文化逍遥。

良質な文化の紹介。

2017年ドイツ・フランス・アイルランド映画『男と女、モントーク岬で』

2018年05月30日 | 映画
 5/29(火)、千葉劇場にて。原題は『Return to Montauk』。



 男女の機微を描がいた作品。本当のところ、個人的にはこういうテーマの作品は、あまり好きではない。じゃあ見なけりゃいいだろう・・とは思うものの、監督が1979年の作品『ブリキの太鼓』のフォルカー・シュレンドルフだというので足を運んでみる気になった。『ブリキの太鼓』から、もう40年近い時が流れるんだなあ・・感無量。
 主人公、作家のマックスは新作のプロモーションのためドイツからニューヨークを訪れる。朗読会などをこなすうち、旧友からかつての恋人の所在を知ることになり、会いたい衝動を抑えきれなくなって・・・。
 先週に続き、ニューヨークを舞台にした映画を観たわけだ。設定されている時代が違うとはいえ、カメラのアングルあるいは監督の視点により、こんなにも違う街に見えるのか、と感じた。言葉は、基本的には英語だが時にフランス語などが混じる。
 この手の作品の多くが、過去を引きずり、昔の恋人を追いかけるのは男の方なんだよなあ。実際、「女は前しか見ない」とも言われるが、それにしても煮え切らない初老の男は見ていて辛いものがある。自分もそういう一面があるからなのかもしれないが、やるせない気持ちが残る。

 音楽を担当したのはマックス・リヒターという人で、バーバラ・モンク・フェルドマンを想わせる現代音楽に近い音使いとヴァイオリンの音色が、人生の不安定さを表現して心に残った。

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2017年アメリカ映画『さよなら僕のマンハッタン』

2018年05月26日 | 映画
 5/25(金)、千葉劇場にて。原題は『The Only Living Boy In New York』 で、劇中歌に使われたサイモン&ガーファンクルの曲と同名。監督は、マーク・ウェブ。



 1980年頃のニューヨーク。まだ、携帯電話も無く、音楽もLPレコードで聴くような時代。そんな時、そんな場所で暮らす一家族の葛藤を描いた作品。この映画を、ストーリーの中心となっている若い一人息子を中心に観れば、リーフレットにあるように「青春物語」となるかもしれない。が、観方を換えて、根なし草ともいえる都会人たちの深い混迷と不安を描いた作品、と観るとまるで別の世界が見えてくる。それは、今に続く世界一の商業都市に暮らす人間の足元の暗さ、の様なもので、興味深く、また面白い。観ておいて損はない作品。

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国立演芸場5月名人会

2018年05月23日 | 落語
 5/19(土)、第417回国立名人会を聴いてきた。いつもは、午後1時から始まるのだが、この日は珍しく6時開演の夜席だった。



 名人会となると、やはり観客も落語好きな人が集まる。皆、古い言葉や江戸の風俗をある程度知っている人がほとんどだ。なので、演者も今は死語となっている言葉に対する説明などもせず、ある意味安心して噺に入れるようだ。当然、雰囲気も一般の寄席の時とは変る。団体客もいないし、わたしのように一人で聴きにきている人も多いようだった。演者の持ち時間も普段より長く、一人当たり20~30分位で、最後の真打は40分程の長演になる。
 聴きたかったのは、やはり五街道雲助の『淀五郎』。この人は、地味な芸風でテレビ出演なども少ないが、端正な語り口は古典落語ファンを十分に満足させてくれる。ちなみに、この日2人目に出た隅田川馬石は、五街道雲助の弟子。一門には変わった名が多いが、雲助師匠は十代目金原亭馬生の門下で、その十代目の父であり師匠であるのが五代目古今亭志ん生。その志ん生という人は借金取りから逃れるために芸名を何度も変えたらしい。その志ん生が使った中の芸名を今五街道雲助一門が使っている、ということらしい。本来は、この雲助師匠あたりが馬生の名跡を継ぐべきだったろうが、本人が固辞したと聞いている。わざと、落語家らしからぬ名で本格的な古典落語をじっくり聴かせるというのも、また良いのかもしれない。ある意味、本当に古典を聴きたい人が来るようになる。ただし、それには本当の実力が無ければ出来ないことだ。

 「淀五郎」という演目は、古典落語の中の芝居噺でもあり人情話でもある。数ある芝居噺のなかでも、わたしが特に好きな演目だ。演じ分けが難しく、並みの噺家では噺がつくれない。この日の『淀五郎』、出来も良く最後まで緊迫感があった。千葉から東京までわざわざ夜出かけただけの価値があった高座だった。

