伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

八月の路上に捨てる

2007-02-19 08:00:43 | 小説
 前回の芥川賞が図書館の棚に転がっていたので読んでみました(たいていの図書館ではまだ予約数ヶ月待ちだと思うんですが)。
 表題作は脚本家志望を持ちつつうまくいかず自販機の補充のバイトをする夫と編集者志望で雑誌編集の仕事に就きながらやめた妻が次第にすれ違っていき、不倫・離婚に至る夫婦の模様をバイト先の同僚との人間模様を絡ませつつ描いたもの。うーん、いかにもありそうって夫婦生活の機微を描いてしみじみとした読み物に仕上がっています。傑作かとか新鮮さはといわれると、つまり「芥川賞?」って聞かれると、どうかなあって思いますけど。
 カップリングされた短編「貝からみる風景」は今のところうまくいっている夫婦の生活の機微って感じ。
 破綻した方にしてもうまくいっている方にしても、夫婦関係の話を並べられたら、ちょっと妻は困るでしょうね。芥川賞受賞の時の取材で妻(角田光代)が「受賞作は読んでませんけど」って答えていたのは、むべなるかな。


伊藤たかみ 文藝春秋 2006年8月30日発行
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ヒストリー・オブ・ラヴ

2007-02-19 07:20:59 | 小説
 数十年前に書いた小説「ヒストリー・オブ・ラヴ」が知らぬうちに出版され、売れなかったその小説の1冊を送られた母にその登場人物にちなんで名付けられた少女が、迫害を逃れてアメリカに渡ったユダヤ人の作者に巡り会うというストーリーの小説。
 ニューヨークに住むユダヤ人の老人の元錠前屋レオ・グルスキ、レオ・グルスキがかつて愛した少女アルマ・メレミンスキ(アルマ・モーリツ)とその子どもたち(長男は実はレオ・グルスキの子)、ヒストリー・オブ・ラヴを出版した作者とされるツヴィ・リトヴィノフとその妻ローサ、ヒストリー・オブ・ラヴを夫から送られて娘をアルマと名付けた母と娘アルマ・シンガーと弟バードの4組の動きがバラバラに展開し、ちょっと読みづらい。レオ・グルスキとアルマと息子まではすぐなじめるのですが、残りの展開が、だからどうだっていうの?って感じで、少しいらいらします。出張の往復で時間がたっぷりあったので読み切りましたが、そうでなかったら途中でぶん投げた可能性大。
 過去にヨーロッパ書いた小説が南米で青年と妻を感動させてその名を付けられた娘と作者がニューヨークで出会うという、因果はめぐるという話ですが、自分の書いたものが見知らぬ人の人生に与える影響というか影響を与えたいという作家の願望を込めた夢をテーマにしたもので、読まされる身には、そういうこともあるかもしれないけどだからどうしたのという思いを持ちました。


原題:The History of Love
ニコール・クラウス 訳:村松潔
新潮社 2006年12月20日発行 (原書は2005年)
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