解剖、死因鑑定の経験を通じて、死因究明の難しさと現在の日本の制度の問題点を解説し論じた本。
多数のケースを取り上げて死因の判断を説明しています。読んでいて、医学知識の増加と、なんといっても検査技術の発展によって、検討すべき事項が飛躍的に増え、死因の判断というものがこんなにも複雑になっているのかと驚きました。率直に言うと、著者が死因を判断していく過程の文章が、流し読みしていると、私にはほとんど理解できませんでした。
扼殺(腕や手で首を絞める)の場合の溢血点や鬱血、一酸化炭素中毒の場合の皮膚の色(鮮紅色)など、特徴があるケースは簡単に判断できるものと考えていた(習った)のですが、プロがその判断を誤ったケースを並べられると、戸惑います。
著者は、刑事事件や民事事件(保険金請求で事故か病死かで保険金額が大きく異なるとか、医療過誤の損害賠償請求とか、労災かどうかとか)での裁判官の判断や弁護士の主張を、非科学的な素人判断と厳しく批判し続けています。挙げられている事例での誤判定の実例や、死因判定の説明を読んでも理解できない自分の力量を考えれば、素人には判断できないというのも納得してしまいますが、専門家の医師でも間違うことが指摘されているのを見たら、どうすればいいのかとも。著者は、専門家が情報を共有して議論することを確保すべきだというのですが、現在でも全死亡数の1.4%、異状死事例の11.5%しか法医解剖されていない(6ページ)日本の状況でどこまで望めるものでしょうか。

吉田謙一 岩波新書 2021年8月20日発行
多数のケースを取り上げて死因の判断を説明しています。読んでいて、医学知識の増加と、なんといっても検査技術の発展によって、検討すべき事項が飛躍的に増え、死因の判断というものがこんなにも複雑になっているのかと驚きました。率直に言うと、著者が死因を判断していく過程の文章が、流し読みしていると、私にはほとんど理解できませんでした。
扼殺(腕や手で首を絞める)の場合の溢血点や鬱血、一酸化炭素中毒の場合の皮膚の色(鮮紅色)など、特徴があるケースは簡単に判断できるものと考えていた(習った)のですが、プロがその判断を誤ったケースを並べられると、戸惑います。
著者は、刑事事件や民事事件(保険金請求で事故か病死かで保険金額が大きく異なるとか、医療過誤の損害賠償請求とか、労災かどうかとか)での裁判官の判断や弁護士の主張を、非科学的な素人判断と厳しく批判し続けています。挙げられている事例での誤判定の実例や、死因判定の説明を読んでも理解できない自分の力量を考えれば、素人には判断できないというのも納得してしまいますが、専門家の医師でも間違うことが指摘されているのを見たら、どうすればいいのかとも。著者は、専門家が情報を共有して議論することを確保すべきだというのですが、現在でも全死亡数の1.4%、異状死事例の11.5%しか法医解剖されていない(6ページ)日本の状況でどこまで望めるものでしょうか。

吉田謙一 岩波新書 2021年8月20日発行