日没がいくらか早く、日の出が遅くなりました。
『 秋きぬと 眼にはさやかに 見えねども 風の音にぞ 驚かれぬる 』
(藤原敏行 古今和歌集)そんな季節になりました。
ビットコインに代表される暗号資産(仮想通貨)は、今年6月時点の時価総額は約16
兆円を記録し(ネット記事)、着実にその取引量が増加しているようですが、先頃、
FB(フェイスブック)が、この暗号資産を発行する計画があると発表し、大きな話題を
集めました。
(当ブログ、2018.2.2「仮想通貨」に記事アップしています。)
世界中に30億人とも言われるユーザを持つフェイスブックが、今年6月に発表した、
仮想通貨「Libra(リブラ)」のニュースは、大きな衝撃ともいえる波紋を投げかけまし
た。 開始時期は2020年とされていますが、世界中での決済・送金が金融機関を介さず
直接、手数料も安く(コスト効率性)、時間もかからず(即時性)、スマホなどで手軽
に(伝搬性)できるとなれば、金融機関の口座を持つ必要もなくなり、大きく流通する
可能性があるのです。
リブラ
(リブラHPより)
世界の中央銀行、日本では日本銀行が発行する通貨(円)とは別の通貨(仮想通貨=
暗号資産)が流通することになり、想像もつかない現象が起こる可能性があるのですね。
しかし、このことについて、今から40数年も前に提唱していた人がいるんです。
先ごろの新聞(読売新聞8月20日朝刊1面)に紹介されていました。
ようやくタイトルにたどり着きました。
フリードリッヒ・ハイエク
(ネット画像より)
オーストリア・ウイーン生まれの経済学者、哲学者、フリードリヒ・アウグスト・
フォン・ハイエクという人が、1976年に「貨幣発行自由化論」を発表し、通貨の脱国営
化論を提唱したのです。『通貨の自由市場が許可されるべきであり、市場における通貨
間の自由競争によって、最も健全で安定した通貨が発展する』 とするアイデアを提唱
したのです。 すなわち、
1、中央銀行による貨幣の発行の独占をなくす。
2、民間企業が、国境を越えて独自の通貨を発行する。
3、独自の通貨は、特定の財、または複数の財に対する購買力が一定になるように
発行量を調整する。
4、企業は購買力のデータを公表する。著しく不安定だった場合、その通貨は捨て
られ市場から消える。
当時は勿論、インターネットのような手段はなかったし、それまでの歴史の中では
ずっと各国が制定した通貨が流通していたのでした。
もっとも、通貨でなくても、例えば、最近時々見られる、地方自治体などが発行する
金券チケット(通常プレミアム付き)が発行され、地域限定あるいは加盟店のみで流通
できる仕組みがありますが、地域限定、期間限定で実施されています。
ビットコインなど、仮想通貨(暗号資産)が次々と生まれ、投機的な側面も含めて
徐々に広がりつつある中で、世界中に30億人もの利用者を擁するFBが名乗りを上げまし
たので、大きなインパクトとなっています。
日本銀行HPに、以下のように述べられていました。ちょっと長めですが、そのまま
コピペします。
『 「暗号資産(仮想通貨)」とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値で
あり、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。
(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国
ドル等)と相互に交換できる
(2)電子的に記録され、移転できる
(3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
代表的な暗号資産には、ビットコインやイーサリウムなどがあります。 暗号資産は、
銀行等の第三者を介することなく、財産的価値をやり取りすることが可能な仕組みとし
て、高い注目を集めました。
一般に、暗号資産は、「交換所」や「取引所」と呼ばれる事業者(暗号資産交換業者)
から入手・換金することができます。暗号資産交換業は、金融庁・財務局の登録を受け
た事業者のみが行うことができます。
暗号資産は、国家やその中央銀行によって発行された、法定通貨ではありません。ま
た、裏付け資産を持っていないことなどから、利用者の需給関係などのさまざまな要因
によって、暗号資産の価格が大きく変動する傾向にある点には注意が必要です。』
ハイエクという人は、『オーストリア学派の代表的学者の一人であり、経済学、政治
哲学、法哲学 さらに心理学にまで渡る多岐な業績を残した、20世紀を代表する自由主義
の思想家』 と評されていますが、1974年にノーベル経済学賞を受賞してから経済学の
主流に復帰した・・ともあり、かなり前衛的であったのかもしれません。
それにしてもすごいな! と感心した次第です。