このところ、寒い日が続いていますが、
お水取りも終りましたのでそろそろ暖かくなってくるでしょう。
コンピューターが3勝1敗、今日15日、最終の対局があります。
コンピューターと韓国第一人者のプロ棋士、李世乭(イ・セドル)九段との囲碁対局の話です。
新聞でも、テレビでも大きく取り上げられていましたから、大方の人はご存知ですね。 ほんの数年前まで、
コンピューターがプロ棋士に勝つなんて想像もしていなかった、せいぜいアマチュア有段者くらいの実力だった。
今回の対局前の予想でも、恐らく李九段の勝だろう・・と見られていたそうです。
ちなみに、コンピューターとプロとの対戦の歴史を見てみますと、
1994年 チェッカー 世界チャンピオンに勝利
1996 オセロ 〃
1997 チェス 〃
2013 将棋 プロ棋士に勝利
2016 囲碁 世界トッププロ棋士に勝利(目下3勝1敗)
(ウイキペディアより)
で、囲碁については、既に1960年代にコンピューター囲碁の研究が始まっていたそうですが、1970年代
あたりでは、まだ、置かれた石の周辺に発生する影響を関数として扱う手法や、石の生死を判定する
アルゴリズムなどが生まれた程度で、1979年には、攻撃と防御の基本的戦略と、完全につながった石や、
つながってはいないがひと塊の石として認識できるなどの、階層パターンを持った囲碁プログラムが出来ていた。
(ウイキペディア) 80年代中頃には、コンピューター囲碁大会が開催されるなど、世界中でも話題となり、
90年代後半から2000年に入り日本でも“世界コンピューター囲碁大会”が開催されるなど次第に盛り上がりを
みせていましたが、2009年あたりでも、プロ棋士に8子、9子を置いてようやく勝つといった程度だったとか。
この頃の囲碁コンピュータプログラムは、私たちがするような“手筋”を読むやり方に近く、「モンテカルロ
法」と呼ばれる手法による、石の生き死に、地所の大きさなどの評価関数や対局手筋の知識ベースを参照したり
するプログラムであったようです。コンピューターの性能も今日ほどではなかったからかもしれませんが、
プログラムの改良は次々と発表されていきました。
2015年1月、井山名人と4子局を2局打ち、名人が2勝し、同3月の本因坊治勲との3子局でも本因坊が
勝っていました。
それが、2012年にGoogleのXLabが発表した、ランダムに選んだ大量の猫の画像データをディープラーニング
(深層学習)によって コンピュータに読み込ませ、猫の特徴量を示すネットワークを構築することで
“猫が認識”できた ことを契機に、コンピュータ囲碁にこの手法(と、モンテカルロ法を結びつけた手法)を
取り入れた「アルファ碁」(グーグル傘下のベンチャ企業開発)との対局が、このほど行われ、冒頭の戦績を
残すという画期的な“偉業?”となったということです。
ようやく、表題に近づきましたが、このディープ・ラーニングという手法が、もう30年も前から騒がれていた、
人工知能(AI)をこれまでの研究レベルをグッと引き上げた感があります。すなわち、私たちが、いろんな
“花”を区別して、認識していますが、それは、花の形、色、花びらの付き方・・などなどのいろんな特徴を
分析して、記憶して、花を見た時、これは、ユリ、これはチューリップ と判別しています。この時、
花のどの部分を見れば良いか、似た花の場合などは、どこがその特徴か? など、対象によって、特徴を
見分ける部分を選定しているのですね。 コンピューターに大量の画像を入力して、それらの特徴量をどんどん
記憶させ、何層にも分けた分析ネットワークを独自に構成(自己学習)して、認識精度を高めて行く・・
そして目的のものを選定(認識)する。 そんな感じなんでしょうか。
今回の「アルファ碁」では、プロ棋士の対局、16万局、3000万の盤面画像を読み込ませて、次の手を
どこに打てば、最終的に勝つ確率が最も高いかを推論する。 対局相手が、予想外の手を打ってきた場合でも、
混乱せずに冷静に対応できるのだそうです。 特に、スパコンを使用しているのではなく、1200個以上の
CPUを繋いだ装置で計算しているという。 対局の感想としては、プロ棋士なら打ちそうにない手が出て
いたりもするようですが、次第にそれが活きてくるようでもあり、後半になるほど強くなってくるようだとも・・
言われていました。 そして、疲れを知らない・・。
ディープ・ラーニング技術は、自動車自動運転、がん細胞などの画像診断、ロボットの制御など
「人工知能」を発揮した応用分野が今後ますます広がることでしょう。
ランチの会のメンバーの一人が先日、車のディーラーで、自動運転車に試乗した時の感想として、
「ハンドルが、勝手にぐるぐると動くのを見るのは精神的によくない。」といっていました。
最後に、ITmediaページの松尾氏の著書から・・
『ディープラーニングの登場は、少なくとも画像や音声という分野において、「データをもとに何を
特徴表現すべきか」をコンピュータが自動的に獲得することができるという可能性を示している。簡単な
特徴量をコンピュータが自ら見つけ出し、それをもとに高次の特徴量を見つけ出す。もちろん、対象は画像や
音声だけではないし、これだけですべての状況における「特徴表現の問題」が解決されたとはとても思えない。
しかし、きわめて重要なひとつのブレークスルーを与えているのは間違いない。「人間の知能がプログラムで
実現できないはずがない」と思って、人工知能の研究はおよそ60年前にスタートした。いままでそれが実現
できなかったのは、特徴表現の獲得が大きな壁となって立ちふさがっていたからだ。
ところが、そこにひと筋の光明が差し始めている。暗い洞窟の先に、いままで見えなかった光が届き始めた。
できなかったことには理由があり、それが解消されかけているのだとしたら、科学的立場としては、
基本テーゼに立ち返り、「人間の知能がプログラムで実現できないはずはない」という立場をとるべきでは
ないだろうか。
いったん人工知能のアルゴリズムが実現すれば、人間の知能を大きく凌駕する人工知能が登場するのは
想像に難くない。少なくとも、私の定義では、特徴量を学習する能力と、特徴量を使ったモデル獲得の能力が、
人間よりもきわめて高いコンピュータは実現可能であり、与えられた予測問題を人間よりもより正確に解く
ことができるはずである。それは人間から見ても、きわめて知的に映るはずだ。』
追)韓国ドラマ「未生(ミセン)」が人気ですが、韓国では、ミセンと読み、「囲碁用語で、まだ目が2つ
出来ていない状態の不完全な石」を言うらしいです。で、このドラマは、26歳まで囲碁のプロを目指してきたが、
突如、韓国の大手商社に入り、会社知識の無いまま、他の新人と共に苦労しながら成長して行く・・
組織のいろんな人物との絡み合い、業務の難しさ、喜びなどなど、誇張されないリアルな場面が描かれて、
つい、我が身に置いて引き込まれてしまいます。