前回取り上げた『ハウランド家の人びと』の中で気にかかる個所があったので、少し書いておきたい。
それは、ある葬式の場面で年老いた黒人がバンジョーを弾きながらブルースを歌うところだ。P99からの引用・・
「・・・そこに腰をおろしてバンジョーを弾いているのだ。彼は弾きながら歌っていた。古いブルースをゆったりと歌っているのだった。
床に毛布を敷いておくれよ
ああ そうだよ
さみしいさみしい故郷へ
わたしはもう帰るのだよ・・・
つめたい風の吹かないところへ
ああ 私は帰るのだよ ・・・」
原書がまだ届かないので英語の原文はわからないが、これはブルースの名曲「Pallet On Your Floor」だと思った。この[Pallet]は、古い英語で藁(わら)でつくった粗末な寝床の意味だという。アメリカでも、白人であれ黒人であれ貧しい農民は藁の上でしか眠ることが出来ない時代があったということだろう。
この「Pallet On Your Floor」は、ブルースからフォーク、カントリーまでさまざまなミュージシャンが取り上げていて歌詞も色々なヴァージョンがあるが、代表的な歌詞に次のようなものがある。
I'm goin' where them chilly winds don't blow
・・・・
Make me a pallet on your floor
(つめたい風の吹かない所へいくさ、
床に寝るための藁を敷いてくれ―今は横になりたいんだ)
「つめたい風の吹かないところ」とは、明らかにアフリカだ。この歌の原義は、奴隷としてアフリカから連れて来られた黒人の望郷の歌と理解すべきなのだろう。小説を読んでいて、ひとつの歌の理解が可能になることもある。
時代は変わり、今は望郷の念を込めてこの歌を歌う人はいなくなった。
最近はやたら耳あたりのいい音楽ばかりで、それはそれでいいのだが、なにか物足りないものを感じるのは歳のせいかねえ・・・まあ、いいけど。
6/9追記
原書が届いたので、歌の詞の部分(p105)を引用しておく。
Roll me a pallet on your floor, Oh yes.
I'm leavin' for that long lonesome home.
Going where those chilly winds don't blow,Oh yes.
おそらく、これが「Pallet On Your Floor」の原初的な詩なのだろう。
素朴で、なにか胸に沁みてくるものがある。
それは、ある葬式の場面で年老いた黒人がバンジョーを弾きながらブルースを歌うところだ。P99からの引用・・
「・・・そこに腰をおろしてバンジョーを弾いているのだ。彼は弾きながら歌っていた。古いブルースをゆったりと歌っているのだった。
床に毛布を敷いておくれよ
ああ そうだよ
さみしいさみしい故郷へ
わたしはもう帰るのだよ・・・
つめたい風の吹かないところへ
ああ 私は帰るのだよ ・・・」
原書がまだ届かないので英語の原文はわからないが、これはブルースの名曲「Pallet On Your Floor」だと思った。この[Pallet]は、古い英語で藁(わら)でつくった粗末な寝床の意味だという。アメリカでも、白人であれ黒人であれ貧しい農民は藁の上でしか眠ることが出来ない時代があったということだろう。
この「Pallet On Your Floor」は、ブルースからフォーク、カントリーまでさまざまなミュージシャンが取り上げていて歌詞も色々なヴァージョンがあるが、代表的な歌詞に次のようなものがある。
I'm goin' where them chilly winds don't blow
・・・・
Make me a pallet on your floor
(つめたい風の吹かない所へいくさ、
床に寝るための藁を敷いてくれ―今は横になりたいんだ)
「つめたい風の吹かないところ」とは、明らかにアフリカだ。この歌の原義は、奴隷としてアフリカから連れて来られた黒人の望郷の歌と理解すべきなのだろう。小説を読んでいて、ひとつの歌の理解が可能になることもある。
時代は変わり、今は望郷の念を込めてこの歌を歌う人はいなくなった。
最近はやたら耳あたりのいい音楽ばかりで、それはそれでいいのだが、なにか物足りないものを感じるのは歳のせいかねえ・・・まあ、いいけど。
6/9追記
原書が届いたので、歌の詞の部分(p105)を引用しておく。
Roll me a pallet on your floor, Oh yes.
I'm leavin' for that long lonesome home.
Going where those chilly winds don't blow,Oh yes.
おそらく、これが「Pallet On Your Floor」の原初的な詩なのだろう。
素朴で、なにか胸に沁みてくるものがある。