文化逍遥。

良質な文化の紹介。

国立演芸場、六月上席

2014年06月07日 | 落語
このところ遠ざかっていたが、母の四九日の供養にと思い寄席に行ってきた。

と、言うと奇異に思う人もいるかもしれないが、落語は仏僧が法話を語る際に聴き手を引きつける為に面白い話を盛り込んだのが起源とされている。
噺家が使う道具は扇子と手ぬぐいだけだが、扇子のことは落語の符丁で「風」、手ぬぐいは「曼荼羅」と言っていることに今でもその名残がある。さらに、噺家の着る物は黒紋付が基本で、テレビの「笑点」のイメージが強くカラフルな着流しを着て高座に上がる噺家が多いように思っている人もいるようだが、実際はほとんどの噺家は深い色の紋付を羽織って上がる。先代の桂文治などは黒紋付に袴を着け、いわば常に正装で高座に上がっていた。

Kokuriti

この日(6/2)も、仲入り前に上がった僧侶でもある三遊亭円歌をはじめ、他の噺家(吉窓や志ん喬など)も黒紋付の羽織だった。
特に、最後に上がった真打のさん喬は着物も深い黒で人情話『井戸の茶碗』を膨らませながら40分じっくりと語ってくれた。
すばらしい出来だった。
この人の高座は何回か聞いているが、少し考え過ぎるのか描写が過剰になるきらいがあったが、この日は迷いなく真っ直ぐな高座で胸に染みてくるものがあり、涙が出た。

国立劇場ができて今年で35年ということで、記念に手ぬぐいもくれた。

Kokuriti_0002


落語は、残しておきたい大切なこの国の文化だ、とあらためて感じた一日だった。


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