名門私立高校を舞台に、演劇部の美少女勝堂真衣、過去のある美少年岩崎恭、絵画力のある少女迫木綿子、落ちこぼれ美術教師磯貝努らが送る日常のけだるさに満ちた小説。
ストーリーは、メインの主人公をおかずにこの4人を順次動かして展開しています。4人とも家庭に問題を抱え、木綿子は学校で仲間はずれにされながら絵に打ち込むことで、真衣と磯貝、恭は愛情もなく性関係を持ち続けることで、閉塞感に満ちた学園生活をしのいでいるといった風情です。一応、木綿子は絵に、真衣は演劇に打ち込む姿が書かれているのですが、それで何かを切り開くとか、力強さは感じられません。明るい展望は描かれず、けだるさ・かったるさを振り払うのではなくしのいでいるという感じです。学園で数々の噂が話題になりながらその真相が見えないのも、真実を明らかにしようという意欲が学園にも登場人物にも感じられないからでしょう。
園長の病気の進行が表の軸とされているのに対して、ジコチュウで高慢な、そして傷つきやすい美少年恭がトリックスター的に舞台回しをして、自己崩壊していくのが、ストーリーの対抗軸になっていると読みました。その中で、相対的に強く見えた真衣が、どうも主体性が見えませんでした。冒頭では美少年恭の誘いを無視して磯貝を選びながら、後半では恭に振り回され、その心理の変化なんかは読み取れません。一人くらい高慢な美少年恭を正面からはねつける存在がいて欲しかったという意味でも、真衣は毅然としていて欲しかったんですが。
結局は、穏健な道を歩んだ木綿子にほのかな期待を感じさせて話は終わりますが、スッキリした解決は何もなく、けだるいままです。ただ、けだるさ・閉塞感に満ちているのですが、それほど重苦しくないのが救いというか不思議な感じです。
タイトルの「学園のパーシモン」は生徒の一人が主宰していた自殺愛好会サイトの名称から。それ自体はストーリーの中でそれほどの位置づけではないのですが。

井上荒野 文藝春秋 2007年1月30日発行
ストーリーは、メインの主人公をおかずにこの4人を順次動かして展開しています。4人とも家庭に問題を抱え、木綿子は学校で仲間はずれにされながら絵に打ち込むことで、真衣と磯貝、恭は愛情もなく性関係を持ち続けることで、閉塞感に満ちた学園生活をしのいでいるといった風情です。一応、木綿子は絵に、真衣は演劇に打ち込む姿が書かれているのですが、それで何かを切り開くとか、力強さは感じられません。明るい展望は描かれず、けだるさ・かったるさを振り払うのではなくしのいでいるという感じです。学園で数々の噂が話題になりながらその真相が見えないのも、真実を明らかにしようという意欲が学園にも登場人物にも感じられないからでしょう。
園長の病気の進行が表の軸とされているのに対して、ジコチュウで高慢な、そして傷つきやすい美少年恭がトリックスター的に舞台回しをして、自己崩壊していくのが、ストーリーの対抗軸になっていると読みました。その中で、相対的に強く見えた真衣が、どうも主体性が見えませんでした。冒頭では美少年恭の誘いを無視して磯貝を選びながら、後半では恭に振り回され、その心理の変化なんかは読み取れません。一人くらい高慢な美少年恭を正面からはねつける存在がいて欲しかったという意味でも、真衣は毅然としていて欲しかったんですが。
結局は、穏健な道を歩んだ木綿子にほのかな期待を感じさせて話は終わりますが、スッキリした解決は何もなく、けだるいままです。ただ、けだるさ・閉塞感に満ちているのですが、それほど重苦しくないのが救いというか不思議な感じです。
タイトルの「学園のパーシモン」は生徒の一人が主宰していた自殺愛好会サイトの名称から。それ自体はストーリーの中でそれほどの位置づけではないのですが。

井上荒野 文藝春秋 2007年1月30日発行