蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

人新世  (bon) 

2020-04-07 | 日々雑感、散策、旅行

   金星がきれいに光っています。夜8時ころ、西の空低めのところにマイナス
     4.4等といいますから、満月でも十分見ることができます。 明日、8日は
     今年最大のスーパームーン(満月)です。

 

 あまり見慣れない言葉ですが、地質時代区分の最も新しい時代を「完新世」(かん
しんせい)といい、この完新世の次に来る時代を「人新世」(じんしんせい)と呼ば
れているのだそうです。

 最近手元に届いた会報に「人新世におけるグローバル・コモンズ」(石井菜穂子氏、
地球環境ファシリティ議長兼CEO)と題する、地球の未来すなわち人類社会の持続可
能性に対する警鐘ともいうべき壮大な論調が展開されていました。

 その要点は、後述するとして、先ずは、地質時代における完新世や人新世について、
理解を進めてみました。

 地質時代区分は、もっとも大きな区分は「代」(古生代、中生代、新生代など)で、
それが「紀」(白亜紀、第四紀など)に分かれ、さらに「世」(更新世、完新世など)
に分かれるとあります。あの5億4000年前のカンブリア爆発は、“古生代カンブリア
紀”なんですね。

  地質時代区分(ネット毎日2016.1.28より)  (nikken-kisoより)
          
        (両図は、時代の向きが逆で見難いですがご容赦ください。)

 で、完新世は、1万2000年前から現在までの“新生代第四紀完新世” の時代なんで
すね。 1万2000年前というと大体、縄文時代あたりと考えられますが、この時期は
地質的に、次のように述べられています。

  • 気候環境が一転して地球全体が温暖化し、氷河が後退した。
  • 地球各地が湿潤化して森林が増加し、草原が減少してマンモスやトナカイなど
    の大型哺乳類の生息環境が縮小し、彼らを絶滅させた。
  • 期間が短いため大規模な大陸の移動などはないが、完新世の初期には、大陸
    氷床の融解によって海面が130m以上急激に上昇した。特に完新世の気候最温暖
    期と呼ばれる時代には、現在より3メートルから5メートルほど海水準(陸地に
    対する海面の相対的な高さ)が高かったとされる(縄文海進)。その後、海面
    は緩やかに下降し、海水準は直近の2,000年ほどは比較的安定している。

 ところが、この完新世の時代は終わったとする意見が学者の中にも定着し始め、
いろんな議論はありますが、大体20世紀の半ばあたりから、完新世(Holocene)が
終わり新しい「Anthropocene」(アントロポセン)つまり、人類の時代という意味の
「人新世」に入ったのではないかとみなされているのです。
 どういうことかといえば、人類の活動が、かつての小惑星の衝突や火山の大噴火に
匹敵するような地質学的な変化を地球に刻み込んでいることを表わしているのだそう
です。
 つまり、『20世紀後半における人間活動の爆発的増大を指す言葉である。第二次世
界大戦後に急速に進んだ人口の増加、グローバリゼーション、工業における大量生産、
農業の大規模化、大規模ダムの建設、都市の巨大化、テクノロジーの進歩といった
社会経済における大変化は、二酸化炭素やメタンガスの大気中濃度、成層圏のオゾン
濃度、地球の表面温度や海洋の酸性化、海の資源や熱帯林の減少といったかたちで
地球環境に甚大な影響を及ぼしている。』ということで、産業革命でもなければ新石
器時代でもなく、はたまた農業の開始でもない ごく最近のことなんですね。
 多くは核開発・産業化・都市化の結果として説明されているのです。 人新世なる
新造語「Anthropocene」は anthropo-(of man、人の…)+ -cene(new、…新)の
意味なんだそうです。

          

