ランブリン・トーマス(Willard Rambiln' Thomas)もくわしい事はよく分かっていない人だが、1902年頃にルイジアナかテキサスで生まれ1930年代後半か40年代にメンフィスで亡くなったらしい。
ローン・ウルフ(The Lone Wolf)ことオスカー・ウッズ(Oscar Woods,c1900La~1956La)は、ブルース・マンというよりオールマイティ・ミュージシャンとでもいった方がいい多才な人で、1930年に白人ヒルビリー歌手のジミー・デイヴィス(Jimmie Davis―後のルイジアナ州知事で「You Are My Sunshine」の作者)のバックで2曲、’36年に単独でブルースを3曲、’38年までにデキシー・ランド・ジャズに近い形でラグなどを録音している。さらには、’40年にジョン・A・ローマックスが議会図書館のための録音をしたらしいが、それは残念ながら手元にはない。
この二人はともにテキサスからルイジアナにかけて活動し、ギターはスライド奏法が多いがボトルネックを使って弾くのではなくボディを膝に寝かせてナイフなどを使って弾くハワイアンのようなスタイル(ナイフ・スライド)だったらしい。この弾き方だとナイフを斜めにして弾くことや単弦で弾くこと、さらにハイポジションでの演奏も容易なため、よりバラエティーに富んだ音作りが出来る。ちなみに、普通に抱えて弾くのはスパニッシュと言われ、ギブソンのエレキギターの型式に「ES-・・・」と有るのはElectric Spanishの頭文字から来ている。
イギリスのレーベルMATCH BOXから出たLP、MSE215。ランブリン・トーマスの1938年の14曲と’32年の2曲で、全16曲入りコンプリート・レコーディングになっている。が、今では’32年に録音した2曲が新たに見つかっているらしい。一方で、下に写っているCDの解説を書いた小出 斉氏は、’32年の録音は「弟のジェシーが、兄の芸名を使って吹き込んだ、という可能性もありそうだ。」と書いている。わたしも、’32年のものはどうも音も言葉もちょっと違うんじゃないかな、という気がする。
LPの解説を書いたポール・オリヴァー(Paul Oliver)は、1964年の夏にロンドンで詩人のラングストン・ヒューズ(Langston Hughes)と会ったときに、彼が好きなブルース・シンガーの一人としてランブリン・トーマスを挙げたので驚いたと書いている。実際、他のブルースマンには無い、詩人としての才能がトーマスにはあったようだ。「歌うたい」というよりも「弾き語り」と言った方がふさわしい人で、メロディー・ラインが変化に富むような歌は無いが、語るように歌いギターに答えさせるいわゆるコール・アンド・レスポンスにすぐれている。CD付属の歌詞カード から「Lock And Key Blues」の一節を紹介しておく。
Springtime comin' and the grass all growin' green (春になって草木が緑に色づいてきたよ・・)
こんな季節感のあるブルースの詞は、他に知らない。そもそもイーストコーストならまだしも、亜熱帯気候といわれる深南部にこんな季節感を盛り込んだ歌があるとは思ってもいなかった。下のCDにはトーマスの16曲と、ウッズの戦前に残した録音10曲を収めているが、歌詞カードが付いていたのでそれを見るまでトーマスの詩才に気づかなかった。それでなくとも英語など聴き取る力が不足しているのに、古い録音は雑音や訛りもあってほとんど聞きとれない。ちゃんと歌詞カードを付けてくれたP-VINEさんに感謝。
最近手に入れたP-VINEのCD20074。ブルース系のミュージシャンは、ブルーノート・スケールにこだわるものだが(それしか出来ないとも言えるが・・自分も)、オスカー・ウッズはダイアトニックに近い音を使いこなしている。ヒルビリーのバックを黒人が付けるなどあまり聞いたことがないし、後に公民権運動が起こる中で合衆国全体に政治的に険悪な雰囲気が生じる歴史を考え合わせると、ウッズのデイヴィスとの1932年の録音は貴重なものだと思う。
トーマスやウッズが実際にナイフを使って演奏したかはわからないが、参考までにラップ・スチールやスクエアー・ネックのドブロなどで使うスライドバーの写真を載せておく。一番右のものがブルースでよく使われる、いわゆるボトル・ネックで左手の薬指か小指に差し込んで使う。中央と左のものがラップスチールなどに使われるもので、左手の三本の指で挟み親指で支えるように持って使う。いろいろやってはみたが、簡単にはうまくいかないもんですよ、やっぱり。
ローン・ウルフ(The Lone Wolf)ことオスカー・ウッズ(Oscar Woods,c1900La~1956La)は、ブルース・マンというよりオールマイティ・ミュージシャンとでもいった方がいい多才な人で、1930年に白人ヒルビリー歌手のジミー・デイヴィス(Jimmie Davis―後のルイジアナ州知事で「You Are My Sunshine」の作者)のバックで2曲、’36年に単独でブルースを3曲、’38年までにデキシー・ランド・ジャズに近い形でラグなどを録音している。さらには、’40年にジョン・A・ローマックスが議会図書館のための録音をしたらしいが、それは残念ながら手元にはない。
この二人はともにテキサスからルイジアナにかけて活動し、ギターはスライド奏法が多いがボトルネックを使って弾くのではなくボディを膝に寝かせてナイフなどを使って弾くハワイアンのようなスタイル(ナイフ・スライド)だったらしい。この弾き方だとナイフを斜めにして弾くことや単弦で弾くこと、さらにハイポジションでの演奏も容易なため、よりバラエティーに富んだ音作りが出来る。ちなみに、普通に抱えて弾くのはスパニッシュと言われ、ギブソンのエレキギターの型式に「ES-・・・」と有るのはElectric Spanishの頭文字から来ている。
イギリスのレーベルMATCH BOXから出たLP、MSE215。ランブリン・トーマスの1938年の14曲と’32年の2曲で、全16曲入りコンプリート・レコーディングになっている。が、今では’32年に録音した2曲が新たに見つかっているらしい。一方で、下に写っているCDの解説を書いた小出 斉氏は、’32年の録音は「弟のジェシーが、兄の芸名を使って吹き込んだ、という可能性もありそうだ。」と書いている。わたしも、’32年のものはどうも音も言葉もちょっと違うんじゃないかな、という気がする。
LPの解説を書いたポール・オリヴァー(Paul Oliver)は、1964年の夏にロンドンで詩人のラングストン・ヒューズ(Langston Hughes)と会ったときに、彼が好きなブルース・シンガーの一人としてランブリン・トーマスを挙げたので驚いたと書いている。実際、他のブルースマンには無い、詩人としての才能がトーマスにはあったようだ。「歌うたい」というよりも「弾き語り」と言った方がふさわしい人で、メロディー・ラインが変化に富むような歌は無いが、語るように歌いギターに答えさせるいわゆるコール・アンド・レスポンスにすぐれている。CD付属の歌詞カード から「Lock And Key Blues」の一節を紹介しておく。
Springtime comin' and the grass all growin' green (春になって草木が緑に色づいてきたよ・・)
こんな季節感のあるブルースの詞は、他に知らない。そもそもイーストコーストならまだしも、亜熱帯気候といわれる深南部にこんな季節感を盛り込んだ歌があるとは思ってもいなかった。下のCDにはトーマスの16曲と、ウッズの戦前に残した録音10曲を収めているが、歌詞カードが付いていたのでそれを見るまでトーマスの詩才に気づかなかった。それでなくとも英語など聴き取る力が不足しているのに、古い録音は雑音や訛りもあってほとんど聞きとれない。ちゃんと歌詞カードを付けてくれたP-VINEさんに感謝。
最近手に入れたP-VINEのCD20074。ブルース系のミュージシャンは、ブルーノート・スケールにこだわるものだが(それしか出来ないとも言えるが・・自分も)、オスカー・ウッズはダイアトニックに近い音を使いこなしている。ヒルビリーのバックを黒人が付けるなどあまり聞いたことがないし、後に公民権運動が起こる中で合衆国全体に政治的に険悪な雰囲気が生じる歴史を考え合わせると、ウッズのデイヴィスとの1932年の録音は貴重なものだと思う。
トーマスやウッズが実際にナイフを使って演奏したかはわからないが、参考までにラップ・スチールやスクエアー・ネックのドブロなどで使うスライドバーの写真を載せておく。一番右のものがブルースでよく使われる、いわゆるボトル・ネックで左手の薬指か小指に差し込んで使う。中央と左のものがラップスチールなどに使われるもので、左手の三本の指で挟み親指で支えるように持って使う。いろいろやってはみたが、簡単にはうまくいかないもんですよ、やっぱり。