山岳ベースに招集されて参加した革命左派の女性兵士たちが、連合赤軍の結成、山岳ベースでのリンチ殺人事件を生き延び、裁判を受けて受刑した後、知人との連絡も取らずにひっそりと暮らしている姿、革命左派のリーダーだった永田洋子の獄中死(2011年2月)を機に関係者が接触を図ってきてかつての同士の消息を知り様々な思いが去来する様子などを描いた小説。
凄惨な歴史的事件に関わり、それだけで世間の厳しい/厳しすぎる目にさらされて親族郎党に迷惑をかけ、世間からも親族からもつまはじきにされて細々と生きてきた、しかし自分が生きてきたその選択に一定の自覚と自負を持つ事件当事者が、時が過ぎてようやく平穏な生活を手にしたと思いきや、事件の傷/世間の冷たい視線はなお収まっていないことを自覚し、かつての同士とも屈託なく/腹蔵なくは付き合えないことを感じる寂寥感、諦念、いらだちなどがテーマとなっていて、そこは読ませる感じがします。
山岳ベースへの招集について、革命左派では、山岳ベースで子どもを育て次世代の革命兵士を育てようという構想を持っていたという、世間ではほとんど知られていないエピソードが、当事者の思い、意地として語られています。そういうあたりは、関係者への取材の努力も感じられます。
死亡者と今なお獄中にある人物は実名、それ以外の当事者は仮名ではありますが、実在の事件ですので、仮名の当事者も特定できてしまいます。ただ、作中でのそれぞれの人物の刑期が、実際の事件でその人に該当する人物の刑期と全然違うのは、作者が調べずに適当に作ったのか、あえて実在の人物との関係を錯綜させるためにそうしてるのか(でも、山岳ベースでの各人の行動を特定している以上、モデルの人物は、事件を知る人には否応なく見えてしまいますが)。

桐野夏生 文藝春秋 2017年3月30日発行
凄惨な歴史的事件に関わり、それだけで世間の厳しい/厳しすぎる目にさらされて親族郎党に迷惑をかけ、世間からも親族からもつまはじきにされて細々と生きてきた、しかし自分が生きてきたその選択に一定の自覚と自負を持つ事件当事者が、時が過ぎてようやく平穏な生活を手にしたと思いきや、事件の傷/世間の冷たい視線はなお収まっていないことを自覚し、かつての同士とも屈託なく/腹蔵なくは付き合えないことを感じる寂寥感、諦念、いらだちなどがテーマとなっていて、そこは読ませる感じがします。
山岳ベースへの招集について、革命左派では、山岳ベースで子どもを育て次世代の革命兵士を育てようという構想を持っていたという、世間ではほとんど知られていないエピソードが、当事者の思い、意地として語られています。そういうあたりは、関係者への取材の努力も感じられます。
死亡者と今なお獄中にある人物は実名、それ以外の当事者は仮名ではありますが、実在の事件ですので、仮名の当事者も特定できてしまいます。ただ、作中でのそれぞれの人物の刑期が、実際の事件でその人に該当する人物の刑期と全然違うのは、作者が調べずに適当に作ったのか、あえて実在の人物との関係を錯綜させるためにそうしてるのか(でも、山岳ベースでの各人の行動を特定している以上、モデルの人物は、事件を知る人には否応なく見えてしまいますが)。

桐野夏生 文藝春秋 2017年3月30日発行