広範囲にわたった台風19号の爪痕は、明らかとなるにつれて、その
被害の大きさに 今更驚いています。こんなに、多くの箇所で河川の
決壊、氾濫が起きるとは・・驚きです。被災された方々の大変さは
想像を絶するばかりです。お見舞い申し上げます。
皇嗣が新たに皇位に就くことを「即位」といいますが、これには手順があります。先ず、
『践祚(せんそ)』が行われ、前天皇から引き継ぐ新天皇の登場の儀で、今回は譲位でし
たから、それは 5月1日に行われました。つまり、『剣璽等承継の儀』いわゆる三種の神器
を引き継ぐ儀式でした。
平成天皇の場合は、昭和天皇崩御に伴う喪明けの平成2年に行われています。
践祚に続いて、新天皇が皇位に就いたことを天下に広く表明するための儀礼『即位礼』
が行われます。これは、来週、10月22日の『即位礼正殿の儀』で、平安絵巻さながらに執
り行われるそうです。
今年限りの特例の祝日に制定されています。 今回、台風19号で、広域に大きな災害を
受けていますから、関係者の内には、これらのお祝いごとを云々するかも知れませんが、
既に195か国の要人をお招きしており、内外の代表2500人が参列すると言いますから、すぐ
さま変更は出来ないかもしれません。
即位礼は、正殿の儀に続いて、パレードがあり、先日、ルートを確認されていました。
そして、最後に、天皇が皇位継承てに際して行う祭祀である『大嘗祭(だいじょうさい)』
が行われます。7世紀の天武天皇の頃から始まった伝統的な皇位継承儀礼です。それまでは、
中国皇帝の継承儀礼の摸倣で権威化してきましたが、天武・持統政権は、ヤマトのアイデ
ンティティーを象徴する儀礼として大嘗祭という儀礼を創出したのだそうです。
今年11月14~15日に皇居東御苑にて行われます。東御苑は、現在も開園されていますが、
天守台、大奥跡、富士見多門あたり一帯は、大嘗宮建設のため、立ち入り制限されている
ようです。
大嘗祭(1990年)
(ウイキペディアより)
大嘗宮模型(1990年)
(ウイキペディアより)
践祚、即位礼の儀式は、国が行う、「国事行為」ですが、この大嘗祭は、公的な皇室
行事として行われるのです。 大嘗祭というのは、新天皇が一世に1度だけ行う、国家、
国民のために、その安寧、五穀豊穣に感謝し、また祈念し、その年の新米を食する儀式で
す。 毎年秋(11月23日)に行う『新嘗祭』とその意味するところは同じなんですね。
これは、神事であり、政教分離の観点から問題があるのではないか との提訴がなされて
いたり、また、秋篠宮さまが「国費ではなく、天皇家の私的生活費の『内廷費』を充てる
べきだ」「大嘗祭のために祭場を新設せず、新嘗祭など宮中祭祀を行っている『新嘉殿
(しんかでん)』で行い、費用を抑える」などの具体的な提案を宮内庁に示されていた
そうです。
政教分離に関しては、大嘗祭のみならず、践祚、即位礼も含めた議論としてこれまでも
論議されてきているようです。
ま、いろいろな意見もありますが、新天皇の主要な皇位継承儀式が、この秋、相次いで
行われるのです。古事記・日本書紀からの伝統に基づいているのですね。
工藤隆氏(大東文化大学名誉教授)によれば、『この天武・持統天皇期にスタートした、
国家運営に必要な実利性重視の行政組織と、アニミズム(訳注:精霊信仰)系文化の伝統
を結晶させた祭祀機関からなる統治機構は 武士政権時代に移行した後も生き続け、明治の
近代化では国家神道としてさらに強化されさえした。敗戦後の民主国家の日本においてさえ
も、象徴天皇制としてその基本構造が維持されていることを見据えなければ、現代日本社会
の深部構造は把握できないのである。』 つまり不思議な国なんですね。
また、先の新聞(10月11日読売)に、即位礼の装束について、記事がありました。
『天皇陛下は、「束帯」を着用され、明治までは、参列する公家や首相ら政府高官も束帯姿
でしたが、新憲法下で行われた平成の即位礼では、宮内庁からは、伝統にのっとり束帯着用
が要望されたが、国民主権の民主主義の国になり、その国民の代表として相応しくないとの
理由から、現代の正装えんび服で参列した、とあり、今回の即位礼も陛下や皇族方は平安朝
の装束を着用されるが、首相、閣僚は洋装で参列する』と。
普段は、何気なくやり過ごしている事柄ですが、ちょっと立ち止まってみました。
ベランダのキンモクセイは、甘い良い香りを放っています。
(10月15日)