文化逍遥。

良質な文化の紹介。

わたしのレコード棚ーブルース155『American Folk Blues Festival '70』

2022年12月21日 | わたしのレコード棚
 ブルースのライブを収めた録音は多いが、わたしの聴いた中で特に優れたものを紹介しておきたい。


 1970年11月16日、ドイツ(当時の西ドイツ)のフランクフルトで「American Folk Blues Festival」と銘打って行われたライブを収録した2枚組LPで、ドイツのL+R(Lippmann & Rau)というレーベルの42.021。

 当時のブルースシーンを代表するメンバーが選ばれており、しかも、それぞれが素晴らしい演奏をしている。客も集中して聴いており、反応も良かったように聞こえる。メンバー構成は以下のとおり。
 シカゴから、ベースのWillie Dixon(ウィリー・ディクソン)を中心として選抜されたと思われるChicago Blues All Stars。フォークブルースとして、ニューヨークで主に活動していたBrownie McGhee & Sonny Terry(ブラウニー・マギー&サニー・テリー)。カントリーブルースでは、ミシシッピーのベテランBukka White(ブッカ・ホワイト)。そして、当時すでにヨーロッパに移住して演奏活動をしていたピアニストのChampion Jack Dupree(チャンピオン・ジャック・デュプリー)。「綺羅星の如く」というのが相応しいメンバーだ。




 ジャケットの内の写真。上段左から右に、Willie Dixon、Bukka Whiteが2枚、Sonny Terry、Brownie McGhee。下段左から右に、Shakey Horton(ハーモニカ)、Champion Jack Dupree、Lee Jackson(ギター)、Lafayette Leak(ピアノ)、Clifton James(ドラムス)。

 普段は、客が酒や会話を楽しみながら聞いているクラブなどで演奏しているミュージシャン達も多く、この日の様にホールに多く人が集まり、集中して真剣に聴いてくれる客がいる前での演奏に、皆気が入っていたようだ。また、遠くヨーロッパまで来て、英語を話さない人々が、自分達の音楽を理解してくれていることの喜びが演奏に出ているように感じられる。調べてみたところ、今ではCDも品切れ状態で、再発されるか分からず、MP3でネットで購入出来るのが限度らしい。しかし、この様な、優れた録音は多くの人に圧縮ファイルでないメディアで、聴いてもらいたいものだ。

 余談になるが、このLPを聞くと、ドイツの録音機材及び音響技術の高さを感じる。マイクなどは、現在でもドイツ製の「AKG(アーカーゲー)」、そして「ノイマン」が録音スタジオ等でよく使われる。ノイマンのマイクは、ものによってはプレミアが付いて、数百万円もするマイクもある。そのドイツの音響技術の高さの一因に、ヒットラーが関係しているという説がある。ナチス政権の頃、大衆を前にした演説で人々を煽り立てる為に、ヒットラーは高性能なマイクの開発などを技術者に命じたというのだ。科学技術は戦争のたびに進歩していったという悲しい歴史があるが、音響技術も例外ではなかったのだろうか。

 過去の歴史はどうあれ、現在の優れた音響製品が、人々の心の安定と平和のために利用されることを祈りたい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする