7/9(土)、国立劇場小劇場。午後2時からの、1960年代から70年代にかけて作曲された現代邦楽の演奏会に行ってきた。尚、夜は80年代から90年代の作品の演奏会だったが、そちらは聴かなかった。
和楽器は歌舞伎や寄席では客席から見えない所で演奏されることも多く、その意味では「縁の下の力持ち」とも言える。が、楽器としての表現力がクラッシック音楽で使われるような楽器に劣っているわけではない。むしろ、西洋音楽では排除してきた音を豊富に持ち、多様なニーズに答えられる楽器として現代音楽に取り入れられてのは必然的とも言える。本格的な和楽器の演奏会は、わたしも今回が初めてだった。やっぱり、生の音は良いなあ。特に、武満徹作品『エクリプス』では、あえてマイクを使わなかったので、尺八と琵琶の生音が聞けた。音量自体は小さかったが、微妙な音の変化は実に豊かなものだった。琵琶の生音というのは、本当に繊細で、ギターのフレットに相当する柱の部分が高いので押さえる力を加減することにより音程・音色の変化が富むことになる。今回、琵琶の生音に接して感じたことは「あの音の変化は、マイクでは拾えないな」ということだった。つまり、和楽器全体に言えることだが、CDなど録音されたもので聞いてもその良さが十分に伝わらない。和楽器の演奏に接する機会が増えれば良い、と切に感じた次第。
学校教育ではクラッシック音楽理論が中心になっている。なので、それに伴いクラッシック音楽の演奏会は頻繁に行われているし、○○コンクール受賞とか肩書がつくと観客が多く集まる、という構図がある。それはそれで良いのだが、邦楽では、たとえ国立の音楽大学で高度な教育を受けても教員免許は取れないし、演奏会にも人はなかなか集まらない。こんな国は他にあるのだろうか。環境が整っているので、天才バイオリストとか天才ピアニストとかがこの国からも結構出るが、「天才尺八奏者」などとはあまり聞いたことが無い。足元にある貴重なものを見落とさないようにしたいものである。
聴かなかったが、参考資料として夜の部のプログラムも掲載しておく。