッセイ・コラム
梅に鶯ならぬ、メジロ。
毎年この時期に、我が家の庭にある梅の蜜を吸いに来る。

Meziro2

Meziro

Img_0728

鶯色と言うと、たいがいはこのメジロの色を思い浮かべるが、鶯はもう少し暗い感じの緑になる。
あとは、ヒヨドリも来る。
以前は山間部でしか見られなかった鳥が、最近では都市部でも見られるようになってきた。



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PARKER-Ingenuity

2012年03月16日 | 日記・エッセイ・コラム
この冬は寒かったのでだいぶ遅れたが、やっと庭の梅が咲き出した。
Ume
季節はめぐる。

一昨日、14日夜の地震はけっこう揺れた。銚子などでは建物が壊れたり、液状化が起きたりしたという。
千葉市では震度4を記録。新潟の友人からお見舞いのメールが届いたが、ウチでは幸い被害は無かった。
新潟では、上越市の地滑りがトップニュースになっているという。

千葉県の東京湾沿岸では、特に再液状化が起きやすくなっているということで、そこに住む人たちは不安な日々を送っている。
ウチは海岸からはかなり離れており、少し高いところなので液状化の心配はない。
液状化しているのは、おもに埋め立てで造成された地域だ。
わたしが子どもの頃は潮干狩りに行ったところで、引き潮時には何キロも砂地が続く海岸だった。
開発に無理があったような気がするが、どうだろう。
実際、古くから千葉に住む人で海辺の埋め立て地に移り住んだ人を、わたしは知らない。
―以上、閑話休題


さて、本題。
けっきょく買いました。パーカーのインジェニュイティー。

Img_0700

買ったのはインジェニュイティーの「スリム・ブラウンラバーPGT」というタイプ。
名前はスリムなのだが隣の鉛筆と比べてみて判るようにけっこう太い。標準型はさらに一回り太くなり、長時間書き続ける人にはそちらが良いかもしれない。
ペンを持つ角度は人によってマチマチだが、ペン先がそれに合わせて変わってゆくように設計されているという。
少し使ってみた感じでは、書ける幅はあるものの、やはりカタログにあるとおり60度が適正と感じた。

このペンの最も気に入っている点は、インクの乾きが早く、ニジミやカスレがほとんど無いこと。

万年筆の最大の弱点は、実はニジミやカスレやすいことにある。
紙によってはすぐににじんでしまうし、また、横書きならまだしも縦書きの場合は書いたすぐ後に手が文字の上をなぞることになるのでカスレやすいのだ。
このペンは書いたすぐ後に指が触れてもかすれないし、紙を選ばない。

新しいものと古いもの、使い較べてみるのも又一興。


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あれから一年

2012年03月10日 | 日記・エッセイ・コラム
今年は気温が低いため庭の梅の木もまだつぼみがかたい。
例年ならハラハラと花びらが舞っているのに。

昨年3月11日の震災からまもなく一年。
あの日わたしは年度末の仕事を午前中に終え、お茶の水駅前の食堂で昼食をとり、丸善書店で買い物をした後、仕事で使う道具など重い荷物を抱えていた為早めに帰途に着いた。
千葉の自宅に帰宅したのが午後2時頃。
その40分ほど後に大きな横揺れに襲われた。
津波や液状化の被害は無かった。

首都圏では交通機関がマヒし、帰宅困難者が主な駅にあふれた。
自分が運が良かったとは思わない。
もし、荷物を抱えておらず、母が介護を必要とする状態でなければ、わたしはお茶の水で書店や楽器店をめぐり岩波ホールで映画でも観ていただろう。
たまたま、帰宅しなければならない偶然が重なったにすぎない。
あと1時間帰宅が遅れたら最悪の場合電車の中に閉じ込められ、線路上を最寄りの駅まで歩くはめになっていただろう。
そして、電車が動きだす翌日まで一晩さまよわねばならなかったろう。

そして、福島の原発事故。
テレビ出演していた専門家たちの「だいじょうぶです」。
東電の技術者たちの「想定外」。

必死の形相の被災地の人々。

最近明らかになったことだが、福島第一原発の4号機は最悪の状態だったという。
プールの水の循環が止まったため蒸発して核燃料が溶け出す可能性が大きかったらしい。
東電では、首都圏にまで避難指示を広げる事態を想定していたという。
その場合、少なく見積もっても避難者は2000万人は出る計算になる。

仮にそうなったら、
わたしは、寝たきりの母をどうすればいいのだろうか。
原発近くの病院などでは対応が遅れ、一時避難所や避難先に向かうバスの中で亡くなった方も多くいたという。
また、浪江町では津波の後、放射線量が上がったため取り残された人の救助活動が出来なかった為、助けを待ちながら餓死した人がいた事も最近わかってきた。

割り切れないことばかりだ。

生活自体を見直して、環境調和型の経済システムにしてゆく以外、未来は見えてこない。

江戸時代に戻る必要は無い。
ある試算によると、CO2を抑えるために発電や車の利用等を抑えても、自然エネルギーをうまく利用すれば1980年代頃の生活水準は維持できるという。
携帯電話など無い時代だったが、今思い出してもそれほど不便な社会だったとは思えない。

やれることから、こつこつとやっていこう。


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筆記具

2012年03月02日 | 日記・エッセイ・コラム
母の具合があまり良くないので、今年度の仕事は早めに上がらせてもらった。
関係各位の皆さんにはいつも我がままを聞いてもらっている。ありがたいことで、深く感謝したい。

昨日は、買い物がてら丸善にいってパーカーの新しいペンを試してきた。
字なんか下手くそなくせに筆記具には妙なこだわりがある。
いつもは仙台の大橋堂という、職人さんが作っている軸がエボナイト(硬質ゴム)の万年筆を愛用している。下の写真がその大橋堂の万年筆。

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万年筆はとても良い筆記具なのだが、扱いには慣れがいる。ペン先のインクが乾くとインクの流れが悪くなって文字がかすれてくるので手入れを怠れない。また、ボールペンのようにペンを立てて書くには不向きだし、複写に慣れている人は筆圧が高くなっているので万年筆のペン先に負担がかかり過ぎてしまう。万年筆をそのような状態で書き続けていると、最悪の場合はペン先が変形してしまうのだ。

まあ、すべて道具というものには手入れが不可欠で、コツがいる。が、常時使わなくてもサッとだして滑らかにかける、そんなペンがあればいいと思っていたのでパーカーの新しいペン「インジェニュイティ Ingenuity」には驚かされた。
万年筆と水性ボールペンの中間くらいの性質で、書ける角度も60度から45度くらいの幅があり、筆圧もあまり気にすることがなく、扱いやすいし書き味もとても良い。定価は2万円ほどで、リフィルは千円。ちょっと高いが、書く機会が多い人にはそれだけの価値があると思った。ただし、わたしは財布と相談してあきらめたんだけど・・・ネットでは14000円位なので狙ってみるかなあ。



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