伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

本当に賢い会社のたたみ方

2021-11-29 00:04:14 | 実用書・ビジネス書
 小規模企業の経営者に向けて、会社を他人に承継させるか廃業する場合の手続・手順を概説し、追い込まれる前に余裕があるうちに会社をたたむことを勧める本。
 基本的には、他者への承継(後継者がいないときはM&Aで、業績のいい事業部門だけでも買ってもらう)、廃業の場合は(債務超過でなければ)解散決議をして代表者が清算人となって任意の清算という道を勧めています。
 みずほ情報研のアンケート調査を引用して、承継させたケースでは後継者の能力は経営者の懸念ほど現実には問題なく、承継・廃業とも、顧客や取引先への影響・従業員への影響は経営者が懸念したほど現実にはなかったことを示しています(24~26ページ)。経営者が思っているほど、その経営者でないとできない(言い換えればその経営者の能力が他人より秀でている)ことはないということですね。
 著者は司法書士ということなのですが(司法書士が破産申立代理人となることもよく行われているのですが)、破産手続についての説明には疑問があります。「一度破産し、免責決定を経て債務が帳消しにされると、その後7年以内には、原則として再度の免責決定を受けられず、7年を経過していても事実上二度目の免責決定を得るのは困難であるとされています」(99ページ)というのは、東京地裁で破産申立の実務を行っている者にとっては、そういうニュアンスはちょっと違うんじゃない?と思いますし、破産すると「会社の取締役などの資格も制限され」(99ページ)という記載も法律の規定を理解していないように思えます(現在の会社法施行前は破産して復権前は取締役の欠格事由でしたが、現在は破産は欠格事由ではなくなっています。ただ、民法の委任の規定で破産すると委任が終了するのでいったん退任することになります。再度取締役になることには何ら障害はありません。いったん退任する必要があるのはそうなんですが、これを「資格の制限」とはいいません)。東京地裁での個人の破産申立時の官報公告費が15、499円(115ページ)というのも、(他の地裁では15、499円のところがありますが)18、543円の間違いです。弁護士が破産申立の受任通知を出すと「会社への郵便物もすべて弁護士が管理することになります」(105ページ)って、会社の事件専門の弁護士はそんなことするんだろうかという疑問を持ちます(私は、小規模会社の破産申立をする場合でも、そういうことはしたことがないですが)。破産手続開始決定があると破産者宛の郵便物はすべて破産管財人に転送されますが、それと勘違いしてるんじゃないかと疑ってしまいます。


花本明宏 ぱる出版 2021年10月18日発行
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