以外に思う人もいるかもしれないが、わたしは現代音楽―特に武満徹(1930-1996以下敬称略)―を聞くことに違和感がなく、むしろ好んで聴いている。
クラシック音楽は教会の音楽を基礎としているので規則正しく調和に富んでいて、それはそれでいいのだろう。が、多様な人間性のごく一部しか表現し得ていないのは否めない。もちろん、ひとりの人間ひとつの作品で全てを表現できることなど望むべくもないが、雑多な世界とそこに潜む混沌を見つめようとすれば、想像の中にある調和の世界をいったん崩してみるしかない。
クラシックの音楽家たちが「和音」と呼ぶものや、「拍」と呼ぶものを崩してみて、そこから見える多様性をいろんなアプローチで表現してみることは価値があるし、魅力に富んだものが出来るかもしれない。そこにあるのは、試行錯誤の繰り返し。
そして、産みの苦しみ。
まあ、音楽を乗り物の中などでBGMとしてイヤホンで聞きたい人にはおすすめ出来ないが、一度聴いてみても損は無いだろう。というわけで、わたしの良く聴くCDを何枚か紹介してみよう。
このアンサンブルは現代音楽に至る過程をたどり、武満の作品までたどり着くような構成になっていて聴きやすく音質もいい。
上の2枚は、尺八(横山勝也)や琵琶(鶴田錦史)など和楽器を取り入れた作品で、個人的にはこれら五線譜に表せない音を構成音にしている楽器を使った作品が最もすきだ。それにしても、横山―鶴田のコンビはすばらしい。ずいぶん以前のことだが、鶴田がテレビに出ていて、武満に「譜面の読み方を教えてくれないか」、と頼んだことがあったという話をしていた。武満は「それだけは、かんべんしてくれ」と言ったという。武満の音楽の深奥に通じる話だと思った。
こちらは、福田進一のギター独奏による武満の作品集。音のコントロールの巧みさもさることながら、音が生き生きとしているのはさずがと言うほかない。技術的にすぐれは人はたくさんいるが、音に息吹を感じさせてくれるギターリストは少ないのだ。