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1973年フランス映画『ブルースの魂』

2025年02月11日 | 映画
 2/7(金)、千葉劇場にて。映像や音を修復しての劇場公開作品になる。監督はロバート・マンスーリスで、2022年4月に92歳で亡くなっている。この作品はフランスのテレビ局の企画で制作されたらしいが、1973年当時、日本はもちろん、アメリカでもほとんど公開されなかったという。観ればわかるが、黒人の生活に対するフランス人の偏見が見え隠れする。おそらく、それが公開されなかった理由だろう。

 映画の最終場面で、ブラウニー・マギーが「Blues is truth(ブルースは真実)」と言って、エンドロールになる。そのブラウニー・マギーがヨーロッパに演奏旅行に行った際の逸話を、どこかで読んだことを思い出した。それは、記者から飲酒のことなどを問われて「わたしは酒も飲まないし、もちろんドラッグもやらない」と答えると、「あなたは本当のブルースマンではない」と言われたという。「あいつら、何か勘違いしてるよ」と回顧していたが、ヨーロッパでのブルースマンに対する偏見が良く表れている話だ。この映画でも、かなり作為的な編集の仕方が認められる。出演者のほとんどがすでに亡くなっているが、もし、生きていてこの作品を観たらがっかりするような気がする。
 とはいえ、昔の映像あるいは音源からノイズを除去して迫力ある生々しいシーンが続く。ほとんどの映像が我が家にもあるが、改めてきれいな映像で観られて良かった、とも感じた。さらにもう一点、翻訳が素晴らしかった。調べてみたところ、字幕の翻訳をしたのは福永 詩乃という方らしい。アメリカの音楽文化に詳しい研究者かと思ったが、ヒンドゥー語などのインド映画の翻訳も担当している翻訳家のようで、才能ある人だなあ、と感心ひとしきり。おそらく、この作品が作られた半世紀前だったら、この様なセンスの良い字幕が付くことは無かっただろう。それほど、文化の違いを翻訳するのは至難なことなのだ。

 なお、フランス語の原題は『Le blues entre les dents』。「dents」は英語のDentalに近い言葉のようで、歯の間から出てくるような自然なブルース、というほどの意味らしい。ちなみに、英題は『The Blues Under The Skin』。



以下は、千葉劇場のホームページより引用。
 『「ブルースの魂」
監督ロバート・マンスーリス
出演B.B.キング、バディ・ガイ、ジュニア・ウェルズ、ルーズヴェルト・サイクス、ロバート・ピート・ウィリアムズ、マンス・リプスカム、ブッカ・ホワイト、ソニー・テリー、ブラウニー・マギー、ファニー・ルイス、ジミー・ストリーター
B.B.キング生誕100 周年記念。製作から50年を経て、2K修復版にて劇場初公開。1970年代の伝説的なブルースミュージシャンたちの演奏をとらえた映像と、ハーレムに住む若いカップルの愛と苦難のドラマを融合させた音楽映画。フレディ(ローランド・サンチェス)は子供のころ生活のためノースカロライナ州から母親に連れられてニューヨークに出てきた。だが武装強盗の罪で5年間服役、出所後ハティ(オニケ・リー)と結婚し二人で母親の家に居候している。フレディは刑務所の病院で働いた経験を生かして看護助手をやろうと職探しをする毎日だがうまくいかない。街をうろつきハティに金を無心してはビリヤード場に出入りし鬱とした日々をやり過ごしている。そんなフレディに嫌気がしたハティは、仕事帰りに立ち寄るなじみのバーでブルースを歌う男と駆け落ちを図るが…。(1973年製作/88分/フランス)』

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