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5/19、神保町

2018年05月21日 | まち歩き
 5/19(土)午後、お茶の水から神保町へテクテクと歩いた。


例によって延々と改修工事中のJR御茶ノ水駅。聖橋上から携帯で撮影。写真の手前側に見えているプレハブなどの建物の下は、神田川が流れている。


岩波ブックセンターのあった所に先月4/11に開店した「神保町ブックセンター」。UDSという小田急グループ傘下の組織が運営しているらしい。中は、カフェになっていて岩波書店発行の本約9000冊が展示販売されている。コーヒーなどはだいたい500円位で、展示されている本を読むこともできるし、買った後に読むのももちろん可能。奥は、会員制の会議室のようになっていて、ゼミなどにも活用できるようだ。
 が、貧乏学生だった頃を思い出し、500円払ってコーヒー飲みながら本を読む気にはなれなかった。安い食堂なら1回分の食費に充てられるし、コーヒー代を本代に充当した方が良いだろう。でも、まあ、とりあえず岩波書店発行の本が揃っている書店が復活したことは良かった。

 この日は、この後三宅坂の国立演芸場での口演「国立名人会」に行った。噂に聞いた新書店が見たくてお茶の水で降りて神保町に回った次第。名人会についてはページを改めて書くことにする。

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2017年イギリス映画『北斎』

2018年05月18日 | 映画
 5/16(水)、千葉劇場にて。原題は『British Museum presents : Hosusai』。監督は、パトリシア・ウィートレイ。





 これは、大英博物館で開催された展覧会「Hokusai: Beyond the Great Wave」を通して専門家の解説や、日本の伝統的な信仰及び風習などを分かりやすく解説したドキュメンタリー映画。基本的には英語だが、出演している日本人の話は当然日本語になっている。
 葛飾北斎のことは、自分ではある程度の知識を持っているつもりだったが、知らないことも多かった、と感じた。それを海外の専門家からの話で知るとは恥じ入るばかりだ。特に、晩年の肉筆画のすばらしさや、日本では「赤富士」と言われている版画の初刷りが実はピンクに近い色で、夕焼けに染まる富士山ではなく朝日に浮かび上がる富士であり裾野に広がる樹海の朝の息吹までをも表現されている、という見解には目から鱗が落ちるように感じた。そして、それが蕎麦二杯分の値で江戸の当時は売られていたことなども初めて知った。古典落語の「時そば」などで、蕎麦に竹輪などのささやかな具の入ったものが一六文としている。なので、今の貨幣価値なら、葛飾北斎の版画一枚1000円しなかったことになる。当時は、襖の穴があいた所などに貼って、いわば補修材として利用されることも多かったとも聞いている。したがって、良い状態で現存するものは極めて少ない、ということになる。しかも、版画の場合、摺りを重ねると版木を換えることもあったらしく、色も変化していったらしい。芸術作品としての認識が薄く、制作者もそこまでは、気にしなかったのだろう。
 人は、金銭的価値でものの大切さを判断しやすく、悲しい事だが、足元にある宝を見失いがちだ。いずれにしろ、観ておいて良かった映画だった。

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稲毛人工海浜、5/14

2018年05月15日 | 日記・エッセイ・コラム
 このところ雨が多く、梅雨の走りのような天気が続いていたが、5/14(月)は乾燥した晴天になった。買い物がてら千葉市にある稲毛の人工海浜に自転車で行ってきた。


東京方向。右端に見えるビルは、幕張メッセの近くにあるホテルなど。浅瀬に入って何か探している人が何人か見える。釣りに使う餌、ゴカイなどを探しているのか、あるいは、貝を掘っているのか?


あまり見かけない鳥がいたので撮影してみた。嘴の形や、足に水かきが付いているので、シギの仲間だろうか。大きさは、ハトより少し小さいくらい。

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劉暁波著『独り大海原に向かって』2018年書肆侃侃房刊

2018年05月11日 | 本と雑誌
 図書館から借りて読んだ本を一冊。訳・編集は、劉燕子氏と田島安江氏。なお、田島安江氏は、書肆侃侃房(福岡)の代表取締役でもある。



 2010年に獄中でノーベル平和賞を受賞し、2017年7月13日に瀋陽の病院で多臓器不全のために亡くなった文学者劉暁波。1955年12月28日吉林省長春の生まれというから、わたしよりほぼ1年年長ということになる。この本は、1990年頃からの詩編や、獄中からの夫人への手紙、そして哲学的な思考を詩的に表現した散文詩などが収められている。訳者の劉燕子氏が「むすびにかえて」の中で「詩は厳密にいえば翻訳不可能である。」(P263)と述べられている。それはもっともなことで、たとえば、李白や杜甫の詩を現代日本語に訳したものなど想像できない。しかし、それでもここに収められた詩文からは胸に沁みる想いが伝わってくる。若い頃の理想に忠実に生き抜いたひとりの詩人が確かにいたことを伝えてくれている。本文P186以下を少し引用しておきたい。

