アニメ映画監督の作者が、自ら監督制作したアニメ映画を小説化した青春小説。
親の転勤による転校で同じ私立中学を目指していた幼なじみの篠原明里と引き裂かれ、さらに自らが種子島に転校となることになった中1の遠野貴樹が、大雪の日に約束に大幅に遅れてたどり着いた最後の逢瀬の思い出を綴る第1話、種子島に転校した高校生の貴樹に恋い焦がれるジモティのサーファー澄田花苗の片思いの心情を綴る第2話、東京の大学を出てシステム・エンジニアとなった貴樹が学生時代にバイトの同僚2人、社会人になって勤務先の同僚水野理紗と交際するが疲れて別れてゆき、いかにも予想される結末ではあるが幼き日の篠原明里との逢瀬を思い出すという第3話の短編連作です。
トップエリートではないものの、進学は思い通りに行き、仕事でも評価が高く、モテモテの貴樹が、それでももつ喪失感・虚無感、幼き日の初恋への幻想的な美化も含めたノスタルジーがテーマと思われますが、恵まれた人生を送る男の贅沢な悩みに読者がどこまでついてくるのかは興味深いところです。
入籍前日の女性が「あの男の子との想い出は、もう私自身の大切な一部なのだ。食べたものが血肉となるように、もう切り離すことのできない私の心の一部。」(168ページ)と言い、中1のときに書いた渡せなかったラブレターを保存して「いつかもっと歳をとったら、もう一度読んでみようと思う」「それまでは大切にしまっておこう」(175ページ)と思うでしょうか。いかにも男性サイドのノスタルジーに思えるのですが。
新海誠 角川文庫 2016年2月25日発行(単行本は2007年)
親の転勤による転校で同じ私立中学を目指していた幼なじみの篠原明里と引き裂かれ、さらに自らが種子島に転校となることになった中1の遠野貴樹が、大雪の日に約束に大幅に遅れてたどり着いた最後の逢瀬の思い出を綴る第1話、種子島に転校した高校生の貴樹に恋い焦がれるジモティのサーファー澄田花苗の片思いの心情を綴る第2話、東京の大学を出てシステム・エンジニアとなった貴樹が学生時代にバイトの同僚2人、社会人になって勤務先の同僚水野理紗と交際するが疲れて別れてゆき、いかにも予想される結末ではあるが幼き日の篠原明里との逢瀬を思い出すという第3話の短編連作です。
トップエリートではないものの、進学は思い通りに行き、仕事でも評価が高く、モテモテの貴樹が、それでももつ喪失感・虚無感、幼き日の初恋への幻想的な美化も含めたノスタルジーがテーマと思われますが、恵まれた人生を送る男の贅沢な悩みに読者がどこまでついてくるのかは興味深いところです。
入籍前日の女性が「あの男の子との想い出は、もう私自身の大切な一部なのだ。食べたものが血肉となるように、もう切り離すことのできない私の心の一部。」(168ページ)と言い、中1のときに書いた渡せなかったラブレターを保存して「いつかもっと歳をとったら、もう一度読んでみようと思う」「それまでは大切にしまっておこう」(175ページ)と思うでしょうか。いかにも男性サイドのノスタルジーに思えるのですが。
新海誠 角川文庫 2016年2月25日発行(単行本は2007年)