文化逍遥。

良質な文化の紹介。

わたしのレコード棚ー『Piano Rags By Scott Joplin』

2022年12月28日 | わたしのレコード棚
 かなり以前のことになるが、ギターを弾く知人とラグタイムのことを話していて・・「スコット・ジョプリンのラグタイムは、元々はピアノ曲なんだよ」と言ったところ「えっ!そうなんですか」と驚かれたことがある。当然知っていると思って・・どちらかというと確認のため言ったので、わたしの方がもっと驚いた。
 ピアノのために書かれた曲をギター用に編曲するのは無理がある。が、多くのギターリストがこれに挑戦し、優れた演奏・録音を残している。それは、ギターという楽器の面白さや特性を生かし、可能性を広げたものだった。それでも、やはりピアノの広い音域を活かした演奏を聴くと、独特のハーモニーおよび曲の構成はピアノのための曲なのだな、と感じる。作曲者の意図を汲み取るためには、やはりオリジナルの楽譜に基づいた楽器による演奏が一番良いようだ。ギター曲の「アルハンブラの思い出」や「愛のロマンス(禁じられた遊び)」をピアノで演奏しても違和感が残るようなものだろう。

 下に紹介したLPは、ジョシュア・リフキン(Josyua Rifukin)というクラッシックのピアニストが1970年頃に録音したスコット・ジョプリン(1868~1917)のラグタイム曲集で、ノンサッチ(Nonesuch)というクラッシックのレーベルから出たものだ。日本では、ワーナーパイオニアが出して、日本語解説などが付いている。ヴォリューム1~3の3枚で、1枚に8曲ずつ入っており、合計金額24曲。わたしの愛聴盤でもある。


 NonesuchのLP、H-71248。下は裏面で、右端のメガネの人がジョシュア・リフキン。熟練を感じさせる演奏だが、リフキンは1944年ニューヨーク生まれというから、この録音時にはまだ20代半ばだったことになる。




同じく、Hー71264。


H-71305。

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わたしのレコード棚ーブルース155『American Folk Blues Festival '70』

2022年12月21日 | わたしのレコード棚
 ブルースのライブを収めた録音は多いが、わたしの聴いた中で特に優れたものを紹介しておきたい。


 1970年11月16日、ドイツ(当時の西ドイツ)のフランクフルトで「American Folk Blues Festival」と銘打って行われたライブを収録した2枚組LPで、ドイツのL+R(Lippmann & Rau)というレーベルの42.021。

 当時のブルースシーンを代表するメンバーが選ばれており、しかも、それぞれが素晴らしい演奏をしている。客も集中して聴いており、反応も良かったように聞こえる。メンバー構成は以下のとおり。
 シカゴから、ベースのWillie Dixon(ウィリー・ディクソン)を中心として選抜されたと思われるChicago Blues All Stars。フォークブルースとして、ニューヨークで主に活動していたBrownie McGhee & Sonny Terry(ブラウニー・マギー&サニー・テリー)。カントリーブルースでは、ミシシッピーのベテランBukka White(ブッカ・ホワイト)。そして、当時すでにヨーロッパに移住して演奏活動をしていたピアニストのChampion Jack Dupree(チャンピオン・ジャック・デュプリー)。「綺羅星の如く」というのが相応しいメンバーだ。




 ジャケットの内の写真。上段左から右に、Willie Dixon、Bukka Whiteが2枚、Sonny Terry、Brownie McGhee。下段左から右に、Shakey Horton(ハーモニカ)、Champion Jack Dupree、Lee Jackson(ギター)、Lafayette Leak(ピアノ)、Clifton James(ドラムス)。

 普段は、客が酒や会話を楽しみながら聞いているクラブなどで演奏しているミュージシャン達も多く、この日の様にホールに多く人が集まり、集中して真剣に聴いてくれる客がいる前での演奏に、皆気が入っていたようだ。また、遠くヨーロッパまで来て、英語を話さない人々が、自分達の音楽を理解してくれていることの喜びが演奏に出ているように感じられる。調べてみたところ、今ではCDも品切れ状態で、再発されるか分からず、MP3でネットで購入出来るのが限度らしい。しかし、この様な、優れた録音は多くの人に圧縮ファイルでないメディアで、聴いてもらいたいものだ。

 余談になるが、このLPを聞くと、ドイツの録音機材及び音響技術の高さを感じる。マイクなどは、現在でもドイツ製の「AKG(アーカーゲー)」、そして「ノイマン」が録音スタジオ等でよく使われる。ノイマンのマイクは、ものによってはプレミアが付いて、数百万円もするマイクもある。そのドイツの音響技術の高さの一因に、ヒットラーが関係しているという説がある。ナチス政権の頃、大衆を前にした演説で人々を煽り立てる為に、ヒットラーは高性能なマイクの開発などを技術者に命じたというのだ。科学技術は戦争のたびに進歩していったという悲しい歴史があるが、音響技術も例外ではなかったのだろうか。

