文化逍遥。

良質な文化の紹介。

2017年アメリカ映画『魂のゆくえ』

2019年04月28日 | 映画
 4/27(土)、千葉劇場にて。監督・脚本ポール・シュレイダー、イーサン・ホーク主演。





 原題は、『First Reformed』。この「Reformed」は最初のRが大文字で、改良とか改築の意味ではなく宗教的な意味となる。特にプロテスタントのカルヴァン派の教会を意味しており、原題を直訳すれば「第一改革派教会」といったところ。映画の内容から、あえて意訳すると「初めての魂の変革」とでもなろうか。邦題も苦心の跡が見られ、悪くは無い。

 ニューヨーク州の北部にある小さな教会「First Reformed Church(第一改革派教会)」。今は信者も少なく、歴史的に保存された建物を見学に来る人達に土産物などを売っている。牧師のトラー(イーサン・ホーク)は、心に傷を負い、今はその教会で日々のルーチンをこなし、時に地域の人のカウンセリングなどをして一人で暮らしている。ある日、信徒のメアリー(アマンダ・セイブライド)から夫に会って欲しいと、相談を持ちかけられる。メアリーの夫は、環境保護活動をしてカナダで逮捕された後に釈放され、帰ってきたところだった・・。

 今年73歳になる監督のポール・シュレイダー自身、厳格なカルヴァン派の両親のもとで育ったといわれ、「魂(The Spirit)」のあり方に苦しむ牧師のトラーに自分の苦しみを投影したのかもしれない。この作品は、シュレイダーの遺言か、とも感じた。アメリカ映画というと、商業ベースに載らないものは作れないように思うが、時に採算を度外視したこのような作品に出会うこともある。あるいは、監督や支援者が私財を投じて制作しているのだろうか。佳作、と感じた。

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B.Bキング、初期録音集

2019年04月24日 | 音楽
 久しぶりにCDを買った。B.Bキングの初期録音集『Complete Recordings 1949-1962』。6枚組で、全168曲を収録。60~70年ほど前の録音で、著作権が切れている為か2000円程で買えた。レーベルはENLIGHTMENTになっているが、イギリスで編集されたものらしい。こういうものがネットで簡単に手に入る時代になり、ありがたさが半分、面白みが薄れたのが半分。

 さて、わたしが地元のブルース・セッションに参加させてもらって1年になる。セッションとなると、やはりモダン・ブルースが中心になる。そうなると、必然的にB.Bキングの曲を演奏する人が多い。わたしのように、カントリー系のブルースを中心に演奏してきた者にとっては、馴染みの薄い曲も多く戸惑うこともある。具体的には、コード進行やリズムに、カントリー・ブルースには無いものも多いのだ。
 そこで、B.Bキングの初期録音を聴いて、セッションの時に参考にしよう、というわけだ。しかし、聴いてみて感じたのは、やはりルーツはカントリーブルースやゴスペルだ、ということだった。実際、「これは、あの曲を元にして作りかえている・・」と感じる曲も少なくない。その意味では、キングは、伝統的な曲からインスピレーションを得て新たな曲を構成し、それを別の次元に移し替えて自分のものにしてゆく、天才、と云えるだろう。



 彼は子供の頃、ミシシッピーのElkhorn Baptist Churchという教会の合唱団(Gospel Choir)に属して歌っていた、とCD解説にある。やはり、キングのヴォーカルのルーツはゴスペル・クワイアーだった。個人的には、これら初期のモダン・ケント(レコード・レーベルの名前)時代、と云われる録音が気に入っている。

 B.Bキングは、2015年に90歳を前に亡くなった。晩年は糖尿病を患い、それに伴なう合併症に苦しんだようだ。ジャケットの写真の様な若い頃の体型を維持していれば・・とも思うが・・。

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フォーク de ナイト 4/19

2019年04月21日 | ライブ
 千葉のライブハウス「リンゴ」で、毎月第3金曜に行われる参加自由のオープンマイク「フォーク de ナイト」に行ってきた。他の人達は、流行した馴染みのある曲を歌う人がほとんどで、オリジナル・ブルースを演奏するのは今のところわたしだけだ。「いいのかな?」とも思うが、オーナーの理解もあり、他の人からも受け入れてもらえているようで、感謝している。

 演奏曲は以下のとおり。
1、いつかおまえと
2、古書店街のロック(ギター独奏曲)
3、トリック・スター(ギター独奏曲)