 「・・ぼくは殉難を覚悟しあふれ出る熱気で深淵に沈んだ魂を救おうとするのだが、その魂は相変わらず混沌として、不潔で卑俗だ。・・」

 同時代人として、魂の奥に刻み込んでおきたい人の一人、といえる。

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ブルースセッション、5/5千葉「リンゴ」

2018年05月07日 | ライブ
 連休も終わろうとする5月5日、千葉駅から徒歩7分程の所にあるライブハウス「リンゴ」で行われたブルースセッションに参加してきた。参加費1500円でワンドリンク付き、演奏したい人は誰でも参加できるし、もちろん聴くだけの人も同じ料金。機材は良いものがそろっているし、ブルース好きな人達にとっては良い交流の場となっている。この日は連休中ということもあり、参加者がすくないかな、と思っていたが、聴くだけの人も何人かいて店内はほぼ満員。といっても、20人程でいっぱいになる小規模なライブハウスだが・・。

 演奏したのは、エルモア・ジェイムス風「Dust My Broom」と、フレッド・マクドウェル風「If The River Was Whisky(自作の日本語詞付き)」の2曲。他の人達は、モダンな曲がほとんどで、ホストのルイジアナギターの店長さんをはじめ皆さんかなり高度なテクニックを持っている。なんとなく場違いなところに来たような気がして、失笑をかうかな、と思ったが、以外に受けが良かった。古いタイプの演奏が逆に新鮮に聞こえたようだ。何人かの人が「よかったですよー」と声をかけてくれた。社交辞令と思いつつも、そう言われると、また行きたくなる。癖になりそう。

 バックについてくれた、ギター、ハーモニカ、ベース、ドラムス、の皆さん、それぞれにさぞやりにくかったことでしょうが、お付き合いいただきありがとうございました。また、よろしくお願いしまーす。



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扇風機

2018年05月04日 | 日記・エッセイ・コラム
 今まで使っていた扇風機が20年を超え、まだ動くものの安全のため買い替えることにした。この際なので、長く使うものだし、奮発して品質の良いものを買い求めた。量販店で25000円ほどのシャープのものを買った。


風量は32段階に変えられ、音も静かで、風も昔のものよりやさしい感じがする。プロペラの形に工夫がされているようだ。消費電力も最小で約4W、最大でも20W。昔に比べれば格段に省エネになっている。モーターの回転時に無駄が無い構造なのだろう。それだけ精密に出来ているようだ。4Wといえば、蛍光灯に使われていた常夜灯(小玉電球)の消費電力とほぼ同じだ。それだけの電力で、この大きいファンが回るのだから大したもんだ。

 今年の夏は、この扇風機をうまく使い、あるいはエアコンと併用したりして、さらなる省エネに努めたい。

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わたしのレコード棚―ブルース52、Louisiana Red

2018年05月01日 | わたしのレコード棚
 ルイジアナレッド―ルイジアナの赤(タバスコの意か)―という異名をとる辛めのブルースマン。基本的にはエレキギターを使ったスライド奏法の人で、かなり巧みなスライドブルースを聞かせてくれる。本名は、Iversonn Minter。1932('36?)年にミシシッピー州ヴィックスバーグ(Vicksburg)で生まれ、2012年にドイツのハノーバーで亡くなっている。
 実は、わたしが本格的なブルースを生で聴いたのはこの人が最初だった。1977年の春、上野あたりの中規模の会場だったように記憶している。その当時、フォーク歌手のオデッタと恋人関係にあり、二人してのライブだった。その日は、オデッタ目あての聴衆がほとんどで、ルイジアナレッドがブルースを演奏すると失笑する人も多かった。良い演奏だったが、その時に、ブルースという音楽を理解している人がいかに少ないか、あるいは大衆音楽に対する偏見、を実感したものだった。
 


フランスのレーベルJSPから出たCD240。日付はわからないが、ロンドンでの録音13曲。メンバーは、ギター・ハーモニカ・ヴォーカルがルイジアナレッド、その他ギターにRichard Studholme、ピアノにJon Cleary、ベースにMarty David、ドラムスにGeoff Nicholls。


イギリスのチャーリーというレーベルから出ているCD。色合いの違うブラウニー・マギーのバックをルイジアナレッドが務めており、スライド奏法の好バッキング。1976年ニューヨークでの録音。


Bellaphonというドイツ盤CDで、ヒューバート・サムリンを中心としたドイツでの録音。ルイジアナレッドは、1980年の録音で1曲ヴォーカルとギターを務めている。



余談だが、こちらは別人の「ルイジアナ“ギター”レッド」。ややこしい。本名は、Cordell Boyette。かなりロックに近いモダンなブルース。

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