転職サイト「リクナビNEXT」の元編集長で転職支援サービス事業を運営する著者が転職求職者向けに転職市場の実情などを説明する本。
転職市場では年齢が35歳、40歳、45歳で事情が大きく変わり、転職により収入が増える可能性は年齢が上がると小さくなる(35~38ページ)、3回以上の転職は特に年齢が若いほど不利に評価される(40~41ページ)といったことに加えて、「1件の求人に対して、人事担当者が受け付ける応募者は(職種や地域によってかなり幅がありますが)約30人存在すると仮定しておきましょう」(39ページ)と説明されています(30倍の根拠はまったく説明されていません。「仮定しておきましょう」でその後はまるで既成事実のように話が進められます)。転職市場は求職者が思っているよりも厳しくライバルが多く市場の評価は自己評価より低いのだから、あれこれと慎重な検討をするよりもまずは応募してみて条件も高くしすぎずに妥協することを勧めることに通じます(反面で、転職市場で魅力のない人物は転職など考えずに現職にとどまった方がいいということにもなりますが)。
大企業の事務系の管理職など、自社での経験はその企業の風土や恵まれた業務環境、企業のブランド、支えてくれた部下の質などによる部分が多く、過去の成功も(自己評価とは異なり)自身の力量による部分は多くなく、他社で使い物になるかは疑問があるということは、よく言われることで、過去にやってきたレベルの努力を続ければ他社でも自分にニーズがあり過去の待遇水準をキープできるという幻想を持つ求職者に対して「会社を超えても通用する競争優位なスキル水準を獲得するために、これまでの2倍、3倍の努力が必要になる」(81ページ)と諭すことはいいと思うのですが、同業種・同職種にこだわる転職者にまったく未経験の分野への転職の成功例を挙げて煽るのもいかがなものかと思います。
たぶん、その成功例の陰に、やっぱり失敗したという例が多数あるのではないかと思いますし、求職条件をエージェントのすすめに応じて柔軟にしろ(妥協しろ)というのは、エージェントにとってとりあえず成約させるのが容易になる(エージェントの利益になる)話ですから、そこは割り引いて聞いておくべきだろうと思います。
黒田真行 日本経済新聞出版社 2017年5月24日発行
転職市場では年齢が35歳、40歳、45歳で事情が大きく変わり、転職により収入が増える可能性は年齢が上がると小さくなる(35~38ページ)、3回以上の転職は特に年齢が若いほど不利に評価される(40~41ページ)といったことに加えて、「1件の求人に対して、人事担当者が受け付ける応募者は(職種や地域によってかなり幅がありますが)約30人存在すると仮定しておきましょう」(39ページ)と説明されています(30倍の根拠はまったく説明されていません。「仮定しておきましょう」でその後はまるで既成事実のように話が進められます)。転職市場は求職者が思っているよりも厳しくライバルが多く市場の評価は自己評価より低いのだから、あれこれと慎重な検討をするよりもまずは応募してみて条件も高くしすぎずに妥協することを勧めることに通じます(反面で、転職市場で魅力のない人物は転職など考えずに現職にとどまった方がいいということにもなりますが)。
大企業の事務系の管理職など、自社での経験はその企業の風土や恵まれた業務環境、企業のブランド、支えてくれた部下の質などによる部分が多く、過去の成功も(自己評価とは異なり)自身の力量による部分は多くなく、他社で使い物になるかは疑問があるということは、よく言われることで、過去にやってきたレベルの努力を続ければ他社でも自分にニーズがあり過去の待遇水準をキープできるという幻想を持つ求職者に対して「会社を超えても通用する競争優位なスキル水準を獲得するために、これまでの2倍、3倍の努力が必要になる」(81ページ)と諭すことはいいと思うのですが、同業種・同職種にこだわる転職者にまったく未経験の分野への転職の成功例を挙げて煽るのもいかがなものかと思います。
たぶん、その成功例の陰に、やっぱり失敗したという例が多数あるのではないかと思いますし、求職条件をエージェントのすすめに応じて柔軟にしろ(妥協しろ)というのは、エージェントにとってとりあえず成約させるのが容易になる(エージェントの利益になる)話ですから、そこは割り引いて聞いておくべきだろうと思います。
黒田真行 日本経済新聞出版社 2017年5月24日発行