今年のノーベル化学賞は、リチュームイオン電池開発の吉野彰氏が受賞されました。
功績は既に、身近な情報機器、電気自動車など現代になくてはならない要素として
使用され、その受賞は今か今かと待たれたそうです。 地球環境を守る大事なエネ
ルギー源としても今後さらに期待されるでしょう。
2019年という年は、従来のがん治療の概念を大きく変える新たな二つの治療法が加わり、
白血病・リンパ腫の歴史に刻まれる年であるのだそうです。
白血病という名前くらいしか知らない者が、このような記事を取り上げるのは、甚だ
おこがましいことと承知しながら、この内の一つの治療法は実は、30年前の日本の基礎
研究が基となって、30年かけて世界をまわり日本に再上陸した画期的な治療法だという
ことで、敢えてここにその概要を紹介しようと思った次第です。
手元の会報の記事、『白血病治療の革命をもたらした三十年前の日本の基礎研究』
(豊島崇徳(としまたかのり)氏、北海道大学大学院教授)を読んで、内容は専門用語が
たくさんあり、詳細な部分は理解できていませんが、その流れをご紹介し、今日的な
白血病に対する治療法の意義を伝えられればと思います。
(ネット画像より)
1980~90年代にかけて九州大学免疫学教室のグループは、臓器移植や造血幹細胞移植の
寛容(拒絶反応させない)を導入するための動物実験を行っていたところから始まるので
す。つまり、移植後、早期に大量の抗がん剤(シクロフォスファミド)を投与する方法が
発見されたのです。しかし、当時は、このような大量投与は、所詮マウスの話しで、ヒト
への応用などは考えられなかったのでした。
(ネット画像より)
もともと、造血幹細胞移植は白血病・リンパ腫などに対しての最終的な治療法として、
1990年に確立されていたのですが、これは、ドナー免疫細胞による 患者のがん細胞のみ
ならず正常臓器をも攻撃する免疫療法であるので、そのリスクを最小にするため、ドナー
とレシピエント(移植を受ける患者)のHLA(ヒト白血球抗原=白血球の血液型)一致が
原則だったのです。 この場合、兄弟姉妹間でHLA適合ドナーが見つかる確率は1/4とい
われ、少子化傾向にある現在、骨髄バンクなどボランティアドナーに頼らざるを得ない。
そこで、HLA完全一致ではなく、両親から受け継いだ1つのHLAが適合した「HLA半合致
ドナー」からの移植が考えられたのです。これだと、血縁者間であればお互いにドナーに
なりえるのでドナー不足は一気に解決できるというのです。
ここに、30年前の抗がん剤大量投与法を応用して、ついにHLA半合致移植に成功したの
です。日本で生まれたアイデアが国境を越えて臨床応用され、世界の造血幹細胞移植の
景色が一変したのです。 筆者の豊島氏は、当時の実験に関わっていた一人として、とり
わけ感慨深いことと思います。
もう一つの治療法は、遺伝子改変キメラ型T細胞療法というもので、成分採血装置に
より、患者からリンパ球が採取され、遺伝子改変後 患者に輸注されるというもので、
特定の白血病に対して今年認可され、今後も適応が拡大されると見込まれています。
この方法は企業主導の技術開発によるものであり、現在は超高額(3千万円超)であり、
その意味での制約があると言えるかもしれません。
前者の、HLA半合致移植法は、新規薬剤の必要はなく、ドナー確保も比較的容易であり
当面有効な治療法だと考えられそうす。
水泳の 池江璃花子選手は、入院して8か月になりますが 治療を続けているのですね。