業績不振の老舗ホテルに、大学教授が投資ファンドから送り込まれて社長に就任し、ホテルの人員を20%減らして各部署での残留者・異動者を全従業員による選挙で決めるという実験を行い、従業員たちは戸惑いながらも選挙運動や、新しい体制の下での業務を続けるうちに客へのサービスやチームワークに目覚め・・・という小説。
落下傘経営者の思いつきに翻弄され、ほとんど知らない縁のない部署にまで投票するシステムの下での選挙結果を理由に労働者が解雇され、残留した従業員も絶えざる競争に追い立てられるという、無責任で冷酷な経営者による、経営不振の労働者へのしわ寄せを、競争を生きざるを得ない労働者が自分を鼓舞しポジティブに捉えようとする仕事・お客様サービスへの「目覚め」で覆い隠しあるいは正当化する「やりがい搾取」が美談化された展開です。それが微笑ましく共感を呼ぶような筆致で書かれているのが憎らしい/困ったところです。

桂望実 角川書店 2016年6月1日発行
落下傘経営者の思いつきに翻弄され、ほとんど知らない縁のない部署にまで投票するシステムの下での選挙結果を理由に労働者が解雇され、残留した従業員も絶えざる競争に追い立てられるという、無責任で冷酷な経営者による、経営不振の労働者へのしわ寄せを、競争を生きざるを得ない労働者が自分を鼓舞しポジティブに捉えようとする仕事・お客様サービスへの「目覚め」で覆い隠しあるいは正当化する「やりがい搾取」が美談化された展開です。それが微笑ましく共感を呼ぶような筆致で書かれているのが憎らしい/困ったところです。

桂望実 角川書店 2016年6月1日発行