文化逍遥。

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邦楽―琴古流尺八CD、山口五郎

2011年09月25日 | 音楽
 関東を直撃した21日の台風15号はすごかった。風で傘をさせなかった。東京にいたが、幸い2時に仕事を上がったので交通機関がマヒする前に千葉に帰宅することが出来た。その時間でも、もっとも海寄りを走る京葉線はすでに止まっていた。あぶなかった。帰宅できないと母の介護が出来ないので少し焦った。東京は災害にもろい。薄氷を踏む思い、といった表現がぴったりだ。

 さて、久々にCDを買った。琴古流尺八の山口五郎師。

Yamagutigoro

 山口五郎師を最初に知ったのは、亡くなった年にテレビで追悼番組を見た時だと記憶しているので、おそらく1999年頃だと思う。とにかく驚いた。尺八を楽にかまえて、軽く吹いているように見えるのに楽器はめいっぱい鳴る。音と音の繋ぎ方が絶妙で、かつ無駄が無い。ここまでたどり着けるのか、といった気持を抱かざるを得なかった。もっと早くに知っていれば生の演奏に接することもできたろうに、今でもそれが残念だ。
 その後、山口五郎師のCDを手に入れようと思っていたのだが、知識が足らず、何を買っていいのか分からなかったので随分遅くなってしまった。このCDには、琴古流尺八の本曲四曲が収録されている。録音年は不明だが、最初の発売は1999年らしい。レコード会社4社が協力して、すぐれた邦楽の演奏を録音した全25タイトルの内の一枚ということだ。
 演奏もさることながら、録音もすばらしい。あまりエフェクトをかけない素朴な音作りになっていて、演奏の本質的なものが浮き出るようにマスタリングされている。

 最近のCDを買う気にならない理由の一つにエフェクトをかけ過ぎていることがある。MP3などに圧縮するとリバーブ感が落ちるので、それを見越して強めにエフェクトをかけるのだろうが音質的には嫌味で聞きにくいものになってしまっている。これでは、音楽ファンのみならずオーディオファンでさえも買おうとは思わないだろう、と感じさせるCDが多い。音楽業界は限りない悪循環に落ち込んでいる。

 ともあれ、すぐれた邦楽の録音が今でもちゃんと聞けることはよろこばしい。西洋音楽のようにリズムや拍がしっかりしたものとは違い、心静かに聴きこまねば理解しにくい。が、そこには深遠な静けさがある。
 最近は仕事が少なくなってCDを買う予算も少ないが、また良い邦楽のCDを手に入れたら紹介してみたい。


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