アメリカ・イギリスへの宣戦布告直前の東京で、入試を控えた(旧制)高校生二朗と、二朗宅に止宿している怪しげな「伯爵夫人」が、ホテルの茶室に同伴して過ごす間に様々な回想・妄想を拡げる観念的妄想的官能小説。
蓮實重彦というと、私には昔の記憶で仏文というかフランス現代哲学とかの類いの難しげなことを書いている学者さんというイメージだったのですが、こういう放送禁止用語満載の小説を書いていたのですね。そこにまず驚きがあります。装丁はおとなしいのですが、大半のページに性器を示す言葉が書かれているので、電車の中で読むのは、かなり恥ずかしい。といって、文体のせいか、荒唐無稽な妄想系のエピソードが多いせいか、それほど性的な興奮を感じるわけでもない。どこか中途半端な宙ぶらりんな読中感・読後感を持ちます。
文芸誌(「新潮」)に連載ではなく一気に掲載されたようですが、繰り返しが多い。老人の話がくどい、ということではなくて、童話的な繰り返しパターンがとられているのだと思います。ホテルの回転扉が「ばふりばふり」と回る、快感を得ると「ぷへー」とうめいて果てる/達する/失神するなどの繰り返しが、次第に快く感じられます。
時代・場所・謎の伯爵夫人という設定、荒唐無稽な/「シュール」な幻想の展開による「異界」感を、癖のある文体で味わうというところが売りなのだろうと思いますが、私には、それに飽きずに付き合うには半分くらいの長さの方がいいかなと思いました。
蓮實重彦 新潮社 2016年6月20日発行
三島由紀夫賞受賞作
蓮實重彦というと、私には昔の記憶で仏文というかフランス現代哲学とかの類いの難しげなことを書いている学者さんというイメージだったのですが、こういう放送禁止用語満載の小説を書いていたのですね。そこにまず驚きがあります。装丁はおとなしいのですが、大半のページに性器を示す言葉が書かれているので、電車の中で読むのは、かなり恥ずかしい。といって、文体のせいか、荒唐無稽な妄想系のエピソードが多いせいか、それほど性的な興奮を感じるわけでもない。どこか中途半端な宙ぶらりんな読中感・読後感を持ちます。
文芸誌(「新潮」)に連載ではなく一気に掲載されたようですが、繰り返しが多い。老人の話がくどい、ということではなくて、童話的な繰り返しパターンがとられているのだと思います。ホテルの回転扉が「ばふりばふり」と回る、快感を得ると「ぷへー」とうめいて果てる/達する/失神するなどの繰り返しが、次第に快く感じられます。
時代・場所・謎の伯爵夫人という設定、荒唐無稽な/「シュール」な幻想の展開による「異界」感を、癖のある文体で味わうというところが売りなのだろうと思いますが、私には、それに飽きずに付き合うには半分くらいの長さの方がいいかなと思いました。
蓮實重彦 新潮社 2016年6月20日発行
三島由紀夫賞受賞作