水の問題(水が不足する)については、当ブログ、2019.3.23「世界水の日」 および、
2017.8.17「サステナビリティ」に取り上げていますが、今また、手元の会報の「グロー
バルな水リスクとSDGs」(沖 大幹氏、東大未来ビジョン研究センター教授、国連大学
上級副学長)に触れて、この問題の根源は、乾燥する自然環境ではなく、国の経済や
政治的安定にあるとの視点に深く同調しましたのでここに取り上げました。
地球が誕生してからというもの『水の惑星』とよばれ、40億年以上も地球の表面を水は
循環しているのです。化石燃料は使えばその分なくなってしまいますが、水は地球上を
循環しているのです。それなのになぜ、世界で水が不足しているのでしょうか?
しかし、世界におよそ14億km³ある水は、97.5%は海水で、淡水は2.5%、その内南北極
の氷などを除けば 0.8%となり、さらにその大半が地下水で、普通に利用可能な河川や
湖沼の水は僅か0.01%に過ぎないのだそうです。
水の惑星(地球)
(ネット画像より)
持続可能な開発目標(SDGs)の2015年目標の5番目に「グローバルリスクとして水危機」
が位置付けられ、さらに、2030年目標(アジェンダ)でも6番目に「すべての人々の水と
衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」とうたわれているのです。
つまり、全ての人々にとって「安全で適切な飲料水やトイレを誰もが利用できるように
するとともに、水系生態系のほごや回復を2030年までに確固たるものにする」ということ
が目標なんですね。
幸い、2015年の目標「2015年までに、安全な飲料水および衛生施設を継続的に利用でき
ない人々の割合を半減する」は、2010年に達成されていますが、それでも、181の国や地域
では、基本的な飲料水サービスの普及率が75%を超えているのに対し、8億4400万人が置き
去りにされていて、中でも1億5900万人はいまだに川や湖から組んだ水を飲んでおり、トイ
レなどの衛生施設の状況改善はさらに遅れていて、23億人が基本的衛生サービスすら利用
できず、8億9200万人は未だに野外で排泄しているという。
アフリカや南アジアなどの地域で、下痢などの感染症で亡くなる5歳未満の乳幼児が
年間約36万人もいるそうです。
SDGs2015報告(一部)
(水問題、2016 .7 .6 瀧川ゼミより)
この日本では、最近でこそ“水を買って飲む”時代になりましたが、ちょっと前まで、
水と空気はタダ・・みたいな印象がありました。日本は水が潤沢ですね。しかし、時々、
渇水により取水制限があったりもしますが、ほぼ潤沢です。
しかし、首都圏や大阪など大都市では、自然状態で利用できる水の量は、年間1人あたり
400m³で食料生産も含めた必要量のわずか1/4に満たないのだそうです。 利根川や多摩川
などの大規模な水資源開発、びわ湖出口の瀬田の人工的な堰によって“水がめ”として
利用しているからに他ならないのです。
日本が水に恵まれているのは、雨が多いからではなく、水を蓄える施設、浄化・消毒
技術、配水路の整備・維持のお蔭なのですね。
しかし、喜んでばかりはいられなく、グローバル化した現在の経済下では、例えば農産
物供給国の干ばつは、もはや世界各国に問題が波及することになってしまうのです。
(ネット画像より)
氏の論文での主張は、『 経済的に発展途上であったり、内乱などで国の体制が整って
いなかったりすると、地理的、季節的に偏在し、単価は安くても、大量に必要な水を上手
にマネジメントする水インフラとガバナンスが不充分となり、安全な水を安定して供給
することが出来ず水不足で困ることになる。そういう意味では、水不足は乾燥した気候の
問題ではなく、社会の問題なのである。』とあります。
そして、『 基本的な飲料水サービスが得られる人口割合が上昇して、水汲み労働によ
る女性の社会進出や子供の教育機会の改善が促進されれば、自律的な開発が促され結果と
して新たな市場の発展や世界情勢の安定につながる。』と、SDGsの意義に期待を寄せられ
ています。
最後に、自然条件として水が絶対的に不足する国でも、食料を輸入する経済力があれば、
平均的に水消費の9割を占める農業用水を節約できるし、海水の淡水化によって水道の
原水とすることもできる。
要は、途上国などにおける開発の支援が必要であることと、政治的安定や紛争の解決が
基本であり、ここに世界の協力が最重要であるというのですね。
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