4、Dust My Broom
5、空の果てまで歩いてゆきたい
6、波打ち際に座って

 4曲目のDust My Broomは、英語の歌詞でオープンDチューニングのスライド奏法の曲。この日は、エルモア・ジェイムスに近いスタイルで演奏した。他はオリジナル曲。なお、6曲目もオープンDチューニングのスライド奏法の曲で、4曲目とこの曲は店のオーナーが所有しているギターで、50年代マーチンOOO-18を借りた。普通、貸してくれないよなあ、50年代マーチンなんて。かなり使い込まれており、音もこなれていて、ボトルネックで弾くには恰好のギターだった。ありがとうございました。


この写真のギターは、ギブソンのヘリテージ(Heritage)という長年愛用している、云わばメイン・ギター。かなりフレットが減ってきた。すでに、3回換えているが、交換すると5万円程かかる。う~、きつい。が、弾きこんだギターの音色は他に換え難い。がんばろうっと。

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千葉市、荒屋敷貝塚2019/4/15

2019年04月17日 | 考古・エッセイ
 4/15(月)墓参の帰り、千葉市貝塚町にある荒屋敷貝塚に寄ってきた。



 携帯で撮影。この辺りは、貝塚町というくらいで、周辺には大小20余りの貝塚がある。ここは、その中でも最も大きい径180メートルの国指定の史跡。見てのとおりで、今は草原状態。周辺も含めて、発掘調査は、ほとんど「手つかず」と云ってもいい状態。本格的な発掘調査がなされれば、土器や土偶など、重要文化財あるいは国宝級の遺物が出土しても不思議ではない。

 おそらく、縄文期の人々は、貝に対して特別な思い入れがあったと感じる。自分の父母や祖父母、さらにその先に続く先祖たち、それらの人々が利用した貝、そしていつかは自分の使った貝も子や孫が見守ってゆく。そこに時の流れの中でも流されず生きているという「安心感」があったのではないだろうか。あえて言えば、「自己同一性」を確認していたように思われる。加曾利貝塚など比較的発掘が進む史跡では、貝層の中に人骨も埋葬されているのが確認されている。かつて貝塚は「ゴミ捨て場」と、考えられていた。しかし、縄文期の人々は貝をゴミだと思っていたわけではない。わたしは、そう確信している。

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2018年ドイツ映画『希望の灯り』

2019年04月13日 | 映画
 4/11(木)、千葉劇場にて。監督・脚本トーマス・スチューバー、原作・脚本クレメンス・マイヤー。ドイツ語。





 
 旧東ドイツのライプチヒ近郊。社会主義経済から資本主義経済に急転換した混乱の中で、大きなスーパーマーケットで働く3人が主な主人公になっている。かつては少年院に入っていたこともあり、全身に刺青を施した青年クリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)は、口下手だがなんとか仕事を憶えようとしている。そのクリスティアンが、淡い恋心を寄せる人妻マリオン(サンドラ・ヒュラー)は、時に夫から暴力を振るわれ、笑顔の奥に苦しみを滲ませている。もう一人、クリスティアンの仕事の指導に当たる54歳のブルーノ(ペーター・カース)は、かつてアウトバーンを走るトラックの運転手だった。が、今はフォークリフトで主に飲料を店に補充する仕事の責任者で、自分の仕事や生活に疑問を持ち苦しんでいて・・。
 
 原題は『In Den Gängen』で、直訳すれば「歩みの中で」といったところ。なお、英題は『In The Aisles』になっていて、直訳で「通路のなかで」といった感じ。邦題は、かなり原題から離れている。おそらく原題は、上のリーフレットの写真に見られるように、アウトバーンの横やスーパーの店内を歩くクリスティアンの姿に、時代の波に翻弄されながらも必死に前に進もうとする人々を象徴させたのだろう。佳作、と云える。

 さらに余談。映画の終わり近くに挿入歌としてサン・ハウスの『Grinnin' In Your Face』が使われていた。おそらく、1965年録音のものと思われる。「デルタ・ブルースの真髄」と云っても過言ではない曲で、まさかドイツ映画を観ていてこの歌を聴くとは思わなかった。歌詞の内容は「他人に馬鹿にされても気にしちゃいけない・・・」といったもので手拍子だけで歌われる。かつて多様なテーマを歌っていた時代の遺産ともいえるブルースで、ゴスペルの要素も含んでいる。わたしも、いつかサン・ハウスのように深いテーマのブルースを自然に歌いたいものだ。また、「とんだり跳ねたりするのはブルースとは言えない」というサン・ハウスの言葉を、いつも胸の深いところに刻み込んでいる。

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ブルースセッション、2019/4/6、千葉「リンゴ」

2019年04月09日 | ライブ
 今年は花粉が多く、先月はあまりセッションに参加できなかった。が、花粉の飛散もピークを越えたようなので4/6、千葉のライブハウス「リンゴ」で毎月第一土曜に行われるブルースセッションに参加してきた。