 で、冒頭の会報記事、石井氏の論点は、この人新世の問題について厳しく述べられ
ているのです。

 これからの10年は、人類社会の持続可能性(サステナビリティ)に向けた重要な
年であるとして、具体的には、2030年を目指した、国連加盟193か国が合意した『持
続可能な開発目標(SDGs)』や温室効果ガス半減に向けた『気候変動に関するパリ
協定』も2030年を目途としているにもかかわらず、現実には、これら掛け声だけで、
実質的にサステナビリティに向けた人類の力を結集することは困難な状況になってい
るというのです。

 現状すでに、地球システムが本来持っているレジリアンス(回復可能性)が限界に
達しつつある兆候があり、温暖化による北極圏の氷の融解はじめ、アマゾンやオース
トラリアの大規模火災、大きな台風、水害、猛暑等により多くの命や財産が失われる
とともに生物の多様性をも失われているのです。特に、生物多様性については1970年
以降60%もの多様性が失われ、あっと気が付いた時には花粉を運ぶ蜂がいなくなって
農作物ができない、なんてことにならないとも限らないのです。

      絶滅危惧種 最近の個体数の減少傾向
       (ネット画像より)

 人類は、地球システムを壊し続けているという。 気候システム、生物多様性と
それを支える熱帯雨林、土地利用、海洋、リンや窒素(栄養素)の循環などを特定し、
数値化して限界を示しており、すでに限界値を超えているという。
 完新世よりはるかに不安定な人新世の地球環境を生きてゆくためにはどのようにし
なければならないか、いくつかの大胆な提言がなされているのです。
以下に、そのキーワードと若干の解説をここに参照させていただきました。

  • 経済・社会システムの大転換が必要 化石燃料に依存したエネルギーシステム、
    急速な都市化の進行、森林破壊、土壌劣化をもたらす食糧生産のあり方。生産・
    消費の直線的思考などなどを抜本的に見直し転換する必要があるというのです。
     そのためには、政策、ビジネス、消費者、市民活動などの様々な分野における
    リーダーシップが重要になるとともに、我々一人ひとりのライフスタイルの見直
    しや価値観を変えることができるかどうかにかかっている。
    (現状の新型コロナ対策にも同じように言えますね。)
  • 科学技術、デジタル革命の可能性と責任 第4次産業革命とも称されるデジタル
    革命は、科学技術と実社会を急速に結び付け世界を大きく変える潜在力を持って
    おり、必要な経済・社会システムの転換に寄与することができるが、それは、単
    に既存システムを強化するだけに留まるならば、地球環境と人類社会の衝突を
    加速するだけに終わってしまう。すなわち地球のサステナビリティに向けたシス
    テム転換を実現するものでなければならない。
  • そして、人類の共有財産(グローバルコモンズ)=地球システムを如何に管理す
    るか という問題で、今後10年間に、このようなシステム転換をどの様に実現し
    てゆくかということである。しかし、冒頭に述べてきた通り現実には、実質的な
    改善の方向に向かっていないといえるのではないか。
     我々が守るべき地球システムの諸要素、すなわち気候変動、生物多様性、土地、
    海洋など全人類の生存基盤であるかけがえのない財産(グローバルコモンズ)は、
    我々一人ひとりからコミュニティ、さらに国レベルで管理することは勿論である
    が、さらに世界レベルで管理の仕組みを構成することが必要であるのです。

 

 このような視点から、現状に警鐘を発した論文で、要は、この地球システムを左右
する『人新世』では、人類と地球システムの衝突が激化し、人類社会は危機に向かっ
て進んでいると指摘されています。

 最後に、『早急に、食料システム、都市システム、生産・消費システム、エネルギ
ーシステムを転換しなければならない。すべての人、一人ひとりが覚悟を決めて転換
の原動力にならなければならない』と結ばれています。

         

 目下、新型コロナで、日本では今日、緊急事態宣言が発せられましたが、世界では、
ロックダウンを実施した都市もあるなど、原因は違いますが、ここまで深刻にならな
いとなかなか実行できない点では、同じような性質とみなせるでしょう。
 そして、人新世における問題は、新型コロナのようなウイルスではなく、じわじわ
と地球基盤のバランスが崩れる深刻問題なんですね。

 

 

 

 

 

コメント
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