 過去の歴史はどうあれ、現在の優れた音響製品が、人々の心の安定と平和のために利用されることを祈りたい。

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わたしのレコード棚ーブルース154『Negro Songs Of Protest』

2022年12月14日 | わたしのレコード棚
 古いレコードを聴き直していて、興味深いことに気づいたので書いておこう。

 下の写真は、ROUNDERレーベルのLP4004『Negro songs of protest』の表と裏。



 写真の右上でオープンテープデッキを操作しているLawrence Gellert(ローレンス・ゲラート)という人が、1933年から1937年にかけてサウスカロライナやジョージアでフィールド録音した「民間伝承された黒人の(抵抗)歌」を集めた名盤。この中に『On a Monday』という歌が収められている。その歌詞の冒頭のフレーズと拙訳。

『On a Monday』
It was on a Monday (月曜日・・)
A Monday I was arrested, yes lord (月曜日に逮捕されてしまったんだよ、神様)
And a Tuesday (そして、火曜日・・)
A Tuesday I was trialed, mmmm hmmm (火曜日には裁判にかけられちまった)
And on a Wednesday (そして、水曜日・・)
A Wednesday I got my long sentence, good god  (水曜日には長い長い刑期を言い渡されたよ、神様)
And on a Thursday (そして、木曜日・・)
A Thursday I was Raleigh, bound (木曜日にはローリーの州刑務所行きさ)
・・・・

 この歌が、奴隷制時代のものならば「逮捕」されたのは所有者からの逃亡だったかもしれず、あるいは、公民権確立以前のものなので「白人専用施設」を使ったためだったかもしれず・・要は現在では犯罪にならなかった理不尽な理由で捕まったことを示唆しているように感じる。このことを踏まえた上で、モダンブルースのスタンダードとも言える、T ・ボーン・ウォーカーの『STORMY MONDAY 』の歌詞と比較してみたい。

『STORMY MONDAY』
They called it stormy Monday (月曜日は嵐の中にいるような気分だ、と人は言う)
but Tuesday is as just as bad (でも、火曜も同じようなもんだ)
They called it stormy Monday (月曜日は嵐の中にいるような気分)
but Tuesday is as just as bad (でも、火曜も同じようなもんさ)
Wednesday is worst (水曜日は最悪で)
and Thursday's so sad (木曜はとても哀しい気分だ)

The eagle flies on Friday (金曜に給料をもらい)
Saturday I'll go out to play (それを持って土曜に遊びに出かける)
The eagle flies on Friday (週末に給料をもらって)
Saturday I'll go out to play (それを持って土曜に遊びに出かけるんだ)
Sunday I'll go to church  (日曜には教会に行って)
and I'll kneel down to pray (膝をおって祈る)

Lord have mercy, Lord have mercy on me (慈悲深い神様、お願いします)
Lord have mercy, My life is in misery (俺は気分が沈んで苦しんでます)
You know I'm crazy 'bout my baby (彼女がいなくなって、心がおかしくなりそうです)
Lord, please send my baby back on to me (神様、彼女を戻してください)

 こちらも拙訳で、簡単な意訳を付けておいたが、金曜の歌詞に出てくるThe eagle イーグル(鷲)は米ドル札に描かれている図柄で、給料が週払いのアメリカで週末に給料をもらったことを意味している。

 『ストーミー マンデー』はブルースセッションでやる人も多く、ジャズの要素を盛り込んだコード進行は「ストマン進行」とも呼ばれ、エレキギターでモダンブルースを演奏する人には必須とも言える曲になっている。しかし、そんなモダンな曲も、歴史的な背景があったのだと感じざるを得なかった。特に、詩の内容が時代の変遷とともに「世俗的」になっている。それが良いか悪いか、は置くとして、歌詞の背景を知っておくことも悪くはないだろう。

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「ライト」ブルースセッション、2022.12.3.

2022年12月07日 | ライブ
 3日(土)の「ライト」ブルースセッションに参加してきた。コロナ感染者数も、さほど増加していなかった為か、けっこう参加者が多かった。わたしは、早めに上がってきたが、盛り上がっていたようだ。

 この日は、フレットの無いテレキャスターを使った。


 ボディは若い頃に買ったグレコのテレキャスター。その後、新宿を歩いていた時に見つけたフレットレスネックを購入。千葉市稲毛にあった「Guitar Violence」というすごい名前のカスタムショップに持ち込み、塗装とセットアップをしてもらったもの。オープンチューニングにして、スライド奏法で演奏することになる。使えるキイは限られてくるのでワンパターンになりやすく、またバッキングなどには使いづらい。さらに、どうしても音程に正確さが欠けやすい。そこを克服できれば、インパクトのある演奏が出来るのだが、なかなか人前で演奏するレベルに達しない。
 それでも、練習を重ねて、多様なキイあるいは演奏パターンに対応できるようになるまで続けていきたい。

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