 この日は参加者が少なく、すこし寂しいセッションになったが、それでも参加した人達やハウスバンドの面々も手を抜くことは無く充実した演奏になっていた。わたしも、オリジナル曲を含めて4曲歌い、他の人のバッキングも4曲やらせてもらった。わたしは、昨年の春から参加させてもらっているので、ちょうど一年になる。毎回参加しているわけではないが、やっと肩の力を少し抜いて演奏出来るようになってきたところだ。これからも、引き続き参加して、多少なりとも良い演奏が出来るように研鑽して多様な曲を習得していきたい。

 演奏曲は以下のとおり。
1、Take A Little Walk With Me
2、Stormy Monday Blues

3、Key To The Highway
4、もう一度 もう一度(オリジナル)

その他バッキング4曲。


右端で歌っているのが、わたし。


バックをつとめているところ。

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2018年ハンガリー・フランス映画『サンセット』

2019年04月06日 | 映画
 4/4(木)、千葉劇場にて。監督・脚本は、ネメシュ・ラースロー。主演は、ユリ・ヤカブ。ハンガリー語、ドイツ語。





 1913年、第一次世界大戦が始める前年のブダペストの高級帽子店。そこは、貴婦人の美しさを際立たせるとともに、時にベールで顔を隠すさまざまな帽子を取り扱うだけでなく、皇族や貴族を相手に針子を使い裏の商売をしていた。そんな、当時のオーストリア・ハンガリー帝国の歪みを抱えたかのような店だったが、先代の娘イリスは、いつか自分の親が創った店で働こうと地方で帽子制作の修行を積み、ブダペストにやってくる・・・。

 上映時間2時間22分という映画だが、サスペンスの要素を含み、それほど長いとは感じさせない作品だった。ヨーロッパの近代史は複雑で、なかなか理解しがたい。興味深かったのは、庶民の話しているのがハンガリー語で、貴族などがドイツ語を話していたらしい事だった。それにより、第一次世界大戦直前のオーストリア・ハンガリー帝国がいかにドイツと深く結びついていたか、あるいは庶民が貴族と乖離していたか、その一端が垣間見えたような気がした。
 それにしても、わたしもけっこう映画は観ているつもりだが、登場人物が誰一人笑顔を見せない、そんな作品は始めて観た。当時の閉塞した社会情勢をそれにより表わす意図もあったのだろうか。重い作品だが、観る価値はある、と感じた。
 

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ピックアップの交換と配線変更

2019年04月03日 | ギター
 エレキギターは、アンプを繋がずに(生音で)弾いて良い音がしないと、アンプから出した音もやはり良くない。一方で、アンプを繋がずに(生音で)弾いて良い音がしても、アンプから出した音が良いとは限らない。これは、ギターのピックアップやアンプに問題があることになる。理想の音を追い求めて、お金をつぎ込んでも、完全に自分の納得いく音までは辿り着けないのが、まあ「常の道」と云える。が、ある程度は、「これならいける」と思えないと、演奏していても迷いが生まれるものだ。

 そんなわけで、所有しているエレキギターの内、一本のピックアップを交換した。


 これが以前の状態。フロントPUリンディー・フレイリンBLUES、リアPUリオグランデTALL BOY、ブリッジにはLRバックスのピエゾPUが付いていてステレオで出力できる。
 それぞれに良質のピックアップなのだが、ギターの特性と合わない感じだ。フロントはポールピースの間隔と弦の間隔が合わず特に1弦が「ゲイン落ち」傾向にある。これを改善するには、ピックアップを斜めに付ければ良いのだが、それにはギター本体を削りなおし、位置を決め直さねばならない。いずれにしろ、フロントをハムバッカーに換えたので、キャビティーを広げたのではあるが・・。


 こちらが完成した写真。フロントは、見てのとおりでハムバッカーに換えた。セイモア・ダンカンのSH-2nというタイプで通称「ジャズ」。出力は低めだが、ふくよかな低音とクリヤな高音、値段もリーズナブルで好きなピックアップのひとつ。ちなみに、SH-2nのnはネック(neck)の略、つまりフロント向きの意味。ダンカンは、同じタイプのPUでもフロント用とリア用でターン数を変えて制作されており、リア用はブリッジ(bridge)の頭文字をとって最後にbがつく。
 ブリッジのLRバックスのピエゾPUは、ステレオ配線だとミキシングできるプリアンプ等を使わねばならないので、今回はギター本体のスウィッチで出力できるように配線した。予算が限られているので、ピックアップを購入した以外は、すべて自分で作業した。結局、3日かかった。神経使うので、けっこう疲れたなあ。

 さて、音質について。まあ、完璧とは言えないが、自分なりに納得できる音には近付いた。近いうちに、このギターでセッションに参加して良い演奏がしたい。しっかり練習しよう。

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